【連載】太陽系の基本知識を更新する(2)太陽
昨日に続いて、NHK「コズミックフロントで一斉再放送された、
●「冒険者たちが語る 太陽系のヒミツ」
についての備忘録と感想。今回は、その第一弾として、太陽について取り上げる。
まず、太陽に関する重要な発見を年代順に列挙すると、
- 黒点の発見:17世紀初頭にオランダで望遠鏡が発明される。その望遠鏡を使い、1610年の夏、トーマス・ハリオットが、早朝、霧が出て太陽光線が弱い時に、裸眼で黒点を発見した。これが歴史上最古となるスケッチ。
- ガリレオの観察:黒点を詳細に記録。太陽の回転速度が緯度によって異なることを発見。
- オーロラと磁気の関係:1806年、プロイセンの地理学者、アレクサンダー・フォン・フンボルトは、オーロラ出現時にコンパスの針がズレることを発見。ここから、地球の磁気を乱す嵐のような現象があると論じた。
- コロナ質量放出と思われる現象:1859年、イギリスのリチャード・キャリントンは、太陽観測中、黒点の近くに異常に明るい点を確認。同じ頃に磁場を測定する装置が異常値を示し、その17時間30分後にはオーロラが出現。さらにアメリカ、イギリス、インドで普及し始めていた電報のシステムがダウンし、電線に数百ボルトの電気が発生し火を噴いたり、感電したり、火災が発生。世界各地の低緯度地方でもオーロラが観測された。
- 写真技術の進歩等による発展:太陽に磁場があること、太陽にコロナがあり、表面温度6000℃より遙かに高い100万℃の高温状態にあることが確認された。
- 太陽風:1950年代、アメリカの宇宙物理学者ユージン・パーカーは、太陽風の存在に関する論文を発表。当時は「真空中をガスが移動するはずはない」と否定的に受け止められていた。その後、金星探査機マリナー2号が金星に向かう途中、太陽から放出されているガスの粒子を確認し、太陽風の存在が確認された。地球は磁場によって太陽風から守られているが、その隙間から侵入して北極や南極に入り込んで発光する現象がオーロラとなる。
その後、観測衛星や探査機によりいくつかの現象が確認され、謎の一部が解明された。
- コロナ質量放出の確認:スカイラブ計画(1973年)により、コロナ質量放出を何度も観察。
- SOHO:1995年12月に打ち上げられた太陽観測衛星。太陽内部の状態を音波により観測。太陽の磁場は複雑に入り乱れており、その下には磁力線がある。磁力線が表面に浮かび上がると黒点となる。磁力線同士がショートすると巨大なガスの塊やフレアが発生する。これらの観測から、コロナ質量放出を事前に予測することができるようになった。
- ジェネシス2001年8月に打ち上げられた太陽探査機。850日間、太陽からの粒子を収集し地球に持ち帰る計画であったが、大気に突入したが、パラシュートが開かなかったために地表に激突・大破した。それでも、採取された破片から、太陽を構成する元素の同位体などを明らかにした。
- ひので:2006年9月に打ち上げられた太陽観測衛星。高解像度の望遠鏡で観測し、粒状斑や黒点の詳細な様子を画像として捉えることができた。またコロナがなぜ100万℃以上に加熱されるメカニズムについて、太陽磁場の働きを考慮した「波動説」、「ナノフレア説」という2つの説のうちの「波動説」の証拠となるアルベン波を発見、またこれまで観測されていなかった新しいタイプの小さな磁場を確認したがこれは「ナノフレア説」を支持。おそらく2つの仮説は対立的ではなく相互に絡まっているメカニズムと考えられる。
- パーカー・ソーラー・プローブ:2018年8月に打ち上げ。太陽風の存在を提唱したユージン・パーカーの名を冠した探査計画で、すでに、太陽風が折れ曲がる現象を観測。水星探査機とも連動して太陽を観測する計画。リンク先によれば、2021年には第4回と第5回の金星スイングバイが実行され、2022年には計4回の近日点を通過。2023年と2024年にさらに金星スイングバイを実行し、最終的に近日点高度が9.86太陽半径、公転周期88日の軌道に到達する予定となっているようだ。
ということで、以上が太陽探査のあらましであるが、他の惑星探査と異なり、太陽は、地球環境に直接影響を及ぼすという点で格段に重要であることは間違いない。IT社会ではコロナ質量放出は大被害・大混乱をもたらす恐れがあるし、また太陽活動は長期的な気候変動を左右する。さらに超長期的には、太陽の膨張によっていつ人類が滅亡するのかもメドがつく。当面は2025年頃の探査の成果が期待されるところだ。
次回に続く。
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