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脊尾昌宏氏がパソコンを使って最長手数の詰将棋「ミクロコスモス」を解いたことを伝える新聞記事(1997年10月22日、朝日新聞)。 |
【小さな話題】詰将棋の手数最長記録(1525手詰)と「王手義務のない詰将棋」 Twitter経由で、表記の話題がこちらで取り上げられていることを知った。 「ミクロコスモス」と名づけられた1525手詰の作品は1995年に橋本孝治氏によって発表されたが(1519手詰めは1986年6月に発表)、私がそのことを知ったのは、1997年10月、上掲の記事目にしたのが最初であった。 1986年の発表から数えるとすでに33年が経過しているが、その後、この作品を超える長手数の作品は発表されていないというのは驚きである。こちらの記事では、作者・橋本孝治氏の詰将棋にかける思い、創作の歴史、「攻方王手義務のない詰将棋」という言葉など、まことに興味深い内容が記されていた。 詰将棋と言えば、私自身も認知症予防のためこちらのゲームの中の「脳トレパズル」に含まれている詰将棋問題を毎日一題解くことにしている。私の場合、三手詰めならば60秒以内、五手詰めなら3分以内で解くことができるが、七手詰めとなると急に不正解が増えてしまう。私の場合、七手詰めのあたりに処理容量の限界があるようだ。 ところで、リンク先の記事の最後のところにある、 「変則詰将棋の観点で『将棋』を見ると、『将棋』は『攻方王手義務のない詰将棋』に見えます。人類はこの『攻方王手義務のない詰将棋』のたった1問を解こうと400年も奮闘してきましたが、最高級の頭脳を持つ人間を送り込んでも、最新の人工知能を投入しても、今のところ、このたった1問が解ける気配はありません。というお言葉であるが、確かに二人零和有限確定完全情報ゲームであれば、理論上、先手または後手に必勝法(厳密には、悪くて引き分けの非敗法)があるとされており、じっさい、6×6のオセロは後手必勝、どうぶつしょうぎは、両者が最善を尽くした場合、78手で後手の勝利となることが解明されているという。 もっとも、囲碁やオセロなどと違って、将棋は、対局者がその気になれば、手数を無限に伸ばすことができる。例えば初手で、王を1つ前に上がり、次に元の位置に戻る。相手も同じことをすれば手数は無限になる。但しそれだけでは千日手になってしまうので、飛車角金銀のように元の位置に戻せる駒を適当に動かして、その組み合わせをいろいろに変化させれば、千日手は回避できるはずである。 もちろんそれでは、「両者が最善を尽くす」という前提から外れてしまう。そこで別の方略として、両者が相手の王様には目もくれず、ひたすら自玉の入玉を目ざすというやり方が考えられる。玉の周りをと金で二重に固め、かつ飛車や角も取られないようにしておけば必ず引き分けになるはずだ【但し、アマチュアの場合は、ルールにより、27点法を採用し、同点の場合を後手の勝ちとする場合が多いそうだ。】 このほか、2019年10月、日本将棋連盟が暫定ルールとして導入した「500手指了による持将棋」というのがあるそうだ。「持将棋について両者の合意が至らない場合でも、対局手数が500手に達した場合は、双方の駒の点数に関係なく持将棋とする。」。もっとも今回取り上げた1525手詰は、詰将棋という性格上、連続王手がかかるし、かつ、盤上には攻め方の玉は存在しないので、500手で打ち切りということにはならない。 |