じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



01月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る

クリックで全体表示。




 1月19日放送のモーサテ『パックンの眼』で、最近SNSで拡散しているという『Gentle parenting(優しい子育て)』が紹介されていた。概要は上の画像の通りだが、掲げられた指針の通りに親が実践するのは「優しくはない」というものであった。なお、パックンがネタにしたのは、

Gentle parenting can be really hard on parents, new research suggests.

という記事であったようだ。

 放送ではまた、アメリカで注目された主な育児法として、
  • 1920年代 行動主義:自立性を重視 →ハグするな
  • 1990年代 愛情育児:スキンシップを重視 →ハグが良い
  • 21世紀〜 のびのび育児 →干渉せず自由に
という変遷があると説明された。いっぱんに、それぞれの世代の親は「自分の親の教育法は間違っていた」と考える傾向があり、そのため、厳格な親に育てられた世代は自分たちの子どもをのびのびと育てるようになり、さらにそうして自由に育てられた世代は逆に厳格な親になるというように、世代とともにブレが生じるようである。
 なお、1920年代の行動主義的育児法では「ハグするな」となっていたが、望ましい行動を強化する手段としてのハグは肯定されていたはずである。但し、親による付加的な強化や弱化を行うと、子どもは親に気に入られるように行動するようになってしまう。そうではなく、実体験の中で自然随伴性に晒されることが望ましいことは間違いない。例えば、「危ないから木登りするな」とか「危ないからナイフを使うな」というように親が制限をかけるのではなく、(大怪我をしないように十分に配慮した上で)木登りをさせたりナイフを使わせたほうが、自立的に危険に対処できることは間違いない。
 放送ではさらにパックンが推奨する『民主的子育て(Authortative parenting、あるいはDemocratic parenting)』が紹介された。これは「明確なリミット(境界や範囲)設定、ルール遵守、期待する理由の説明→罰よりごほうび」を特徴とするもの。ネット上では、

The authoritative parenting style: An evidence-based guide.

などいくつかの紹介記事がある。基本的なテクニックは徹底的行動主義の方法にも似ているように思われるが、Authoritarian parents (権威主義的な親)とAuthoritative parents are(権威のある親)の違いを十分に理解することが必要であるようだ。


2024年1月19日(金)





【連載】ヒューマニエンス「“左と右” 生命を左右するミステリー」(5)鱗食魚の右利き・左利きの比率はなぜ半々なのか

 昨日に続いて、1月8日に初回放送された、NHK『ヒューマニエンス』、

「“左と右” 生命を左右するミステリー」

についてのメモと感想。

 さて、昨日の日記の終わりのところで、
 鱗食魚が右利き、左利きのどちらになるのかは親からの遺伝で決まるが、その比率の毎年の変化を調べると50%を中心として、40%から60%のあいだで定期的に変化している。自然界での調査によれば、鱗食魚は、右利きと左利きのつがいになることが多くこれにより子どもも半々に産まれる。このことで、餌となる魚がどちらに体をくねらしても対応できるようになる。
と述べたが、右利きと左利きの鱗食魚が半々になる理由はイマイチよく分からなかった。より厳密に考えると、エサとなる魚の逃避反応・回避反応が生得性のものなのか、習得性のものなのかによって、2つの説が可能となる。なおここで言う「エサとなる魚」というのは、「丸ごと食べられてしまう魚」ではなく「鱗の一部を囓られてしまう魚」という意味。なので、数回程度囓られても直ちに死ぬことは無いが、いずれ感染したり怪我が広がったりして早く死んでしまうことはあり得ると仮定する。
  1. エサとなる魚の逃避・回避反応は生得的
     この点については放送でも「魚の逃避運動は反射的なもの。魚は側面からの攻撃を受けると反対側の側面の筋肉を収縮させる。そうすることで、刺激とは反対の方向に逃げることができる」と説明されていた。しかしもしそうした無条件反射だけで逃避が行われるのであれば、学習によって逃避の成功率を高めることはできないはずだ。
     その場合でも成り立つ説明としては、エサとなる魚側にも生得的に右に逃げるのを得意とする魚と左に逃げるのを得意とする魚がいると仮定することである。そうすると、例えば左利きの鱗食魚は左側に逃げるのを得意としたエサ魚ばかりを攻撃するため、右側に逃げるエサ魚だけが生き残ってしまう。それによりエサを食べられなくなった左利き鱗食魚の数も減っていき、逆に右利き鱗食魚が増える。

  2. エサとなる魚の回避反応は習得的
     逃避反応は生得的な無条件反射であるかもしれないが、サカナはオペラント的な回避反応を習得することもできる。なので、左利き鱗食魚に何度か囓られたエサ魚は、自分の左側に鱗食魚が近づいてきた時に、早めに身をかわして(囓られる刺激を受容する前に)遠ざかるという回避反応を身につけることができる。そうすると、左利きの鱗食魚はエサを食べられなくなり数が減る。いっぽう、右利きの鱗食魚は数を増やす。

 上記のどちらの説が正しいのかは分からないが、2.のほうはエサ魚の個体内の行動変容、つまり一世代の中での変化に依拠しているため、同じ年の中での変化しか説明できない。放送で、

鱗食魚が右利き、左利きのどちらになるのかは親からの遺伝で決まるが、その比率の毎年の変化を調べると50%を中心として、40%から60%のあいだで定期的に変化している。

と紹介されていたことからみて、やはり1.の説が正しいのではないかと思われるのだが、三葉虫と同じように、エサ魚の逃避反応にも右利き、左利きがあるのかについては全く説明がなかったため謎のままに終わってしまった。

 次回に続く。