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【連載】#チコちゃんに叱られる!「箸を使う理由」「雨のニオイ」「扇風機で変な声」 8月14日に放送された、NHK チコちゃんに叱られる!の感想と考察。この回は、
まず1.の疑問に対しては、番組では「熱いものを熱いうちに食べたかったから」と説明された。世界では、手で食べる(=手食)人たちが最も多く、アフリカ、中近東、東南アジアなどを中心に全体の約40%を占めているという。また、ナイフ、フォーク、スプーンを使用している人たちは、ヨーロッパや南北アメリカなど全体の約30%となっている。これに対して箸食は、日本、中国、韓国、ベトナムなど全体の約30%になっているという。 最も古い箸は中国・河南省の遺跡で発見されており、3000年以上前の青銅製の箸であった。箸という道具が生まれたのは、羹(ガェン、あつもの)を熱いうちに食べるためで、確かにスプーンよりは箸のほうが取りやすい。いっぽう、隋書倭国伝には、当時の日本人が手で食べる習慣があったと記載されている。日本で箸食が始まったのは聖徳太子の時代で、随から来た使者をもてなすために使用され、平安時代になると町に箸売りが登場し一般に広まったと説明された。 以上の説明であるが、箸が登場した経緯が羹にあったことは確かかもしれないが、一般庶民が羹を食べていたわけではないので、平安時代以降に広まった原因は全く別にあるように思う。考えられそうな理由としては、
次の「雨のニオイ」の疑問だが、番組の正解は「微生物のオナラのニオイ」、具体的には地中に生息する放線菌など微生物の廃棄物にゲオスミン等が含まれていて、降雨時にエアロゾルが発生し、大気中に舞うことで「雨のニオイ」になると説明された。 ということで、「雨のニオイ」というのは降り始めの時の独特のニオイであって、雨そのもののニオイではない。要するに、「水がかかった時の地面のニオイってなあに?」というのが正確な問いかけであった。実際、番組の実験でも、雨のニオイではなく土のニオイばかりを嗅いでいた。 興味深いのは、ベテランソムリエと新人ソムリエが土のニオイを言葉で表現する場面であった。言語心理学的に言っても、新規なニオイを言語報告するというのは極めて困難であることが示された。未知の刺激は、何らかの既知の刺激のアナロジーで表現するほかはない。ソムリエの人たちはワインの香りに喩えて表現したが、ワインをあまり飲まない人たちにとっては、どういうニオイなのか全く伝わらない。 最後の扇風機で変な声になる理由だが、番組では「扇風機の羽根に声が当たったり通り抜けたりするから」と説明されたが、おいおい、これって、「声が扇風機の羽根に当たるから」と言っているのと大して変わらない。なぜそうなるのかを何も説明していないように思える。本当に知りたいのは、は「扇風機の羽根に声が当たったり通り抜けたりすると、なぜ変な声になるのか」ということではなかったのだろうか。 もちろん番組では、声が扇風機の羽根にぶつかった時に、音波がどう変化するのかが示されていた。要するに、「羽根に当たって返ってきた声と、通り抜けた声がほぼ同時に聞こえる」ことで変な声になるという説明でこれならやっと納得できる。 ということで、チコちゃんの答えはは「扇風機の羽根に声が当たったり通り抜けたりするから」ではなく「羽根に当たった声で2人分の声に変わるから」とすれば、より分かりやすい説明になったのではないかと思われた。 |