じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 猛烈な台風11号は8月31日午前6時には、沖縄県の南大東島の北北西50キロの海上を1時間に30キロの速さで西へ進んでいる。この台風は、当初は、あまり発達せずに四国方面、その後は九州方面に向かい、日本列島上陸前には熱帯低気圧に弱まると予想されていた時があったが【画像右下】、その後予想が大きく変わり、猛烈な台風に発達した。進路予想はまだまだ混迷しており、フィリピン東にある別の熱帯低気圧の進路を含めて、まるで幾何学の作図問題のように複雑化している。
 なお画像の予想図は8月30日15時現在であったが、8月31日06時の予想では、8月4日の中心位置はいくぶん西寄り(中国大陸より)に修正されている。

2022年8月31日(水)



【小さな話題】実は別解があった!?入社試験の数学・論理クイズ(2)男の子が生まれるまで子供を作る場合の男女比

 昨日に続いて、YouTube「ナゾトキラボ【IQ & 謎解きチャンネル】の、

実は別解があった!?入社試験の数学・論理クイズに挑戦!(2022年8月20日公開)

についての感想・考察。この動画では、入社試験として有名な3つの問題を、「平凡なヒヨコイ」、「秀才のサギゾウ」、「面接官が想定していた解法の斜め上をいく親鳥さん」がそれぞれどのような解答をするのか、という趣向であった。

 2番目の問題は、

ある国の人々は皆、男の子だけを欲しがりました。なので、どの家族も男の子が生まれてくるまで子供を作り続けました。男の子が生まれれば次の子供は作りません。さて、この国の男の子と女の子の人口比率はどうなりますか?

 であった。
 これについてヒヨコイさんはギブアップ。サギゾウさんは、まず前提として、男女が生まれる確率は1/2であるとして、
  1. 男の子一人っ子となる確率は1/2
  2. 「女→男」の2人きょうだいとなる確率は1/2×1/2で1/4
  3. 同様に「女→女→男」となる確率は1/8、「女→女→女→男」となる確率は1/16、というように続く。
  4. したがって、男の子の人数の期待値は、1/2+1/4+1/8+1/16+・・・となり、この等比数列の和は1となる。
  5. いっぽう、女の子の人数の期待値は、0×1/2+1×1/4+2×1/8+3×1/16+・・・となる。これは高校数学Bで習う「等差数列×等比数列の和」であり、その極限は1となる。
というように手堅い証明を行った。

 興味深いのは、親鳥さんの解答であった。要約すると、
コウノトリが赤ちゃんを運んでくるモデルを考える。コウノトリはあらかじめ運ぶ赤ちゃんを一列に並べてストックしている。この場合の男女の比率はストック全体では限りなく1:1に近づく。夫婦から赤ちゃんが欲しいという要請があると、コウノトリは先頭から順番に赤ちゃんを親元に運んでいくが、同じ家族のもとへは男の子を運ぶまで続けられる。これは、赤ちゃんの列を男の子の直後で区切るという操作であるが、列全体の男女比は1:1であるから、どのように区切っても全体の男女比が1:1であることに変わりはない。
というものであった。

 私自身が少々引っかかるのは、コウノトリがストックしている赤ちゃんの列と、各家庭で生まれる子供の列を重ね合わせた列が同一であることをどう証明するのか、あるいは列のパターンは入れ替わっても男女比が変わらないことをどう理由づけるのかといったことにあった。
 私なりに考えてみるに、コウノトリがストックしている列というのは二項の乱数列であって、n番目が男であるか女であるかということは、n+1番目にはいっさい影響を与えていない(独立事象)。これはまた各家庭の男女の列についてもあてはめることができ、要するに二項乱数列の一部を切り取ったものと見なすことができる。但し、各家庭の列は必ず「男の子」で終わることになっており、ランダムに切り取った列とは必ずしも言いがたい(ランダムに切り取った場合は、列の最後が「男の子」になる確率と「女の子」になる確率は半々になる)。なのでいま述べた理由付けでは少々不足しているように思われた。

 ネットで検索したところ、こちらには、男女それぞれの人数の期待値を面積に置き換えて、級数の和がいずれも1×1の正方形の面積に近づくことを示した分かりやすい図が示されていた。これなら直観的に理解できる。
 またこちらではコウノトリがストックした列と、各家族に運ばれる赤ちゃんの対応について「各家庭は、男の子が運ばれてくるまで、コウノトリにもう一人くださいと要請することができる」という表現を使っていた。このように言い表せば、二項乱数列を切り取る喩えが成立するようにも思われる。




 ところで、もし実際に、このような制限が行われたとしたら、その国はどうなるだろうか。上記のもとの問題は「この国の男の子と女の子の人口比率はどうなりますか?」であったが、入社試験問題として出題するのであれば、男女比についてではなく、「この国はどうなっていくと思いますか?」とすべきであったと思う。でもって私なりに考えた結末としては、
  1. この制度は、実質的に「男の子が1人でも生まれたらそれ以上子供を作ってはいけない」という産児制限である。男の子の人数と女の子の人数の一家庭あたりの期待値は2.0となるが、2.0では人口は減っていく【夫婦が無限に子どもを作り続けることはできないので、実際には2.0未満となるし、非婚者も出てくるため】。このまま続くと少子高齢化が進行し、いずれその国は弱体化して消滅する。
  2. この制度のもとでは、男の子は一人っ子、もしくは末っ子ばかりとなる。きょうだい構成や長子・末子という分類でその人の性格をステレオタイプ化することは危険ではあるが、家庭内での教育費の配分や依存度の違いなどから、子どもの成育環境に何らかの影響が生じる恐れは否定できない。
  3. 地球生物進化の必然の傾向として、Y染色体はしだいに劣化・消滅する可能性があり、結果的に、1/2以上の確率で女の子ばかりが生まれる家庭が増えてくるかもしれない。


 なお、最後の3番目の問題はフェルミ推定に関するものであったが、ここでは感想・コメントは省略させていただく。