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半田山植物園の入口ゲート付近で、ゴキブリのような甲虫を見つけた。ゴキブリに比べれば動きは遅い。硬くてつやがあるように見える。
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【連載】サイエンスZERO「認知症の転換点」(2)『レカネマブ』誕生の経緯、早期発見 6月23日に続いて、5月28日と6月4日に放送された、NHK「サイエンスZERO」、 についての感想と考察。 #1では続いて、アミロイドβについての研究の歴史が紹介された。 放送によれば、ドイツのアロイス・アルツハイマー博士(1864〜1915)は1906年、世界で初めてアルツハイマー病の症例を報告した。博士は患者の脳を解剖し、アミロイドβに相当するシミのようなものを見つけた。しかしそれが病気とどのように関係しているのかは謎であった。 1990年代に入ると相次ぐ発見から、アミロイドβが病気の原因であることが分かってきた。デール・シェンク博士(1957〜2016)は、アミロイドβそのものをマウスに注射して、体内の免疫細胞にそれが敵であると認識させることで排除させるワクチン療法を開発した。この方法は、動物モデルにおいてアルツハイマー病理の進行を抑制するという臨床的に意義のある治療法の最初の報告であったが、人への治験では298例中18例で重い副作用が出てしまい開発は中止された。但し、その後の研究でこの方法でアミロイドβが確かに取り除かれていたことは確認された。しかし、この研究をベースにしてアミロイドβを標的とした薬が次々と開発されたものの承認まで辿り着いた薬は1つも無かった。 アミロイドβを取り除く効果があるはずの薬がなぜ承認されなかったのか(=進行を遅らせるような有意な効果が確認されなかったのか)についてはその後驚きの発見があった。それは、発症の時期を起点とすると、アミロイドβの蓄積はその20年以上も前から、また神経細胞の死滅は10年以上前から始まっていたということであった。放送では説明が無かったが、要するに、すでに発症し症状が進んで患者の脳からアミロイドβを排除できても神経細胞はすでに死滅しているために手遅れであり、更なる進行を遅らせることはできなかったということかと思われる。 スウェーデン・ウプサラ大学のラーシュ・ランフェルト名誉教授は1997年、ウメオという町【Googleマップでは『ウーメオー』】でアルツハイマー病の多い一族を調査した。その一族の家系図を辿ると50%の確率でアルツハイマー病が遺伝する特殊な家系であることが分かった。彼らに共通した遺伝子変異があると、アミロイドβは固まりになる前に『プロトフィブリル』という毒性のある集合体を多く作る。このプロトフィブリルを標的にした新薬が『レカネマブ』であった。当初は特殊な家系の人たち向けに作った薬であったが、それ以外の人たちでもプロトフィブリルが同じような悪さをしていることから一般向けの薬となった。 レカネマブの副作用としては、投与された人の中に一時的にむくみや出血が生じることがあり、数100〜1000例に1例程度は命に関わる重い症状が出ることがあり、早くにそれを捉えて救命することが必要であるとされた。 現在、アメリカではレカネマブの価格は1年間の使用で300数十万円という高額になっている。しかし薬が効けば重い介護の負担が減ることから、保険適用などで広く使えるようになるのが望ましいと説明された。 さて、上にも記したように、アミロイドβはアルツハイマー病発症の20年以上も前から蓄積が始まる。素人目に考えれば、この際、一定の年齢に達した人にレカネマブ等を接種しておけば、免疫作用によりアミロイドβやその前段階のプロトフィブリルが排出されてアルツハイマー病の予防につながるようにも思える。しかしかなりの副作用のリスクがあることと、どうやら長期的な投与が必要でありそうなことを考えると、現状では予防接種のような対応は困難であるようだ。 ということで代替策として考えられるのが早期発見である。 放送によれば、早期反応の1つとして『PET検査』がある。脳内のアミロイドβの蓄積を画像化するものであるが、検査装置が少なく費用が高額になるというデメリットがある。 もう1つは、腰あたりから脳脊髄液を採取しアミロイドβの量を推定する「脳脊髄液検査」であるが、やはり高額であることと、患者に負担をかけることから手軽ではない。 上記の2つに代わっていま世界的に注目されているのが『血液バイオマーカー検査』であり、脳から血中へわずかに排出されているアミロイドβや関連物質を調べ、脳内のアミロイドβの蓄積度合いを推定しようというものであった。この技術は、2002年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんが率いるチームによって開発されている。ノーベル賞受賞の対象となったタンパク質の質量分析を行う技術を応用したものであり、多くの物質が混在する血中から正確に目的の物質を検出することを可能にした。この新しい検査方法は簡便かつ安全性が高いため、専門医にかからなくても、かかりつけ医の段階で診断が可能であり、有用性が期待されているという。 #1の放送の終わりのところでは、認知症に早く気づくためのリスクチェックの尺度(『J-MCI 物忘れチェック』)が紹介された。本老年精神医学会のワーキンググループによるもの。認知症の症状が出始めてから医療機関を受診するまでおよそ4年かかるという研究結果があることから、本人や家族が簡単に認知症のリスクをチェックできる新たな評価尺度を開発された。質問項目の選定にあたっては、まず先行文献から63項目を抽出し専門家らによって49項目に絞り、さらにじっさいに回答をしてもらった結果をふまえて最終的に13項目が選ばれた。例えば「以前より怒りっぽく、頑固になった」というのは認知症以外の高齢者でも増加傾向があることから削除。また、「書類の記載を間違える」は視力低下など別の要素が考えられるので削除された。このテストは、本人でも回答できるが、本人の回答内容は症状を1/3程度軽く評価した回答をする傾向があった。そこで回答結果の重み付けを変えることで、本人や家族、回答者の性別などにかかわらず誰が答えても同じ結果になるように配慮された。 なおネット上でも、類似のチェックリストがいくつか公開されていた。統計学的に言えば、別の方法で軽度認知症と診断された人たちとそうでない人たちの間で得点分布に有意な差が出るようなチェックリストにはどれも予測ツールとしての有用性があると言える。このあたりは心理尺度とは作成手順が異なるかもしれない。もっともこうしたチェックリストで「認知症の傾向あり」とか「グレーゾーン(軽度認知障害)」と判定されてしまった段階では、レカネマブでプロトフィブリルを排出してもすでに手遅れではないかという気もする。 私自身が初めて認知症施設を見学したのは2001年6月のオーストラリア研修旅行が最初であった。その後、日本国内の施設もいくつか見学させていただいたことがあったが、今回のような医療技術の進歩や新薬登場についてはあまり注意を向けたことが無かった。もっとも、前回も述べたように現実問題として、すでに認知症が進行している人たちのQOLを考えるにあたっては、早期発見だとかレカネマブによる治療はあまり意味をなさない。患者さんたちの個性やそれぞれの症状を重視し、一人一人に寄り添ったケアのあり方が求められるように思う。 次回に続く。 |