じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 10月11日(金)の朝はよく晴れて、備前富士の上に美しい朝焼けが見られた。



2024年10月11日(金)




【連載】血液型と出身県で病気リスクや体質が分かるか?(3)多数の負傷者が出た時はO型者への処置を優先するべきか?

 昨日に続いて、「カズレーザーと学ぶ。」で9月10日に初回放送された、

●血液型と出身県でわかる!最新タイプ別の病気リスク&太りやすい体質の県

についてのメモと考察。

 放送では続いて、ABO血液型のにおける抗原と抗体の関係が解説された【要約・改変あり】。
  1. 抗原とは細胞の目印になっているマーカー、また病原体が体内に入ってきた時にそれを排除するためにできてくるのが抗体。鍵と鍵穴のようにピッタリとはまると異物として認識され攻撃の対象になる。
  2. B型の人はA型の人が持っている抗原を攻撃する。したがってA型者から輸血されるとA型抗原が入ってきて攻撃されるため血が固まる。
  3. 昔はO型の血液は誰にでも輸血できると言われていたが、O型の血液の中にもA型抗体やB型抗体があるので現在では輸血しない。
 この話は中学生の頃に習っているが、私にはよく分からないところがあった。それは、抗原が赤血球の上にあり、抗体は血清の中にあるということをちゃんと理解できていなかったためかと思われる。

 私が子どもの頃はまだ、O型者の血液は抗原が無いので他のどの血液型者にも輸血できるというような話が信じられていた。しかしO型者の血液をA型者に輸血すると、その血液に含まれているB型抗体がもともとA型者の血液にあるA型抗原を攻撃するはずだ。中学の頃だったか、このことについて先生に質問したことがあった。その時には、確か、輸血される血液の量は体全体の血液に比べると少ないので、O型者の輸血の中にB型抗体が含まれていても相対的に少ない。よってA型者が持っているA型抗原のごく一部が攻撃されるだけなので大きな事故にはならない、というような説明をいただいたと記憶している。
 なお同様のことはAB型者が輸血を受ける場合についても言えるはずだ。例えばO型者から輸血を受ければ、その血清の中にはA型抗体とB型抗体が含まれており、それらがAB型者の赤血球にあるA型抗原とB型抗原を攻撃するだろう。輸血した量に応じてダメージを受けるはずだ。なので結局、AB型者はAB型者だけからしか輸血を受けられないことになり、輸血をする場所によっては適合者が見つからず不利益を受ける恐れがありそうだ。

 元の話題に戻るが、放送では続いて、毛髪(毛根のあたり)、皮膚、腸内、爪など、全身の細胞にも血液型があると説明された。いっぽうウイルスは結合しやすい抗原が違っている。これによって感染しやすい血液型が変わってくる。例えばA型の細胞にはA型抗原があり、A型抗原にくっつきやすいウイルスが入ってくるため感染しやすくなる。もっともこれは確率的な問題であり、B型者でも感染することはある。AB型者の細胞はA型抗原とB型抗原の両方を持つため病気リスクが高いという。

 以上とは別に、血の固まりやすさにも血液型による違いがあるという。O型は固まりにくくA型は一番固まりやすい。その原因は、O型者の血液凝固因子が他の血液型に比べて約3割少ないことにある。じっさい、

Takayama, W. et al. (2019). The impact of blood type O on mortality of severe trauma patients: a retrospective observational study. Critical Care, 22, 100,

という文献によれば、救急センターに運ばれた重症患者の死亡率を比較すると、O型者28.2%に対して、A型者は10.5%、B型者は14.4%、AB型者は8.9%、よってO型者以外の平均は11.5%、というように、O型者が最も死亡率が高いことが分かる。念のため当該論文の要約の一部を引用させていただくと以下のようになった。【翻訳はDeepLによる】

背景:
最近の研究では、ABO血液型の違いが、止血障害や出血を含むさまざまな疾患の潜在的リスクとして関与している。本研究では、ABO血液型の違いが重症外傷患者の死亡率に及ぼす影響を評価した。
方法:
日本の2つの3次救急救命医療センターにおいて後方視的観察研究を実施した。Injury Severity Score(ISS)>15の外傷患者を対象とした。血液型の違い(O型とその他の血液型)と、全死亡、原因別死亡(失血、外傷性脳損傷、その他)、人工呼吸器無使用日数(VFD)、総輸血量の転帰との関連を、単変量および多変量の競合リスク回帰モデルを用いて評価した。さらに、年齢、ISS、Revised Trauma Score(RTS)で調整した多変量解析における回帰係数を用いて、転帰に対する血液型O型の影響を評価した。
結果:
本研究には合計901名の患者が組み入れられた。研究集団はABO血液型によって分けられた:O型284人(32%)、A型285人(32%)、B型209人(23%)、AB型123人(13%)。血液型O型は高い死亡率と関連していた(血液型O型の患者では28%であったのに対し、他の血液型の患者では11%であった;p<0.001)。さらに、この関連は多変量モデルでも観察された(調整オッズ比=2.86、95%信頼区間1.84-4.46、p<0.001)。全死因院内死亡率に対する血液型Oの影響は、ISSの12増加、RTSの1.5減少、年齢の26増加に匹敵した。さらに、血液型O型は他の血液型と比較して、より高い原因別死亡率およびより短いVFDと有意に関連していた。しかし、輸血量については両群間に有意差は認められなかった。
結論:
血液型O型は重症外傷患者の高い死亡率と有意に関連しており、転帰に大きな影響を及ぼす可能性がある。適切な介入を開発するためには、この関連性の根底にあるメカニズムを解明するさらなる研究が必要である。

 ということで、このデータを見る限りは、O型者の死亡率はかなり高い。素人の私からは確かなことは言えないが、例えば大規模な列車事故、あるいは、あってはならないことだが、テロや爆撃などで多数の負傷者が出た時には、まずはそれぞれの人の血液型を調べて、O型者から順番に止血・輸血等の処置を開始すれば全体の死亡率を下げられる可能性があるかもしれない。もっともこれを徹底すると、上掲で死亡率が最も低いとされたAB型者は常に止血・輸血等を後回しにされてしまい結果的に手遅れという不利益を被る恐れもある。

 次回に続く。