じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 半田山植物園で金魚葉椿の花が咲いていた。花自体は1月頃から咲いているが、これまでは数メートル以上高いところの枝についていてうまく撮れなかった。もっとも金魚葉椿特有の金魚の尾のような葉っぱあまり目立っておらず、単なるヤブツバキの花のようにも見えてしまう。楽天版(2022年2月7日)に、葉っぱの特徴がよく表れた写真あり。


2023年2月24日(金)



【連載】数学未解決問題「コラッツ予想」についての隠居人的考察(2)

 昨日に続いて、コラッツ予想(コラッツの問題)についての隠居人的考察。

 昨日の日記で、コラッツ予想を、
  1. n が偶数の場合、n を 2 で割る
  2. n が奇数の場合、n に p をかけて q を足す
というように拡張し【但し、pやqは奇数。qは負の値を含める】、その上で、pやqがどのような値をとるときに「どんな初期値から始めても、有限回の操作のうちに必ず 1 に到達する(そして 1→4→2→1 というループに入る)」という現象が起こるのかを同定すれば、あるいはその現象が、p=3、q=1以外では起こりえないことが示されれば、少なくともコラッツ予想が成り立つ必要条件は発見できたことになるはずだ、と述べた。

 このアプローチを実行した研究としては昨日引用した愛知県立豊田西高等学校の高校生の研究があるが、ネットで検索したところ、

大平麗子・山下倫範:Collatz 問題の一般化について

Fraction Game と一般化 Collatz 問題【2018年7月】

といった論文が公開されていることが分かった。

 もっとも上掲の2つの論文はPDF文書として公開されているだけで出典が分からなかった。1番目の論文はお名前からのつながりで、立正大学の山下研究室出身の大平さんと山下先生の共著であることが判明したが、発表年や出典は未確認。2番目の論文は「y.」(ワイドット?)という数学者のペンネームのようだが詳しいことは分からない。コラッツ予想に取り組む研究者には謎めいた人が多いのだろうか?

 さて、上掲の1番目の論文では、p-Collatz 関数 fp を、 任意の自然数 x に対して,
  • xが偶数の時:fp(x) =x/2
  • xが奇数の時fp(x) =[px+(p-2)]/2 但しpは正の奇数
として定義されている。この定義は、上記の「n が奇数の場合、n に p をかけて q を足す」と似ているが、私の理解に間違いがなければ、qの値は常にp-2というように固定されており、また、「pをかけてp-2を足す」という操作で偶数となったxを2で割るという操作を合わせて行うようになっているようだ。すなわち、p=3の時は、「3をかけて、p-2すなわち1を足す。さらに2で割る」という点で、従来からのコラッツ予想と同じことになる。いっぽう、p=5の時は「5をかけて、p-2すなわち3を足す。さらに2で割る」、p=7の時は「7をかけて、p-2すなわち5を足す。さらに2で割る」、などとなる。
 論文では、コンピュータによるp=5から135までの実験結果が示されており、
  1. 結果 1: p > 3 で Collatz 問題と同様の予想はどのp に対しても否定的と類推される。
  2. 結果 2 :1 に辿り着く p-Collatz 列を有する p は無限個存在している
実際、x【この日記では「n」】が2のベキ数の時はアッという間に1になる。また、xが1の時、p=2m+1の操作を実行すると必ず1に辿り着くことなどが分かる。
 さらに全体を見渡すと、p-Collatz 列は,次の 3 通りのいずれかに分類されることも指摘されている。
  • (1) 必ず1に辿り着く
  • (2) 途中からループ列に入る
  • (3) 無限に発散してゆく
但し(3)はあくまでコンピュータで計算できる範囲でオーバーフローしてしまうという意味であって証明されたものではない。

 このことでふと思ったが、ある整数n【但し、9で割った時に余りが4または5になる数を除く】を3つの立方数の和で表すという問題では、とてつもなく巨大な数【←正確には絶対値が巨大になる数】が出現することがある。例えば、
  • 33=−27361114688070403−87784054428622393+88661289752875283
  • 42=126021232973356313+804357581458175153−805387388120759743
というように、パソコンのレベルでは桁数が多すぎて処理できないような数が登場している。なので、コラッツ予想の場合も計算結果で「無限に発散していく」ことが示唆されたからといって、遙かに大きな数に到達したあとでループ列に入ったり、1に辿り着くことになる可能性はゼロであるとは断定できないように思う。「無限に発散」と断定するためには、ある一定以上の操作回数ごとにグループ分けした時に、それぞれの操作によって得られた数値の最小値が操作回数を重ねるに従って増加していくことを証明しなければならないだろう。【←逆に、そのような区切りごとの最大値が減少していくことが証明されれば、最終的に1に辿り着くか、ループ列に入り込むか、いずれであることが証明できる】




 上掲の2つの論文のうち2番目のFraction Game と一般化 Collatz 問題については、私自身の理解力を超えており、よく分からない。最後のところで、「一般化 Collatz 問題は決定不能である.」という定理が示されている点は、文字面だけからの印象で興味深いところがあるが、オリジナルの Collatz 予想はその中の固定された条件のもとでの話なので、独立して解明することは可能であるように思われる【←私の数学レベルが低いため、これ以上のことは言えない】

 次回に続く。