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北九州の妻の実家で見つけたアケビコノハ(たぶん)。洗濯物を取り込もうとしたところ枯葉のようなものが付いていたので手で掴んだところいきなり動き出したのでビックリした。羽根を開いた時に見えた模様からアケビコノハではないかと思われる。その後屋外に出したがあまり動かず、羽根も広げなくなった。 この蛾は翌朝には姿を消しており、極寒の中でも自力でどこかへ移動したようであった。 |
【連載】笑わない数学(9)1+2+3+4+…=−1/12(1)グランディ、ヴォルフ、オイラー 1月29日にNHK総合で初回放送された、『笑わない数学 シーズン2』: ●1+2+3+4+…=−1/12 についてのメモと感想。 この回のタイトルは、常識の範囲ではあり得ない、無限級数に関する話題であった。ちなみに私自身は、高校の数学で、級数の収束や発散の基礎を学んだことがあるだけで、今回の内容までは教わっていなかった。もっとも、YouTubeの解説動画を通じて放送とほぼ同じ話を視聴したことはあった。 放送ではまず、
こうした級数について、いきなり無限個の和を考えるのではなく、とりあえず100番目までの合計を計算してみる。そうすると例えば、上掲の1番目の級数は、 S100=1+1/2+1/4+1/8+1/16+・・・+1/(2100-1) というように表すことができる。ここで、両辺を2倍した級数を考えると、 2S100=2+1+1/2+1/4+1/8+1/16+・・・+1/(2100-2) そうすると、「1+1/2+・・・1/(2100-2)」の部分は2SとSの式の両方に現れていることから消去され、残るは、 2S100ーS100=S100=2−1/(2100-1) ということになる。これを無限大まで拡張すると、 S∞=2−1/(2∞-1) となる。1/(2∞-1)は限りなくゼロに近いので、けっきょく、 S∞=2 ということになる。 放送では続いて、上掲の4番目の「1+2+3+4+5+6+7+8+・・・」と「1−2+4ー8+16ー32+64ー128+・・・」がいずれも「発散する(答えが無い)」級数であること、また「1+1/2+1/4+1/8+1/16+・・・」は「収束する(答えがある)」級数であると説明された。 以上までのところは私が高校の頃にならった内容と一致しており、特に違和感は無かった。 続いて紹介されたのが、数学者でもあり修道士でもあったルイージ・グイド・グランディ(1671ー1742)の考察であった。グランディは、1710年に発表した著書の中で 1−1+1−1+1−1+・・・ という無限級数の答えが1/2になると論じた。その理由は2人の兄弟が親から相続した1個の宝石を交互に保管した場合、2人は宝石を1/2ずつ所有したことになるというたとえ話で説明された。 クリスティアン・ヴォルフ(1679ー1754)は、「1−2+4ー8+16ー32+64ー128+・・・」という級数にも答えが出るという議論を展開した。この級数は、 1−2+4ー8+16ー32+64ー128+・・・(−2)n-1=1/3−(−2)n/3 というようにコアな部分「1/3」と発散する部分「(−2)n/3」に分けて考えることができるというものであった。そして発散する部分はゼロの間を増えたり減ったりするので平均すればざっくりゼロであると考えれば、この無限級数の値は1/3になると言えるといった主張であった。 18世紀半ばにはレオンハルト・オイラー(1707ー1783)によって、より洗練された議論が展開された。オイラーが利用した公式は、 1+χ+χ2+χ3+・・・=1/(1−χ) 【但し −1<χ<1】 であった。オイラーはこの公式の【但し −1<χ<1】という制限を外して考察した。例えばχ=-1を公式に当てはめると、 1−1+1−1+1−1+・・・=1/[1−(−1)]=1/2 となり、グランディの主張に一致する。さらにχ=-2を当てはめると、 1−2+4ー8+16ー32+64ー128+・・・=1/[1−(−2)]=1/3 となりヴォルフの主張通りとなる。 オイラーはさらに、 1+2χ+3χ2+4χ3+・・・=1/(1-χ)2 【但し −1<χ<1】 という公式に範囲外のχ=−1を代入することで、 1−2+3−4+・・・=1/4 となることを発表した。 ここからは私の感想・考察になるが、今回の放送では、オイラーが利用した公式: ● 1+χ+χ2+χ3+・・・=1/(1−χ) 【但し −1<χ<1】 ● 1+2χ+3χ2+4χ3+・・・=1/(1-χ)2 【但し −1<χ<1】 については特段の説明も証明も無く引用されていた。高校3年の頃に少しだけ囓った記憶を蘇らせてみるに、これらの公式はテイラー展開、あるいはその中のマクローリン級数と呼ばれる公式に含まれている。マクローリン級数の中の幾何級数に関する公式としては、 ●1/(1−χ)=Σχn 【n=0から∞、|χ|<1】 ●1/(1-χ)2=Σnχn-1 【n=0から∞、|χ|<1】 のほか、いろいろなバリエーションが知られている。但し、幾何級数に関しては|χ|<1が前提となっており、オイラーがなぜ範囲外に拡張できたのかについてはもう少し説明が欲しいところだが、高校数学の授業になってしまって面白くないかもしれない。 次回に続く。 |