じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



05月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る

クリックで全体表示。



【カナリア諸島その4:機内のトイレマークの謎】
 カナリア諸島旅行の小ネタその4。

 今回利用したエミレーツ航空A380の機内には、トイレの使用状況を示す16通り(24)の表示パネルがあった。赤色が使用中、緑色が空室ということは分かったのだが、上段と下段の表示にどういう違いがあるのかは、じっさいに観察しても法則性が分からず謎のままであった。
 帰国後にGoogleレンズで画像検索したところ、
提示された画像は、航空機のトイレの使用状況を示すサインです。
赤色の表示はトイレが使用中であることを示し、緑色の表示は空いていることを示しています。
AFTは、航空機の後方を意味する言葉です
と説明されていた。
 なるほど、後方のトイレのほうを観察していなければ、法則性が見出せないのも当然。またランダムハウス英語辞典によれば『AFT』は
《海事》《航空》船尾[尾翼](の方)にある;後ろの.
という意味があることも確認できた。
 なおこちらの情報によれば、『AFT』は航空機の後部を意味しているのであって、座席から見た時の前方、後方とは必ずしも一致しない。【実際にそのように設計された飛行機があるかどうかは不明だが】後部トイレよりさらに後ろに座席があった場合でも、トイレ自体は「Lavatory aft occupied」というように表示されるようだ。

2025年05月25日(日)




【連載】チコちゃんに叱られる! 「教会式の結婚式はなぜ増加?」

 5月23日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。

 この日は、
  1. 日本でクリスチャンじゃな人が教会で結婚式を挙げるのが多いのはなぜ?
  2. なぜ甘いものは別腹?
  3. 漫画雑誌の紙はカラフルなのはなぜ?
  4. 【ひだまりの縁側で】
    • キョエちゃん「1回だけ何でも叶うとしたら何をお願いする?」「ドラえもんに出てくるもので何が一番欲しい?」「タイムマシンが1回だけ使えるとしたらどの時代に行きたい?」
    • 長く大事に使っているものはありますか?
という3つの話題(ひだまりを加えると5つの話題)が取り上げられた。本日はこのうちの1.について考察する。

 放送では、「日本でクリスチャンじゃな人が教会で結婚式を挙げるのが多いのは、ローマ教皇がお試しでOKしてくれたから」が正解であると説明された。

 道前美佐緒さん(流通科学大学)&ナレーションによる説明は以下の通り【要約・改変あり】。
  1. 日本にはいろいろなキリスト教の会派があるが、日本でクリスチャンでない人が教会で結婚式を挙げるようになったきっかけの1つは、ローマ教皇がお試しでOKをしてくれたから。この許可は日本限定。
  2. そもそも日本の結婚式は、神前式、教会式、人前式、仏前式というようにいろいろなスタイルがあるが、教会式を選択する人は半数近い。
  3. 現在、日本国内のキリスト教の数は人口の約1%。いっぽう、『ゼクシィ結婚トレンド調査 2024』によれば、2024年時点での挙式スタイルは、
    • 教会式 46%
    • 人前式 32%
    • 神前式 17%
    • その他 5%
    となっていて教会式が半数近くになっている。
  4. 教会式が増える前は神前式が主流だった。
  5. 神前式のスタイルは日本古来のものと思われがちだが、実は明治になってから伊藤博文の指揮のもとで確立した新しいスタイルであった。
    • 明治時代以前の結婚式は地域や階級でバラバラだった。
    • 明治時代になって、大名の結婚式をマネする人が続出し、借金をする人まで出て社会問題になった。
    • そこで、全国統一の簡素で厳粛な結婚式が押し進められた。
    • 伊藤博文は、1900年、後の大正天皇になった皇太子・嘉仁親王の結婚の際に、誰でも応用できる神前式を推奨。これが新聞で大きく取り上げられ世の中に広まった。
  6. 1954年、映画『ローマの休日』のオードリー・ヘップバーンのドレス姿に日本人の誰もが心を奪われた。当時、映画館の入場料が100円程度だったにもかかわらずおよそ2億8000万円の興業収入をあげ大ヒットした。
  7. 当時、教会で結婚式を挙げるのは殆どがキリスト教徒であり、【ドレス姿で教会で結婚式を挙げるのは】憧れのままだった。
  8. その後、ミッション系の学校を出た芸能人が教会で結婚式を挙げるようになった。
    • 1965年、ペギー葉山が母校の青山学院教会で挙式。
    • 1969年、市川染五郎(現・松本白◆、◆は鴎の旧字体)が母校の暁星学園教会で挙式。
  9. その後、本来は信徒以外の結婚式を禁止しているカトリック教会も一部受け入れるようになった。
  10. 1970年代前半には、人口の多い団塊世代の人たちの結婚ブームがおきた。1972年には戦後最多の100万組以上が結婚した。
  11. こうした事態を受け、1974年、日本カトリック司教協議会は、キリスト教徒以外の挙式が行えるよう、ローマ教皇に正式許可を申請。その翌年、ローマ教皇聖パウロ6世から条件付きの許可が出た。
    • 日本国外で適用しない。【日本限定】
    • ミサを行ってはいけない。本来のカトリックの結婚式では参列者がパンやワインを口にする儀式などが行われる。本来の教会式では2時間以上の儀式が行われるが、信徒以外の教会式は20分程度に簡略化された場合に限って許可された。
    • 試験的許可。【現在に至るまでお試し状態が続いている】
  12. プロテスタント教会の場合は全世界的な単一組織ではないので、信徒以外の挙式を認めるかどうかはそれぞれの教会に判断が委ねられている。最初は慎重だったが、宣教の思いももって1970年中盤ごろから受け入れるようになった。
  13. 互助会保証会社他編『冠婚葬祭の歴史』に基づいて番組が作成したグラフによれば、神前式と京岡意識の比率【グラフからの読み取りによる大ざっぱな数値】は、
    • 1969年頃までは教会式はほぼゼロ。神前式は60〜90%
    • 1970年〜1984年頃は、教会式は15%、神前式は80%
    • 1985年以降、教会式は右肩上がりに増加し、1990年代に神前式を抜き去り、2004年には60%を超えた。いっぽう神前指揮は1984年頃の80%から右肩下がりで減少し2004年には20数%となった。
    • ローマ教皇による「お試し期間」の許可は今も続いている。ローマ教皇に正式な許可を求めてNGになった場合は教会で結婚式ができなくなってしまうので、正式許可は求めず「お試し」延長を続けたほうが賢明と考えられている。


 ここからは私の感想・考察を述べる。
 まず、私自身の結婚式(1980年代前半)は神前式、子どもたちの結婚式(2010年代)はいずれも教会式であり、世間一般の傾向を反映していると言える。よく言われるように、日本人の多くは初詣に出かけたり、七五三、厄払いなどをしたり、地域のお祭りに参加する時には神道、クリスマスパーティはキリスト教、葬式や墓参りは大概が仏教というように特定の宗派に限定せずに宗教と関わっている。ということを考えれば、結婚式の時だけ教会式を選んだとしてもそれほど奇異ではあるまい。但し、教会式を選んだとしても、その後の結婚生活がキリスト式になるわけではない。なので、教会での挙式を認めることが宣教に繋がるかどうかは甚だ疑わしい。

 次に、放送で言及された『ローマの休日』の影響であるが、「映画館の入場料が100円程度だったにもかかわらずおよそ2億8000万円の興業収入をあげ大ヒットした。」という説明から単純計算すると、映画館への入場者数は2億8000万÷100で280万人に過ぎず、それほど多くはないようにも思われる。もっともウィキペディアには、
4月27日公開の東京の日比谷映画劇場では当初3週間の上映期間のところお客が減らずに延々と延ばされ、最終的に5週間と3日となり、開館以来の新記録を打ち立てた。大阪でも開館以来のヒットであった。最終的には1954年公開の洋画での配給収入第1位になっている。
となっており、かなりの大ヒットであったことは間違いない。

 もっとも、そもそもオードリー・ヘップバーンはウェディングドレスを着ていたわけではないし、また上述のように、教会式の比率が増加したのは1985年以降であることを考えると、それよりも30年前に公開された『ローマの休日』の映画が教会式の結婚に影響を与えたという根拠は乏しいように思う。

 教会式を選ぶか、神前式を選ぶかということは、宗教上の信念ではなく、新婦の希望によるところが大きいように思う。とりわけウェディングドレスを着たいという強い要望があれば、どうしても教会式になってしまう。もっとも、神前式のあとで和装から洋装に着替えることもできるので、単にウェディングドレスを着たいという理由だけではなく、チャペルの雰囲気、ブーケ、ウェディングケーキといった流れから教会式が選ばれていったのではないかと思われる。

 放送では「ローマ教皇がお試しでOKしてくれたから」が正解であるとされていたが、このことは教会式を実現させるための必要条件ではあるものの、教会式の比率が増加したことの原因にはなっていないように思う。とにかく、1985年以降になぜ教会式の比率が右肩上がりに増加しているのかを説明する必要があるが、思い当たる原因が浮かばない。単にブライダル業界の戦略が効を奏したのか、あるいは『ローマの休日』ではなく1985年以降に大ヒットした何らかの映画が影響を与えたのか、もう少し詳しく調べる必要があるように思う。

 次回に続く。