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11月19日や11月24日の日記に座主川沿いの紅葉の写真を掲載した。座主川の岡大構内を流れる区間(教育学部南〜文法経南西)では左岸沿いには遊歩道が設けられていて散策に適しているいっぽう、右岸沿いは一部を除いて草木が生い茂りジャングル化している。 写真は教育学部南に展示(放置?)されている裸体像群。草木に囲まれてジャングルから出てきた裸族のように見えてしまう。 |
【連載】あしたが変わるトリセツショー『がん対策』(17)ナッジの応用(10)厚労省公開資料からナッジを学ぶ(7)商業マーケティングの手法を公衆衛生に 11月22日の続き。放送内容に関連した話題として、ネット上で公開されている、 ●溝田友里(2021).ナッジ理論等の行動科学を活用した健康づくりの手法についてー具体的事例を交えてー というパワーポイント・スライドをもとに、ナッジについて考察をしていく。 さて、この連載の11月15日のところでも指摘させていただいたが、がん検診を推奨するテレビ番組や、ナッジの手法を取り入れた勧奨葉書だけでは、すべての対象者の関心を高めることはできない。もともと関心がある人でないとテレビや葉書を見ない可能性が高いからである。例えば「今年度は○○市から補助があるから、今なら安く受けられます」というメッセージは、がん検診に多少なりとも関心がある人に対しては有効であるが、全く関心の無い人にとってはどうでもいいことになる。 上掲のスライド画面34頁以下ではこの点について考察されていた。その基本は、ソーシャルマーケティングの考え方にある。要するに、対象者を細分化し(セグメンテーション)、それぞれのグループの中で共通しているニーズに応じて、気持ちに響くメッセージを送ることである。 セグメント別のメッセージの具体例として、乳がん検診の勧奨が挙げられていた。それぞれの層の気持ちに配慮して以下のようなメッセージを伝えたことで、いずれの層においても受診率を2.9倍〜3.9倍アップすることができたという。
もっとも上記のようなセグメント別に異なるメッセージを送るためには、事前調査で対象者を振り分け、メッセージを3種類印刷した上で送り分ける必要があり、手間やコストを考えると現実的とは言えない。このことについて、スライド36頁では、
スライドでは、このほか乳がん検診や子宮頸がん検診で多く見られる不安への対応として「女性医師に診てもらえる」、またいったん不安をいだいた人に対して「早期発見で治ります」と安心させるようなメッセージを実際のデータをグラフとともに示す対応が紹介されていた。 ここからは私の感想・考察を述べさせていただくが、スライドにも記されているように、溝田さんたちの取り組みは、 ●対象となる人々と社会に利益をもたらすことを目的に、人々の行動変容を促すため、商品等の販売やプロモーションを行う商業マーケティングの手法を公衆衛生に取り入れる という点で大きな特徴がある。 私の偏見かもしれないが、行政主導の対策というと、まずは数値目標を定めてトップダウンでそれを各部署に割り当て、未達成のところを叱りつけるといったイメージがあるが、具体的な手法を示さずに中間管理職を締め付けるだけでは改善には繋がらない。商業マーケティングともなれば、うまく行かない時はすぐに結果に結びついてくるし、「数値目標が達成できないのは根性が足りないからだ」といった精神主義は通用しない。 今回の話題はがん検診に関わるものであったが、同様の手法が活用できそうな身近な問題としては、禁煙対策、自転車の安全対策(ヘルメット着用、傘さし運転禁止など)などが挙げられるかと思う。 次回に続く。 |