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7月28日の岡山は、最低気温は26.5℃の熱帯夜、最高気温は34.6℃で「ほぼ猛暑日」となった。写真は半田山植物園展望所から見渡す岡山市内(瀬戸内海方向)。夏空が広がっている。 |
【連載】太陽系の基本知識を更新する(3)水星 少し間が空いてしまったが、7月22日に続いて、NHK「コズミックフロントで一斉再放送された、 ●「冒険者たちが語る 太陽系のヒミツ」 についての備忘録と感想。今回は、「太陽と水星」の中で取り上げられた水星を取り上げる。 水星探査で意外だったのは、これまで探査機による探査はわずか2回しか行われていないということであった。村上豪さん(JAXA宇宙科学研究所・惑星科学者)によれば、その理由の1つは、そもそも行くことの困難さにあった。地球から打ち上げられた探査機は、もともと地球の公転によって生じている遠心力の影響を受ける。地球軌道の内側に入るために必要とされる減速のエネルギーは、太陽系から脱出するのに必要なエネルギーを上回る膨大な量になるという。素朴に考えると、地球の引力圏から脱出した探査機は、太陽の引力に引っ張られて、真っ逆さまに太陽に引き寄せられるように思ってしまうが、遠心力はそれを上回る力をもっているようだ(というか、それだけの遠心力があればこそ、地球は公転を続けていられるとも言える)。 水星に向かった探査機は、マリナー10号とメッセンジャーの2機であった。 このうち、マリナー10号は水星と金星の両方の探査を目指したものであり、1973年11月に打ち上げられた。まず金星に接近してその引力で減速し、水星に3回接近した。主な成果としては、
なお、ウィキペディアによれば、マリナー10号は水星への接近後、姿勢制御用の燃料を使い果し太陽の周囲を公転するだけとなった。その後1975年3月24日まではマリナー10号の追跡は続けられたが、現在もまだマリナー10号は人工惑星として太陽の周りを周回しているものと考えられているという。 マリナー10号から30年後の2004年8月には「メッセンジャー」が打ち上げられた。メッセンジャーの使命は水星の周回軌道に乗って長期間の観測を行うことであった。そのためには、太陽熱の高温と、水星の影に入った時のマイナス180℃低温がもたらす600℃にも及ぶ温度差に耐えられる機体が開発された。主な発見としては、
もう1つ、2018年10月に、史上3度目となるベピ・コロンボプロジェクトによる探査機が打ち上げられた。宇宙航空研究開発機構 (JAXA) と欧州宇宙機関 (ESA) の共同によるもので、水星到達後に2つの探査機に分離されて、水星表面や磁場を観測する予定となっている。イオンエンジンを用いた電気推進、1回の地球スイングバイ、2回の金星スイングバイ、6回の水星スイングバイを経て、7年後の2025年末に水星に到着する予定となっている。私も今から3年後ならまだ生きているはずなので、新たな発見が期待される。 ここからは私の感想・考察になるが、マリナー10号、メッセンジャー、さらにいま航行中のベピ・コロンボもみなそうだが、打ち上げから水星到達までは約7年もかかるとのことだ。ティティウス・ボーデの法則の法則でざっと見積もると、地球と太陽の距離を1とした時、水星と太陽の距離は0.4、金星と太陽の距離は0.7、火星と太陽の距離は1.6となる。実際に測定された距離はそれぞれ、0.39、0.72、1.52となるので、この観測値からの引き算で地球と各惑星の最短距離を概算すると、最も近いのが金星で0.28、続いて火星が0.52、水星は3番目に近く0.61となっている。地球から火星までと、地球から水星までの距離はそんなに変わらないはずなのに、探査機が水星に到達するには約7年、いっぽう火星までは半年程度というからその差の大きさに驚く。もちろんこれには、燃料節約のためのスイングバイで日数がかかるという事情もあるとは思うが、なかなか大変なことだ。 次回に続く。 |