じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
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最近は近隣のスーパーへの買物にはもっぱら車を使っていたが、この日は妻の都合で車が使えなかったことと、途中に立ち寄る場所があったことから、数か月ぶりに自転車を利用した。 この自転車は2012年3月に購入したもので、タイヤにペアムゲルが注入されているため「絶対にパンクしない自転車」として販売されていた。普通の自転車は古くなるとチューブや虫ゴムが劣化し、タイヤを交換する費用が加算で買い替えたほうがお得ということになるが、この自転車はさすがに「パンクしない」というだけあってタイヤだけはしっかりしている。また外出時に突然パンクすることがないので安心して乗れる。 ところで現在、自転車に乗るときにはヘルメット着用が義務づけられているようだが【罰則なし】、今回の買物の際にすれ違った人たちは誰一人としてヘルメットを着用していなかった。写真下は法界院駅踏切周辺の風景だが、この写真に写っている自転車利用の若者たちも全員が無着用だった。着用者は自転車通学をしている中高生と、大学構内を自転車で巡回している守衛さんに限られているように見える【私も着用していない】。 |
【小さな話題】ケンボー先生と山田先生~辞書に人生を捧げた二人の男~(9)『新明解』の誕生/『事故』とは何か 昨日の日記で取り上げたように、1971年2月に『暮らしの手帖』が国語辞書批判を行った当時、10点ほどの国語辞典の語釈は似たり寄ったりで、しかも共通して誤りを犯していることさえあった。このことに誰よりも憂いていたのが山田忠雄だった。 山田はのちに書いた『新明解』初版の序文で次のように書いている【句読点改変あり】 ●辞書界の低迷は編者の前近代的な体質と方法論の無自覚に在るのではないか。先行書数冊を机上に広げ適宜に取捨選択して一書を成すは、いわゆるパッチワークの最たるもの、所詮芋辞書の域を出ない。 なお上記の中にある「芋辞書」は、『新明解』初版の「芋」に語釈があり、 ●大学院の学生などに下請けさせ、先行書の切り貼りででっち上げた、ちゃちな辞書 と説明されていた。なお私が調べたところ、「芋辞書」という言葉は『新明解』第七版では姿を消している。 しかし特色ある辞書を作りたいという山田の思いはなかなか実現しなかった。『明国』の改訂は見坊に委ねられており山田は実質、助手扱いのままだった。『新明解』初版の「じつに」という項目には、次のような用例があるがこれは山田自身の体験そのものであった。 ●助手の職にあることじつに十七年[=驚くべきことには十七年の長きにわたった。がまんさせるほうもさせる方だが、がまんする方もする方だ、という感慨が含まれている] なお私が調べたところ、『新明解』第七版にはこの用例はない。但し、 ●「辞書の完成に至るまで、実に半世紀に近い年月を要した」 という用例が挙げられていた。 1972年の1月9日、ついに『新明解』完成の打ち上げが行われた。その序文には以下のような文があった【句読点の改変あり】 ●見坊に事故有り。山田が主幹を代行した。...(中略)言わば内閣の更迭に伴う諸政の一新であるが、真にこれを変革せしめたものは時運であると言わねばならぬ。 見坊はこの「見坊に事故有り」に憤慨した。当時『新明解』発行に合わせて発行された小冊子に掲載された山田、見坊へのQ&Aの記事において、両者の肩書きは、
この経緯について小林保民さん(当時の三省堂辞書出版部長代理)は次のように語っている【改変あり】。 ●とにかく私どもとしては改訂を何でもいいから急いでほしいというのが本心ですからね。見坊先生は用例採集もある。『三国』と『明国』」両方でちっとも(改訂が)進まないでこちらもイライラしてたし,,,山田先生が「自分がやればもっと早くやる」とおっしゃっていたのでこれに乗っちゃおうと思って... 音声インタビューで山田は以下のように語っている。 ●「見坊から私に『明国』をやってくれ自分は『三国』をやるから」、つまり仕事をそういう形で分けようと言い出した。 もっとも金田一春彦は音声インタビューの中で次のように語っている【改変あり】。 ●【見坊は】「山田君は約束を破った」と言っていました。両方いっぺんにできないんで、『三国』は見坊君がやり、『明国』のほうはその期間だけ山田君が編集長になる、そういう約束だったんです。ところがその期間が過ぎても山田君が約束を破って見坊君に(編集権を)返さなかったんです。 山田が担当した新しい辞書は編修会議も行われず山田一人が決めていた。こうして1972年に新たな辞書『新明解』が誕生した。なお私が見たところ、画面に表示された『新明解』の表紙には5名の名前が横書きで次のように記されていた。
しかし、実際には上から順の金田一京助、金田一春彦、見坊豪紀は実際には全く関わっていなかったことが今回の放送からも明らかであった【柴田武は、1952年頃から明解国語辞典の編纂に参加し、三省堂国語辞書と新明解国語辞書の両方に関わってきた。」とされている】 『新明解』の序文にあった「事故」という言葉だが、『三国』初版の語釈では「事件。故障。」となっていた。いっぽう『新明解』初版の語釈は、
●「(山田さんは)事故はおういう意味ではない【①の意味ではない】 他の意味があるよ」と。確かに明治時代の用法にあるんでね。「とてもできない」「差し支えがあるからそれで自分がやったんだ」という意味で。そこが今日までのいろんな歴史を曲げてしまったわけで... ここまでのところでいったん私の感想・考察を述べる。 『新明解』が誕生した1972年と言えば私が大学の2回生の時であった。教室内でも『新明解』のユニークな語釈は話題になったと記憶しているが、当時は貧乏生活をしていたので、専門書と古本以外を買う余裕はなかった。確か第三版(1981年)は購入したような記憶があるが、書棚には残っていなかった。この日記に何度か書いているように今はずっとATOKに組み込まれた第七版を利用している。今回取り上げられていた『事故』の語釈・用例は、第七版では以下のようになっている。 (一)不注意などが原因で起こる人災。ということで初版の②の語釈は第七版でもちゃんと残っていた。 なお『三国』第七版の『事故』の語釈・用例は以下の通り。 ①ものごとが無事に進行することをさまたげる、突然(トツゼン)のできごと。また、『日本国語大辞典精選版』の語釈・用例は以下の通り。 ① 事柄の起こった理由。事のゆえ。わけがら。子細。 YahooAI検索で中国語の『事故』について調べたところは以下の通りとなった。 中国語で「事故」は「事故(shìgù)」と表記され、発音は「シーグー」です。 さらにChatGPTに日本語と中国語の『事故』の意味に違いがあるかどうか尋ねたところ、以下のような回答をいただいた。 はい、「事故」という言葉は**日本語と中国語で意味や使われ方が少し異なります**。 両方の言語に共通する部分もありますが、ニュアンスや使える範囲に違いがあります。 ◆### 🇯🇵 日本語の「事故」 **基本的な意味:** * 主に「交通事故」「労働事故」「火災事故」など、**望ましくない出来事・トラブル**を指します。 * 「人為的・偶発的な不幸な出来事」というイメージです。 **例:** * 車の事故にあった。 * その事故で3人がけがをした。 →「事故」はほぼ必ず「悪い出来事」です。 ◆### 🇨🇳 中国語の「事故(shìgù)」 **基本的な意味:** * 中国語でも「交通事故(交通事故)」など、同じく「トラブル」「不幸な出来事」を指します。 ただし、中国語ではもう少し**広い意味**で使われます。 **使われ方の違い:** | 用法 | 意味 | 日本語訳例 | | ---- | ---------- | --------- | | 交通事故 | 交通上のトラブル | 同じ(交通事故) | | 工程事故 | 工事のミスやトラブル | 工事事故/施工ミス | | 医疗事故 | 医療ミス | 医療過誤 | | 机械事故 | 機械のトラブル | 機械故障/不具合 | | 意外事故 | 不慮の事故 | 同じ | → 日本語よりも「故障」や「不具合」などの**技術的トラブル全般**にも「事故」が使われやすいです。 ### 🧩 微妙な違いのまとめ | 比較項目 | 日本語 | 中国語 | | --------- | ----------------- | ------------------- | | 感情的ニュアンス | 不幸・悲惨・人命に関わることが多い | 技術的・管理的なトラブルも含む | | 使用範囲 | 交通・火災・労働など | 交通・機械・工程・医療など広範囲 | | 「ミス」「不具合」 | 通常は「ミス」「故障」と区別 | 「事故」としてまとめて言える場合が多い | ### 💬 例文比較 | 日本語 | 中国語 | 備考 | | --------------------- | ----------- | ---------------------- | | エレベーターが止まったのは機械の故障です。 | 电梯停了是机械事故。 | 中国語では「事故」で自然、日本語では「故障」 | | 医者のミスで患者が亡くなった。 | 医疗事故导致病人死亡。 | 中国語では「医疗事故」が一般的表現 | | 工事中に事故があった。 | 施工中发生了事故。 | ほぼ同じ意味で使える | ### 🟦まとめ * **共通点:** 「予期せぬ悪い出来事」という基本意味は同じ。 * **相違点:** * 日本語では「人身被害」など重大なことに限定されやすい。 * 中国語では「技術的・管理的トラブル」まで含めて広く使う。 次回に続く。 |