じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 ウォーキング中、大きめの昆虫が肩に止まり、背中に潜り込んで袖口から出てきた。正体はカマキリであったが、なぜ背中に潜り込んだのかは不明。
 お腹が大きいのでメスと思われるが、あるいはハリガネムシの寄生で膨れているのかもしれない。


2024年10月1日(月)





【連載】高齢者のQOL(Quality of Life)とQOD(Quality of Dying)(1)これまで述べたことと、新たな視点

 10月は私の生まれた月ということもあり、人生について考えることが多い。私の公式の見解は2017年10月に行動分析学会のシンポジウムでの話題提供であり、要旨は、

徹底的行動主義が貢献できる可能性を多面的に探る。具体的には、
  • 健康寿命を延ばす上での貢献→規則的な生活習慣の維持、ウォーキング、Web日記、認知症予防脳トレ
  • 行動的QOLの尊重
  • 巨視的行動主義に基づく継続的、包括的な活動の強化
  • 行動分析学の基本原理を活かした「いま、ここ」の楽しみと価値づくり(新たな習得性好子の創造、強化スケジュールの応用)
  • 活動の束としてのライフスタイルの構築
  • ACTの発想に基づき、「ネガティブな思考や感情をコントロールできなければいけない」といった神話を捨てる。また、認知症高齢者や緩和ケアの段階では、「できないことは改善しなければならない」といった成長神話を捨て、いまこの瞬間を大切にするような強化スケジュールのもとで最期が迎えられるような環境作りを準備する。
といった内容であり、また同じ時期に書いた、定年退職前の最後の紀要論文:

スキナー以後の心理学(26): 高齢者のライフスタイル構築と終末

では、
本稿は、行動分析学の視点から、高齢者のライフスタイルの構築と終末に関する有用な知見を提供することを目的とする。このテーマは、 (1)スキナーの幸福観の概要と高齢者への適用 (2)選択機会と高齢者の行動的QOL (3)複数の行動のまとまりから構成される「活動」概念に基づいて、より巨視的な観点から高齢者のライフスタイルの構築を考える (4)終末期における不安や恐怖への対処 という4つの観点から総合的に検討する必要があると考えるが、本稿では紙幅の制限により、(2)についてはすでに長谷川(2012, 2013)で論じているのでここでは省略し、また(1)と(4)は概略を述べるにとどめ、新しい概念を取り入れた(3)について重点的に取り上げていくことにしたい。
という点が論じられた。

 72歳という年齢に達することで、上掲で論じた点は殆ど私自身の問題と重なるようになってきた。いくつかの資料によれば、
  • 日本人の健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳(2019年)。平均寿命は、男性が81.09歳、女性が87.14歳。
  • 日本人男性が81歳まで生存できる割合は60%、84歳まで生存できる割合は50%【こちらに詳しい資料あり】
  • 『人生100年時代』などという言葉も耳にするが、日本人男性が100歳まで生存できる割合はわずか1.4%で殆ど奇跡に近い。
 もっとも、上掲のデータは生まれたばかりの男の子が平均して何歳まで生きられるか、81歳まで生きられる人は何パーセントか、といった数値であって、すでに72歳まで生きている人の余命はあと12〜13年程度はありそうだ。




 これまでの私の主な関心事は高齢者のQOL(Quality of Life)の向上という点にあったが、最近は、これに加えてQOD(Quality of Dying)についても考えるようになった。
 「Quality of Dying」とほぼ同義で使われる言葉に「Quality of Death」とか「Good Death」がある。ネイティブの英語話者の語感については調べたことがないので分からないが、私の貧弱な英語感覚だけから言えば「Death」というのは「死」という状態を意味する言葉であって、当事者の行動のプロセスが含まれていないような気がする。いっぽう「dying」のほうは、ランダムハウス英語辞典では、形容詞としては、

【1】死にかけている,瀕死(ひんし)の(expiring): a dying man 瀕死の人 the dying and the dead 死にかけている人々と死んだ人々.
【2】臨終の,末期(まつご)の: dying wishes 臨終の願い


というようにまだ死んでいない最期の状態を意味しており、名詞のdyingも同じ意味を含んでいるのではないかという気がする。もっとも名詞の「death」にも「死に方」という意味はあり大した違いはないのかもしれない。念のためCopilotに尋ねたところ、以下のような回答をいただいた。
「Quality of Dying(QOD)」と「Quality of Death(QOD)」は、どちらも「死の質」を意味しますが、微妙な違いがあります。
  • Quality of Dying**: これは「死にゆく過程の質」を指します。つまり、終末期のケアや患者の苦痛管理、精神的なサポートなど、死に至るまでのプロセス全体に焦点を当てています1。
  • Quality of Death**: こちらは「死そのものの質」を指し、どのように死を迎えるか、死の瞬間やその直後の状況に焦点を当てています2。

どちらの概念も、患者やその家族が満足できる形で死を迎えることを目指しており、緩和ケアや精神的サポートが重要な役割を果たします12。
(1) クオリティ・オブ・デス(QOD)とはーー死の質について考える .... https://allabout.co.jp/gm/gc/466674/.
(2) QOD(死の質)が問われる時代へ 自分・家族の「死に方」への .... https://womanslabo.com/c-case-trend-191030-1.
(3) 世界一「満足いく死」を迎えられるのはイギリス?日本は14位 .... https://www.kango-roo.com/lifestyle/2146/.
やはり、私の関心事から言えばQuality of Dyingのほうが適切であるように思われる。

 次回に続く。