じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



02月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る

 センダンは秋になるとたくさんの実をつけるが、そのまま年を越し、1月下旬から2月上旬頃に一斉に実を落とす。ネット記事によれば、センダンの実は有毒で、犬は5〜6個、人間の子供は6〜8個の実を食べると死に至るという報告があるという【出典不明】。そのいっぽう、漢方にも利用されているという。また、不思議なことに、ヒヨドリやムクドリは実を食べても大丈夫らしい。

2021年2月13日(土)




【連載】「刺激、操作、機能、条件、要因、文脈」をどう区別するか?(51)杉山尚子先生の講演(16)杉山×武藤対談(1)

 2月10日に続いて、

●杉山尚子先生(星槎大学)×武藤崇(同志社大学)による対談:「随伴性ダイアグラム」をめぐる冒険

についての感想。今回からは、杉山×武藤対談について、感想を述べさせていただく。

 ちなみにこの有料企画は、この対談部分がメインだと思っていたが、今回の場合は、杉山先生が独自に作成されたビデオクリップのほうで内容はほぼ尽くされており、対談のほうはその補足や裏話などが中心であった。
 いずれにしても、さすが杉山先生。アメリカでの学界事情にも精通しておられ、貴重な情報をいただくことができた。有料の限定公開企画ということもあり、以下、差し障りのなさそうな内容についてコメントさせていただく。以下、順不同。
  • 関数分析と機能分析
     「functional analysis」の訳としてどちらが妥当かというような話題があった。以前、スキナーの『科学と人間行動』が翻訳された時にも話題になったと記憶しているが、あの翻訳では確か「機能分析」という訳語に統一されていたが、その経緯は不明。ランダムハウス英語辞典によれば、そもそも、英語のfunctionは、ラテン語 functio 遂行,実行(fungi「遂行する,実行する」【←表記上、ラテン語のスペルは一部改変】に由来するということだが、これがなぜ、関数と機能という2つの意味を併せ持つようになったのかはよく分からない。
     数学の「関数」についても、素朴な定式化から現代的解釈といった変遷がある。スキナーが使っていたのはおそらく素朴な定式化の意味であったと思う。
     ウィキペディアのリンク先にも紹介されているように、関数関係というと、「入力 x に対して、なんだかよくわからない「ブラックボックス f」が f(x) を出力する」というイメージがある。しかし、行動分析でいう関数関係は、S-O-R心理学ではないので、このように誤解されては困る。と思ってネットで「SOR心理学」で検索したところ、こういう論文がヒットしたが、何を書いていたか、すっかり忘れてしまっていた。

  • スキナーの弟子の世代
     対談の中で、「スキナーの弟子」、「その弟子の弟子」...というような話題があった。
     私自身はどうかと思って振り返ってみるに、やはり『行動理論への招待』の影響は大きかった。もちろん、指導教授であったM先生の影響もある。M先生御自身は私が心理学講座に進学する5年ほど前までは、ハルやスペンスに関心を持っておられたようだが【未確認】、その後、構成概念には否定的な見解を示され、私が卒論研究に入る頃にM教授のご指導のもとに毎週開かれていた研究会では、もっぱらJEAB掲載論文に関連した研究発表をする院生や卒論生ばかりになっていた。もっとも、私が在籍した大学は「自由な学風」がモットーになっており、院生はみな、指導教授の研究テーマとは無関係に、それぞれの自分の関心領域のテーマに勝手に取り組んでいた。
     このほか、某研究所で共同利用研究員としてお世話になっていた時、当時その研究所の助教授をされていたA先生に、ほぼ毎日のように、行動分析学に関する諸々の疑問について不躾な質問をさせていただいた時期があった。【例えば、「キャッチボールは言語行動ですか?」】。

  • 杉山・島宗・佐藤・マロット・マロット(1998)『行動分析学入門』
     この本は、私家版を含めて大いに勉強させていただいた。また、私自身が岡大の教養教育【一時期は「一般教育」と呼ばれていた時期もあった】で「行動分析学入門」というタイトルの授業を担当していた時期にも、教科書として使わせていただいた。なので、毎年数百部が岡大の教科書として売れていた時期もあったはずである。
     対談の中で武藤先生が一瞬「ビルトイン随伴性」という言葉を発せられたが、1998年版ではこれは「行動内在的随伴性」に置き換えられている。私自身は、この行動内在的随伴性を重視する立場を取っている。じっさいのところ、最近の脳科学の研究では脳内の報酬系のメカニズムがかなり解明されている。行動分析学的な表現ではないかもしれないが、「好子出現の随伴性」というのは結局は、外部環境において好子が出現し、それが瞬時に脳の報酬系に働いて初めて強化をもたらすのであろう。そもそもスキナーは脳科学を否定していない。否定したのは冗長な構成概念と、脳科学的概念へのトートロジカルなこじつけである。なので、この先、行動分析学の知見は脳科学の地道な研究成果と連動して、さらに発展していくだろう。
     なお、この『行動分析学入門』は、強化や弱化の原理については細かく説明していないということであった。また武藤先生からは、行動随伴性がなぜ「2項随伴性」であるのかということについて「パヴロフからの脱却」をもっと強調したほうがいいというような指摘もあった。しかし、残念ながら、今後の改訂版の御予定はないとのことであった。
     ちなみに、私自身の担当授業では、2014年頃からは、上掲の『行動分析学入門』に代えて、『長谷川版・行動分析学入門』を無料の電子版テキストとして使用するようになった。理由は、まず、授業が4学期制となり、当時3600円+税の、杉山ほか『行動分析学入門』を受講生に買わせても、その一部しか使えなかったことと、関係フレーム理論などの最近の知見に言及されていなかったことなどによる。もっとも、いま読み返してみても、長谷川版にはかなり不備があり、本来なら即刻改訂が必要なところであるが、定年退職して当該の授業を担当しなくなったいま、この先も、ネット上で公開し続ける必要があるのかどうかは何とも言えなくなってきた。【とりあえず、今回の有料企画で教えていただいた情報をもとに、最小限の修正をさせていただこうとは思っている。】

    不定期ながら次回に続く。