【連載】あしたが変わるトリセツショー『コレステロール』(2)動脈硬化性疾患予防ガイドライン
昨日の続き。5月23日にNHK総合の『あしたが変わるトリセツショー』で初回放送された、
●コレステロールを大解明!超悪玉かんたん発見&対策SP
についてのメモと感想。
放送の後半では、超悪玉コレステロールを減らす方法として、まずは中性脂肪や悪玉コレステロールをどう減らすのかについて、
●動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版(日本動脈硬化学会)
に基づく対策が紹介されていた。
放送では殆ど言及されなかったが、ガイドラインの2では、
- 2.1 禁煙
・動脈硬化性疾患の一次・二次予防のため、喫煙者には禁煙することを推奨する。
・ 動脈硬化性疾患の一次・二次予防のため、すべての人に受動喫煙を回避することを推奨する。
・ 禁煙介入はニコチン依存症の治療であり、禁煙成功率を上げるために禁煙補助薬を使用した治療
を推奨する。
- 2.2 飲酒
・動脈硬化性疾患の予防のためには、多量飲酒を避ける。
・飲酒者の飲酒状況を確認する。
- 2.6 肥満およびメタボリックシンドローム対策
肥満症やメタボリックシンドロームの治療の基本は、生活習慣の改善により、過剰な体重および内臓脂肪を減少させることである。
という生活習慣の改善が推奨されていた。
元の放送内容に戻るが、放送ではより能動的な対策として運動療法と食事療法が推奨された。
まず運動療法としては、
●ジョギングや水泳、速歩などの有酸素運動を1日30分以上×週3回以上(可能であれば毎日)または週に150分以上など
という「適度な運動」が推奨されていた。なお上掲のガイドライン2.5では、
●成人では、 1 日合計30分以上を週 3 回以上(可能であれば毎日)、または週に150分以上中強度以上の有
酸素運動を実施することは血清脂質を改善するため、推奨する。
と記されていた。但し、ガイドラインには、
しかし、年齢などの対象者の特性、運動強度、期間や介入前の血清脂質値にばらつきがあることやバイアスが大きいことにも留意する必要がある13)
。有酸素運動は、RCT で血清脂質の改善効果がみられ、その効果と運動量(時間)の相関が認められており、高い有効性を有すると言える。ただし、運動介入は薬物療法とは異なり、二重盲検が原理的に不可能である。またコレステロールはエネルギー源として利用されないため、運動療法に割り当てられた被験者が、他の生活習慣様式(特に食事)を自発的に改善し、アウトカムに寄与する可能性がある。運動療法で報告される改善効果は、一般に過大評価される傾向がある点に留意する必要がある。
という記述もあった。
もう1つの柱である「健康的な食事」に関しては、放送では
- 炭水化物や肉の脂身、鶏卵の摂取を控えめにする。
- アルコールの摂取量を制限する。
- 食塩は1日6g未満に制限する。
といった対策が推奨されていた。
上掲のガイドラインの『2.4 食事療法』では、さらに多くの対策が推奨されていた。ざっと抜粋させていただくと、
- FQ1 総エネルギー摂取量を制限して適正な体重を維持することを動脈硬化性疾患の予防に推奨するか?
- FQ2 適正な総エネルギー摂取量のもとで日本人に適切な脂肪エネルギー比率を維持することを動脈硬化性疾患の予防に推奨するか?
- FQ3 適正な総エネルギー摂取量のもとで、飽和脂肪酸を減らすこと、または飽和脂肪酸の摂取量を他の不飽和脂肪酸(一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸)に置換することを動脈硬化性疾患発症の予防に推奨するか?
- FQ4 n-3 系多価不飽和脂肪酸の摂取量を増やすことを動脈硬化性疾患発症の予防に推奨するか?
- FQ5 n-6 系多価不飽和脂肪酸の摂取量を増やすことを動脈硬化性疾患発症の予防に推奨するか?
- FQ6 一価不飽和脂肪酸の摂取量を増やすことを動脈硬化性疾患発症の予防に推奨するか?
- FQ7 トランス脂肪酸を制限することを動脈硬化性疾患予防のために推奨するか?
- FQ8 コレステロールの摂取量を制限することを動脈硬化性疾患発症の予防に推奨するか?
- FQ9 食物繊維の摂取を増やすことを動脈硬化性疾患の予防に推奨するか?
- FQ10 果糖を含む加工食品の摂取量を減らすことを動脈硬化性疾患予防に推奨するか?
- FQ11 日本食パターンの食事を動脈硬化性疾患予防に推奨するか?
となっており、具体的な『動脈硬化疾患予防のための食事療法』として表の3-5に、以下のようなまとめがあった。
- 1 .過食に注意し、適正な体重を維持する
・ 総エネルギー摂取量(kcal/日)は、一般に目標とする体重(kg)*×身体活動量(軽い労作で25〜30、普通の労作で30〜35、重い労作で35〜)を目指す
- 2 .肉の脂身、動物脂、加工肉、鶏卵の大量摂取を控える
- 3 .魚の摂取を増やし、低脂肪乳製品を摂取する
・ 脂肪エネルギー比率を20〜25%、飽和脂肪酸エネルギー比率を 7 %未満、コレステロール摂取量を 200 mg/日未満に抑える
・ n-3 系多価不飽和脂肪酸の摂取を増やす
・ トランス脂肪酸の摂取を控える
- 4 .未精製穀類、緑黄色野菜を含めた野菜、海藻、大豆および大豆製品、ナッツ類の摂取量を増やす
・ 炭水化物エネルギー比率を50〜60%とし、食物繊維は 25 g/日以上の摂取を目標とする
- 5 .糖質含有量の少ない果物を適度に摂取し、果糖を含む加工食品の大量摂取を控える
- 6 .アルコールの過剰摂取を控え、25 g/日以下に抑える
- 7 .食塩の摂取は 6 g/日未満を目標にする
ここまでの推奨項目を見ると、私個人は、別段何かを我慢したり何かを目指しているというわけではないが、結果的に身についた日常習慣として、
- タバコは吸わない。というか生まれてから1本も吸ったことがない。(但し学部学生時代は麻雀やパチンコをやっていたので受動喫煙に晒された可能性はあった。
- 酒は一切飲まない。定年退職以前は、毎年の卒業祝いの席で多少の飲酒をしたことはあったが、退職後は1滴も飲まなくなった。
- 半田山植物園などに毎日ウォーキングに出かけている(雨の日を含む。休園日は別コース)。半田山植物園は山の斜面にあるのでそれなりの運動になる。合計時間は1時間半程度。
- 肉はあまり食べない。鶏卵も滅多に食べない。
- 自家製ヨーグルトを毎日摂取している。材料は低脂肪牛乳。
- 野菜、海藻、大豆製品はそれなりに窃取している。
- 甘い果物は好物ではあるが物価が高いのであまり食べない。
- 醤油は刺身以外では使わない。おひたしや餃子などは醤油なしでそのまま食べている。
ということで、かなり優等生的な生活をしているが、たまに4割引のシュークリームを食べたり、n-3 系多価不飽和脂肪酸の摂取が少なかったりといった問題はまだまだ残っている。
次回に続く。
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