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【連載】笑わない数学(8)四色問題(8)ケンプ鎖と五色定理の証明 昨日に続いて、表記の番組の#3『四色問題』の話題。なお、NHK公式サイトにあった笑わない数学ノートのうち、四色問題に関する#3の記事は、その後削除されてしまった。 さて昨日の日記までのところで、二辺国または三辺国を少なくとも1つ含む地図では、最小反例が存在しないことが証明された。しかし、四辺国を含む地図の場合は、同じ方法を機械的に適用するわけにはいかない。 例えば、nカ国から構成される地図にSという四辺国があり、かつこの地図の塗り分けには5色が絶対に必要であったとする。ちなみにこの地図には二辺国や三辺国は1つも存在しないものとする。なぜなら二辺国や三辺国が存在するならそちらのほうに注目して、「国境消滅→n-1カ国の地図は4色で塗れる→国境を復活させてnカ国の地図に戻した時には4色で塗れる」という」という方法で最小反例が存在しないことを簡単に証明できるからだ。 でもって、Sは四辺国の定義上、A、B、C、Dという4つの国に囲まれていることになる。ここで、A、B、C、Dは例えばA赤、B青、C赤、D青というように交互で塗られている場合もあるだろう。その時は真ん中のS国を消滅・復活させるという三辺国までの方法を踏襲できるので最小反例は存在しないと証明できる。しかし、中にはA赤、B青、C緑、D黄、S黒というようにSの周りが4色で塗られていて、「どのように塗り替えても絶対に5色が必要」というケースが存在するかもしれない。すでに証明されている四色定理から言えば、この「どのように塗り替えても絶対に5色が必要」というケースはあり得ないのだが、ここでは背理法の前提としてそういうケースがあったと仮定してみるのである。 この場合、これまでと同じ方法でS国を消滅させると国の数はn-1カ国になる。nを最小反例と仮定しているので、n-1カ国の地図は必ず4色で塗り分けられるのだが、再びS国を復活させるとどうしても5色目が必要になってしまう。 そこでケンプは画期的な塗り替えの方法を考案した。放送によれば、それは、
放送では、その後の経緯について
●【ゆっくり解説】こんなに単純な問題がなぜ100年以上数学者たちを悩ませたのか−四色問題 では、放送とほぼ同じ時間内でより詳しい経緯が紹介されている【参考文献はこちら】。 その解説動画によれば、ケンプの誤りを指摘したのはイギリスの数学者パーシー・ヘイウッドであり、またヘイウッドは単なる誤り指摘にとどまらず五色定理を証明したことなどが紹介されていた。 五色定理の証明についてはウィキペディアにアウトラインが紹介されている。その基本は、まず地図を平面グラフに置き換えることであり、地図の「国」は点に、「国境」は辺(線)で結ぶことになる。ここで置き換えられた平面グラフには、オイラーの定理により、最大でも5本の辺によってしか接続されていないような頂点が存在することが証明できる。ちなみに五色定理が簡単に証明できるのに同じ手法が四色定理の証明に使えないのはこの部分に関係している。ウィキペディアでは、 ●五色定理の仮定(色の数が最大で5)が使われるのはこの箇所だけである。もし同じ手法で四色定理を証明しようとしても、この段階で頓挫する。 と指摘している。あとはケンプ鎖のロジックの適用で、ケンプ鎖のループが交差できないことを示せばよい。五色定理の証明については、 ●グラフ理論B(グラフの彩色問題) でも分かりやすく(?)解説されている。 次回に続く。 |