じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 4月12日に参拝した法界院(金剛山遍照寺法界院)【4月12日の楽天版参照】には、以前から『南無大師遍照金剛』の幟が多数設置されていたが、昨年の紅葉の頃から、『南無観世音菩薩』の幟の比率が増えて、ざっと見渡したところ1/2〜2/3を占めるようになった。山門からの石段の脇も、以前は『南無大師遍照金剛』であったものが現在は『南無観世音菩薩』に置き換わっていた。
 『南無大師遍照金剛』は「弘法大師空海に帰依する」の意味であり真言宗のお寺である法界院にとっては当然であるが、『南無観世音菩薩』は真言宗限定では無さそう。もっとも法界院の本尊は聖観世音菩薩。中国三十三観音霊場第五番札所、百八観音霊場第七番札所となっており、観音菩薩に関係の深いお寺であることは間違い無い。4月21日には観世音菩薩立像(33年に一度)と昭和観音像(年に一度)のダブルご開帳が行われる。なお、真言宗におけるご本尊は、大日如来であるが、大日如来のほかに、お寺によっては阿弥陀如来、薬師如来、観音菩薩などもご本尊として崇拝されているという。確かに、四国八十八箇所の寺院一覧を見ても、ご本尊は多様であることが分かる。【このリストで気づいたが、八十八箇所の寺院は必ずしも高野山真言宗ばかりではなく(←むしろ少数)、中には曹洞宗、臨済宗、天台寺門宗などの宗派が含まれていることが分かった。


2023年4月12日(水)



【連載】AIの進歩で仕事を奪われる人と、新たなビジネスチャンス(6)将棋棋士

 4月10日の続き。

 各種報道によれば4月12日、将棋の藤井聡太六冠が叡王戦五番勝負の第1局で菅井竜也八段に勝利し、タイトル防衛に向けて白星スタートを切った。藤井聡太叡王は終盤持ち時間が無くなり1分将棋に追い込まれたが、その後もほとんど、AIが推奨する最善手を指し続けたというからスゴい。
 この将棋に限らないが、最近の将棋の対局ではAIによる予想手の候補が挙げられたり、評価値や勝利確率が表示されており、観戦に彩りを添えている。

 将棋とAIの関係については2017年6月9日の日記でも取り上げたことがある。あの頃は当時の佐藤天彦名人が「PONANZA」に2連敗したという衝撃が話題になり、この時点で、将棋の棋力はAIがプロ棋士を上回っており、もはや人間はAIには勝てないと囁かれるようになった。
 もっとも、このことでプロ棋士が失業することはなかった。むしろ、将棋界ではAIが観戦の楽しみを増やすためのツールとして活用され、藤井聡太六冠の活躍と合わせて、新たなファンを増やしていているようにも思われる。

 2017年6月9日の日記で、
世間では、人工知能が発達するとプロ棋士は失業するといった声も出ているようだが、将棋の対戦が人間の行為・営みとしてそれなりの魅力がある限りにおいてはそんなことはあるまいとは思っている。
 例えば、大相撲の世界では、横綱より強いロボットを出場させることは今の技術でも可能であろう。しかし、そういうロボットが開発されたからといって力士が失業するわけではない。
 マラソンや駅伝の世界で、走るロボットを出場させれば、人間は勝ち目がない。といって、ロボットばかりが勝利するレースは殆ど注目されないと思う。
と述べたように、AIが人間と同じこと、あるいは人間を超えるレベルの能力を発揮したからといって、直ちにその職種の人たちの仕事を奪うわけではない。その人の努力、挫折からの復活、将来の夢などとセットにして語られる限り、つまり、生身の人間が行うということ自体に価値が見出される限りにおいては失業することはあるまいと思う。

 そう言えば、叡王戦第1局の少し前に行われた第81期名人戦七番勝負第1局の84手目の「8八歩」に対して、渡辺名人がAIの推奨手「7七銀」を「見落とし」て別の手を指したために、一気に藤井竜王が有利になるという場面があった。各種解説動画【例えば元奨励会員アユムの将棋実況】で指摘されているように、この84手と85手は
  • 藤井竜王の「8八歩」は、渡辺名人が次に「7七銀」と指していれば疑問手であった。
  • しかし実戦では渡辺名人が別の手を指したため、結果的に「8八歩」が最短勝利を掴む手となった。
という結果となった。
 もしAI同士の対戦で同じ「8八歩」が指され、それに対して「7七銀」と応じられたとしても、これは単なるAIの性能の差であるとしか受け止められないであろう。人間が指したからこそドラマとなるのであった。
 ちなみに、渡辺名人は「7七銀」には気づいていたらしいが、そのあとの変化は十分には把握できず自信の無い手になっていたようである。一部には、藤井竜王は「7七銀」により不利になる変化に気づいていたが渡辺名人はその手を指さないだろうと予想して敢えて「8八歩」を選んだのではないかという指摘もあるようだ。私自身は藤井竜王はあくまで最善手志向であると思っているが、過去に活躍した大山十五世名人や米長永世棋聖などは、相手の心理や棋風を読み取って最善手以外の手を選ぶこともあったと聞いている。

 ということで、この先もプロ棋士が失業することはあるまいと思うが、いずれ将棋の最善手の解析が進んで、例えば先手必勝の戦法が発見されるとか、最善の手を指し続けると最後は千日手になってしまうといったことが明らかにされると、かなり危うい可能性がある。ま、それでも趣味のゲームとしては残るだろうが。

 不定期ながら次回に続く。