【小さな話題】
オーロラが東京で見えたら
7月29日朝の『日経モーニングプラスFT』で、
●オーロラが東京で見えたらデジタル社会が大混乱も
という興味深い話題を取り上げていた。木下祐輔さん(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)による解説は以下の通り【要約・改変あり】。ちなみに木下(きした)さんは大学院時代に地球惑星科学を専攻、現在は『未来戦略ユニット』の責任者。
- 太陽フレアというのは太陽の黒点の近くで起きる爆発現象。規模により何段階かに分類されているが、先日、最大規模Xクラスの爆発が複数回観測された。
- 今回は72時間で7回発生したが、これは観測史上初めて。
- これに伴い電気を帯びたプラズマが大量に宇宙に放出される。それが地球の大気圏まで到達し空気にぶつかって発光するのがオーロラ。
- 今回は北海道や石川県、アメリカではサウスカロライナやハワイなど低緯度の地域でも観られた。
- 太陽フレアは地球上の機器に様々な誤作動をもたらす。一例として、千葉県柏市で田植えの列がずれている写真が紹介された。田植え機が利用しているGPSが誤作動したため。
- 今回の現象は序章に過ぎない可能性がある。太陽フレアは11年周期で活発化しており、今年から来年にかけてピークになると予想されている。
- 1989年の太陽フレア大規模発生時には、アメリカやカナダの変電設備や送電設備が呼称し、大規模な停電が発生した。
- 総務省の『宇宙天気予報の高度化の在り方に関する検討会』資料では、通信・放送、衛星測位、衛星運用、航空運用、電力分野といった広範な分野で最悪のシナリオが想定されている【なお、2022年6月21日付けの公表資料はこちらにあり】。
- 前回の最盛期2012年にはプラズマの大きな固まりが放出されたが地球から外れたところを通過したため難を逃れた。NASAは「地球を直撃していたら現代文明を18世紀に引き戻すほどの威力があった」と指摘している。
- 太陽フレアの発生自体の予測は難しいが、太陽と地球はおよそ1億5000万km離れているので、発生から地球到達までには
- 強いX線はどは8分
- 高エネルギーの粒子は30分から2日
- プラズマの太陽風は2〜3日
といったタイムラグがあるのでそのあいだに対策をとることは可能。
- 情報通信研究機構の宇宙天気予報のHPには宇宙天気予報のHPがあり情報を提供している。今年度中にはさらに分かりやすい提供が行われる見込み。
- 東京電力、NEC、スカパーJSATのように、フレアが起こる前からの事前対策をとっている企業もある。
- 今回の最盛期には間に合わないかもしれないが、被害を補う保険や、太陽フレアの影響を受けにくい装置や素材の開発などにおいてビジネスチャンスがある。
以上が解説の概要であったが、確かに今の時代、夜空のオーロラを眺めて感動しているというだけでは済まされない様々な問題が起こりそうだ。
- 近年は自動運転技術がめざましく発展しているが、GPSを利用している場合、上掲の田植え機の例のように誤作動が起こって道路からはみ出したり衝突したりといった事故が起こりかねない。またそれを事前に防ごうとするため、長時間にわたってバスやタクシー、さらに航空機などが動けなく恐れがある。
- 鉄道自体は影響を受けなくても、信号系統や予約システムが停止すれば大混乱になるだろう。
- もともと存在自体が望ましくないと言えるが、GPSを利用したミサイルや無人機が誤作動を起こして病院や民間施設を誤爆する恐れがある。
- 大地震などの別の災害が同時発生した場合、通信手段が影響を受けることで避難や支援を適切にできなくなる恐れがある。
- 生成AIやブロックチェーンを利用したデジタル通貨ばかりでなく、スマホ決済も利用できなくなる恐れがある。
ということで、50年前、100年前に比べると、今の時代のほうが宇宙規模の自然災害に脆弱になっているかもしれない。平時に便利さを有り難がっているだけでは済まされない。
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