じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



12月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る



クリックで全体表示。

 半田山植物園の大イチョウ。日当たりが良いせいか、岡大構内のイチョウ並木に比べると黄葉の時期が2週間ほど遅い。山の中腹にあるため、街中からも眺めることができる。

2022年12月2日(金)



【連載】ヒューマニエンス「“文字” ヒトを虜にした諸刃の剣」(5)書写不要の文字学習

 昨日に続いて、10月25日に初回放送された、

NHK ニューマニエンス「“文字” ヒトを虜にした諸刃の剣」

についてのメモと感想。本日で最終回。

 放送では続いて、10歳の時にディスレクシアと診断された20歳の男性の事例が取り上げられた。この男性は、文字を読むことは何とかできるが書くことは苦手であった。そのいっぽう、この男性は絵を描くことを得意としており、何度も個展を開いたり海外からも高い評価を得ているという。

 ゲストの高橋源一郎さんは、文字を自動化して受け入れるということは要するに社会化であり、正解があるものは社会が決めたものである、そのいっぽう、そういうものは苦手だが見えたものは正確に再現することができる能力のある人もいると指摘された。人間社会の枠の代表が文字であり、その枠にとらわれない見方というのもある。

 ここからは私の感想・考察になるが、まず、(音声の)の言葉と文字との対応を学習することは、「恣意的に確立された関係反応」の習得ということになる。そこで必要となる関係フレームの形成がうまく行かないことがディスレクシアをもたらしていることは確かだ。もっとも文字以外のモダリティーでは関係フレームは成立していると思われる。

 いずれにせよ今の時代は、文字を書くことが苦手であっても代替のツールで「書き取り」をすることは可能となっている。まずは、いま私自身もやっているキーボード入力である。さらには、音声入力も日々精度が向上している。
 また、文字を読むことは苦手だが音声コミュニケーションはできるという人たちのためには、音声読み上げのアプリがあり、こちらのほうも日々精度が向上しており、気象通報や短報のニュースではすでに機械音声が活躍している。
 ということで、学校教育の中でも、書き取り(書写)は義務化せず、タブレットやパソコンでの入力で代替できるように指導方法を改めるべきかと思う。これは英単語のスペリングでも同様。例えば「ヒヤシンス」という単語のスペリングを覚えるのは厄介だが、ATOKであれば「ひやしんす」と入力して変換するだけで「hyacinth」となる。もちろん、書道のように芸術として文字を書くスキルは、任意に学べるようにしておく。

 今後の研究で求められるのは、表語文字のメリットを明らかにしつつ、表語文字ならではの独自の学習方法を普及させることにあると思う。私自身は、こちらこちらで論じたように、幼児期には、漢字熟語の読みや生成にかかわる学習機会をふやすべきだと考えている。