じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



10月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る

クリックで全体表示。



 半田山植物園内で見つけたヌマガエル(たぶん)。路上をピョンピョン跳ねて逃げようとしていたが、私が追いつくと今度はジッとして保護色で身を守ろうとしていた。この切り替えはスゴい。



2024年10月4日(金)





【連載】高齢者のQOL(Quality of Life)とQOD(Quality of Dying)(4)PTG(心的外傷後成長)

 昨日に続いて、高齢者のQOLとQODの話題。今回は、2月21日の日記で言及した『PTG(Post-traumatic Growth、心的外傷後成長)』について考察する。リンク先の内容は以下のようなものであった。

多くのがん患者は、
  • 容体の悪化
  • 治療の断念
  • 死の恐怖
  • 将来の不安
といったさまざまな不安や苦しみ、死の恐怖に直面する。しかしその感情と向き合うことで、がんという経験が人生にもたらす意味を考え始める。すると、一部の患者の心では、苦しみの中から新たな人生観が生まれていくという。これはPTGと呼ばれ、いま世界中で研究されている。

がん患者の中で観察されている顕著なPTGとしては、
  1. 人生に対する感謝:一日一日を大切するようになった。生きていることに感謝する。
  2. 新たな視点:生きがいについて考える。人生の優先順位が変わる。
  3. 他者との関係の変化:周囲に支えられていることに気づく。人の痛みや苦しみがわかる。
  4. 人間としての強さ:人生の終わりを受け入れる。自分の気持ちに素直になる。
  5. 精神性的変容:超越的な力を感じる。自然への感性が鋭敏になる。
という5つが挙げられる。
 念のため、Copilotに最新の研究内容を教えてくださいと依頼したところ以下のような回答をいただいた。
心的外傷後成長(PTG)とは、トラウマティックな出来事を経験した後に、心理的、社会的、スピリチュアルな面でポジティブな変化が生じる現象を指します。最近の研究では、PTGには適応的な側面と非適応的な側面があることが示唆されています1。
  • ### 適応的な側面
    適応的なPTGは、以下のようなポジティブな変化を伴います1:
    • **新たな可能性の発見**:新しい目標や興味を見つける。
    • **人生に対する感謝**:日常の小さな喜びに感謝する気持ちが強まる。
    • **人間としての強さ**:困難を乗り越える力が強化される。
    • **他者との関係の深化**:家族や友人との絆が深まる。
    • **精神的な変容**:スピリチュアルな成長や価値観の変化。
  • ### 非適応的な側面 一方で、非適応的なPTGも存在し、これは過度の楽観主義や現実逃避などを含むことがあります1。これらは一見ポジティブに見えるものの、長期的には問題を引き起こす可能性があります。
  • ### 影響を及ぼす要因
    PTGに影響を与える要因として、以下の3つが挙げられています1:
    • **認知的回避**:トラウマに対する考えを避ける傾向。
    • **楽観主義**:未来に対する前向きな見方。
    • **行動変容**:PTGに基づいた新しい行動パターンの採用。
  • ### 具体的な研究例
    例えば、東日本大震災の被災地での研究では、児童生徒のPTGがレジリエンスや自尊感情、ソーシャルサポートと関連していることが示されています2。また、スポーツ傷害を経験したアスリートにおいても、PTGが見られることが報告されています3。

PTGは、トラウマを経験した人々が新たな視点や価値観を得るための重要なプロセスであり、その理解は心理的支援や治療においても重要です。

(1) 心的外傷後成長に関する研究動向とその展望 - 国立情報学研究 .... https://hyogo-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=16575&item_no=1&attribute_id=17&file_no=1.
(2) 東日本大震災被災地の児童生徒の心的外傷後成長(PTG)に .... https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasmh/18/1/18_4/_article/-char/ja.
(3) スポーツ傷害に特化した心的外傷後成長の特徴 - J-STAGE. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpehss/63/1/63_17039/_article/-char/ja/.
(4) 一般病棟で家族を失ったがん患者遺族の心的外傷後成長 ... - J .... https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspm/13/2/13_139/_html/-char/ja.
 Copilotの出典リストの中では、

●東・伊藤(2022). 心的外傷後成長に関する研究動向とその展望─適応的側面と非適応的側面に着目して─発達心理臨床研究 28, 21-28.

このほか、

●飯村周平(2016). 心的外傷後成長の考え方 .――人生の危機とポジティブな心理的変容――. ストレスマネジメント研究, 12, 54-65.

という文献がヒットした。また、

心的外傷後成長の意味

という分かりやすい解説記事もヒットした。

 心的外傷後成長(PTG)とは、定義上、災害や事故などのトラウマティックな出来事の体験を前提としているが、一部の癌患者でも同じような成長が見られるということは意味深いところがある。もっとも、癌の宣告がトラウマティックな「心的外傷」をもたらすというのは、患者への情報の伝え方やサポートの仕方に問題があるような気がする。こちらのような解説動画で癌治療や予後についてある程度の知識を備えていれば、突然宣告を受けたからといってトラウマティックな「心的外傷」には至らないようにも思う【ということもあって、リンク先のチャンネル名は「がん防災チャンネル」という名前になっている】。

 それはそれとして、上掲の『適応的な側面』に挙げられている、「新たな可能性の発見」、「人生に対する感謝」、「人間としての強さ」、「他者との関係の深化」、「精神的な変容」、といった成長は、癌宣告を受けていない健康体の高齢者であっても、それなりに「悟る」可能性があるように思う。じっさい80歳、85歳と歳を重ねていけば、別段、癌宣告を受けなかったとしても自分の余命がせいぜい10年程度であることは分かる。であるなら、自分の置かれている状況をしっかりと把握すれば、誰でもPTGに相当するような成長を達成し結果的にQOLやQODを高めることができるようになるかもしれない。

 次回に続く。