Copyright(C)長谷川芳典 |
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秋雨前線の南下により、9月23日の岡山は、最低気温が19.1℃、最高気温が28.6℃となり、熱帯夜、猛暑日、真夏日の暑さから解放された。 この日はおおむね晴れていたが、日没の直前、南東の空に虹の一部(根っこの部分)が出現した。 手前は世界三大黄金像の1つ【←長谷川が勝手に選定】、岡山の大黒天。新幹線も見えている。 |
【小さな話題】アリに言葉あり!?(1)集まれー!という音 9月15日初回放送のNHK サイエンスzeroで、 ●アリに言葉あり!?農業するアリの“会話”に迫れ! という興味深い話題が取り上げられていた。 アリ社会についてはこれまでも何度か話を聞いたことがあり、過去日記を検索したところ、 2018年9月21日又吉直樹のヘウレーカ:アリ社会の分業と「利他」性 などで取り上げていたことが分かった。 今回の放送では、パナマやブラジルなど中南米に生息する『ハキリアリ』(ハキリアリ属とヒメハキリアリ属の総称)が取り上げられた。このアリは葉っぱを切り取り、その葉っぱにキノコの菌糸を植え付けて育てている。最近の研究で、このアリたちは様々な音を発してコミュニケーションをとっているらしいことが明らかになった。 ちなみに、今回の解説者の村上貴弘さん(岡山理科大学)はどこかでお見かけしたことがあった気がしたので、又吉直樹のヘウレーカの放送リストをチェックしたところ、
●アリ語で寝言を言いました (扶桑社新書) という一般向けの御著書でご研究の概要を知ることができそう。 さて本題のハキリアリであるが、国内で飼育・展示されているのは多摩動物公園の昆虫館だけであるという。「見張り」「子育て」、「ゴミ捨て」など30以上の役に分業化しているというからスゴい。 特別なマイクで集音すると、葉を切る時にたてる音にはいくつかの種類があり、キノコの栽培に適した時に出す「良い葉っぱを切っているのでみんなおいでよ」という音と、栽培に適さないヒイラギの葉っぱや枯れた葉に遭遇した時に出す音の波形が明らかに異なっていることが分かる。 ドイツの研究チームが行った、 ●Roces, Tautz, & Holldobler (1993).Stridulation in leaf-cuttin ants: Short-rangerecruitment through plant-borne vibrations. という実験では、二股に分かれている枝の一方でハキリアリが葉を切る時の音を提示、もう一方は無音という条件で、アリたちがどちらの枝に進むのかがチェックされた。その結果、200匹のうち71%が音が提示された枝を選ぶことが確認されたという。また、村上さんがパナマの森林で葉っぱの近くに同様の音を提示する実験を行ったところ、アリたちが集まってくることが確認された。 ここまでのところでいったん私の感想・考察を述べさせていただくが、まず、動物間のコミュニケーションを調べる場合には、発信者側と受信者側の行動に分けて考える必要があるように思う。例えば、発信者側が音を出すこと自体は物理現象の結果(囓る、擦る、割るなど)であったとしても、受信者たちがその音を手がかりにして集まってくるということがある。この場合、資源が枯渇しない限りは、受信者に有益な結果が得られたことになる。但し、発信者は別段「おーい、集まれ」と呼び寄せているわけではない。 あと、「集まる」という行動は、独立した事象にならない場合がありこれまた注意が必要。発信者の音を手がかりに数匹程度のアリがバラバラに集まってくるのは独立事象だが、何十匹、何百匹ものアリが押し寄せてくる場合はもはや音を手がかりにする必要はない。周りのアリの後ろににくっついて動くだけで結果的に1箇所に集まれるようになる。よく知られた例としてヒツジの行動がある。ヒツジは1頭1頭が具体的な行き先めざして動いているのではなく、単に他のヒツジたちの後を追っているだけであると言われている。 このほか、多数の個体が通過した枝はニオイがついており、音ではなくニオイで集まるという可能性もある。 ということで、「集まれー!」というコミュニケーションについては、他の要因の可能性を適切に取り除いていく可能性があるとは思うが、そのあたりは慎重にコントロールされているものと思われる。 次回に続く。 |