じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 4月30日のNHK『あさイチ』で、放送の冒頭、

あるものに対しておよそ6割の人が月に50万円以上払っているそうなんですが、何だと思われますか?

というクイズが出題された。そのあとすぐに「ヒントは、ある病気に関係しているもの」と補足された。

 正解は「がんの治療にかけた薬剤費」。去年発表された代表的な17種類の進行がん患者約15000人を調査したところ、そのうちの約6割が50万円以上の薬剤費をかけていたことが分かったとのことであった。

 もっとも冒頭の「およそ6割の人があるものに対して月に50万円以上払っている」というのは、「日本人全員の6割が50万円以上払っている」という意味にとれてしまう。じっさいは進行がん患者の6割という意味であり、
  • 「がんは日本人の2人に1人がかかる病気」だと言っても、全員ががん患者というわけではない。
  • 「薬剤費50万円以上」と言っても健康保険適用により最大でも3割負担。さらに高額療養費制度により負担の限度枠がある。
などを考慮すると、朝ドラを視ていた人にそのまま視聴を継続させるための誇大な表現であったという印象を受けた。

 とはいえ、じっさいにがんに罹ると、保険適用や高額療養費制度では補えないような負担も少なくない。じっさいにがんにならないと気づかない点を分かりやすく解説してくれたという点では有益な放送であった。↓の記事参照。

2025年05月1日(木)





【小さな話題】あさイチ「まさかの想定外が…がんとお金のリアル 経験者が語る落とし穴」(1)

 4月30日の『あさイチ』で表記の特集をやっていた。ふだんこの番組は視ていないのだが【病院の待合室でたまたま視る程度】、この日は上掲のクイズに引き留められて最後まで視てしまった。

 ところで、NHK-Eテレ以外の地上波の内容はTVでた蔵にテキストとして記録されている。といっても『チコちゃんに叱られる!』などはかなり省略されていて殆ど役に立たないのだが、今回の『あさイチ』に関しては異例とも言えるほど詳細に記録されており、放送を見逃しても『でた蔵』のテキストを読むだけで大体のことは理解できる内容になっていた。NHKプラスの視聴期限が切れた人は、『でた蔵』を閲覧することをオススメする。
  1. 40歳代の乳がん経験者は、医療保険・がん保険に入っていたにもかかわらず1円もおりなかった。そのいっぽう、30歳代の乳がん経験者は、貯金が殆ど無く、また仕事を1年間休職したが、保険や制度を活用したおかげでサポートを受けることができた。ということもあり、がん保険の定期的な見直しや最新のがん治療について日頃から情報を集めておく必要がある。
  2. 放送ではまず年代別の女性のがん罹患率のグラフが示された。女性の場合、40歳代の働き盛りから乳がんにかかる率が高くなっている(10万人あたり200〜250人)。子宮がんは50歳代がピーク。大腸がん、胃がん、肺がんは加齢とともに比率が上がり70歳代半ばからは大腸がんの比率が最も高くなる。
  3. がんになった時の出費について特に注意してほしい人は以下の通り。
    • 扶養に入っている。→扶養に入っているとパートナーの所得になるため、自分の収入がないにも関わらず年収が高い区分となるため注意が必要。
    • 家計を1人で担っている。
    • 年収770万円以上。→70歳未満の人が高額療養費制度を利用したときに自己負担しなければいけない1月の上限額の一覧では、年収によって5つの区分に分かれている。この金額を超えた医療費についてはあとで払い戻されるなどして戻って来る。所得によって備えの目安は大きく変わる。年収が約770万円以上になると自己負担額が約8万円から約17万円に上がる。
    • 自営業・個人事業主。→付加給付があると高額療養費の負担がさらに軽減できる。公務員の場合は自己負担額上限が一律で2.5万円となる。いっぽう、自営業・個人事業主は軽減されない。
    • リモートワークできない仕事。
  4. がんは手術費用以外にも想定外のお金がかかる。乳がんのステージ1と診断された39歳の女性のケースは以下の通り。
    • 早期のがんなので手術だけで終わると思っていたところ、MRIやCT、骨の転移を調べる検査が何ヶ月も続き、会計するまで金額がわからなかった。
    • 3ヶ月で8種類の検査を受け、3割負担で14万円かかった。
    • 乳房の一部を切除する5泊6日の入院手術、部屋代なども含め、かかったのはおよそ8万円。
    • その後も放射線治療で1か月に20日通院することになった。
    • 35万円かけてようやく一通りの治療が終わったところ、主治医から『オンコタイプ検査』(がん細胞の遺伝子を調べ再発リスクを予測する最新検査)。抗体をアメリカに送る検査で、保険適用だが13万円。
    • 検査の結果、再発リスクが高いと判断され抗がん剤治療も受けることになった。抗がん剤は卵巣機能に影響が出るので、今後の妊娠・出産を考えるならば卵子凍結が必要。卵子凍結にかかったお金はおよそ40万円。
    • がんの疑いがあると言われてから1年、ようやく治療が一段落する日を迎えた。窓口で支払った総額は先月までで95万円にのぼった。

    もっともこの女性はある備えをしていたことで、貯金を全く取り崩すことなく95万円を支払うことができた。
    • 「高額療養費制度」
      高額療養費制度は年収などにより医療費の支払額の上限が決められていて、それを超える分は払い戻されるというもの。この女性の場合、1か月の自己負担の上限は5万7000円だった。去年の1月は手術前の検査などで6万3600円を病院の窓口で払っていたが、医療費を申告したことで上限を超えた分が返金された。
    • 「民間の医療保険」
      。民間の医療保険からがんの診断でおりる一時金を受け取れた。数年前、身近な人の病気をきっかけに一時金を2倍に見直していた。
    • 「傷病手当金」
      傷病手当金とは、病気などで仕事を連続して3日休んだ時、給与の3分の2ほどが受け取れる制度。会社員や公務員が対象。この女性は当初有給休暇を取って治療していたが、予想より長く休むことになったためこの制度を利用したという。10ヶ月で150万円ほど受け取ることができた。
  5. 放送では続いて、がん保険で失敗した事例が紹介された。
    • 夫と中学生の子供と暮らす47歳の女性は、手術・放射線治療・入院が対象となる保険に入っていた。がん以外にも心筋梗塞や脳卒中をカバーする医療保険で月額1万7000円の掛け捨てだった。
    • 加入から3年経った2016年、乳がんステージ1と診断され、保険会社に連絡を取ると、500万円程度が振り込まれた。
    • 去年の年末、発熱で病院を受診したところ、乳がんの骨への転移が発覚した。分子標的薬という高額の薬を使用。通院しながら薬代として月8万円ほどを支払うことになった。しかし、診断一時金は生涯を通して500万円までであり、また治療給付金は契約では手術や入院などは給付対象だが、通院治療は対象外だったため、1円も出なかった。


 ここでいったん私の感想・考察を述べるが、まず私自身は、がん保険や一般的な医療保険には全く入っていない。このWeb日記にも何度か書いたことがあるが、保険というのはもともと、働き盛りの年代の人が万が一病気になった時に家族が路頭に迷わないようにするために入るべきものである。定年退職から7年も過ぎたいまの自分の場合は、そのような心配は不要。また、がんになっても標準治療が原則であって、それ以上の高度な先進医療は望まない。いかに先進的といっても、それが成功したからといってせいぜい5年程度延命できるだけのことだ。ステージ4になった患者さんの中には、可能な限りあらゆる治療法にチャレンジするという方もおられるが、私自身はそういうことにエネルギーをそそぐ時間があるなら、むしろ余命わずかな状態を受け入れて人生を締めくくることに専念したいと思っている【←働き盛りの人たちや子どもたちががんにかかった場合は、少しでも長く生き延びることに注力すべきだとは思うが】。

 ということで、今回の放送を視聴したことで何かの保険に入ろうという気持ちにはならなかった。むしろ、民間の保険には頼らず、自己資金だけで治療を行っていくとしたらどういう制度が利用できるのか?に関心があった。あとは、緩和ケアへの移行も重要かと思う。

 次回に続く。