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じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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オーストラリア南西部・フラワーハンティング(2) 雲の上に頭を出す富士山

 今回のツアーは、往路は羽田空港発、帰路は成田または関空着となっており、私は、岡山空港から羽田に向かった。
 写真は雲の上に頭を出す富士山。
 当日の集合時刻は19時55分、出発は22時55分となっていたが、出発日当日の移動では不測の事態も想定されるため大事をとって12時25分岡山発、13時40分羽田着の便に搭乗した。結果的に何も起こらなかったため、集合時刻まで6時間、離陸まで羽田空港内で9時間も待たされることになったが、展望デッキや空港施設内で無料Wi-Fiが使えたため、退屈せずに過ごすことができた。

2025年10月30日(木)




【連載】チコちゃんに叱られる! 虫の鳴き声が心地よく聞こえる理由/なぜ「秋の虫は調和、セミたちは競争」

 10月24日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。この回は以下の4つの話題が取り上げられた。
  1. 虫の鳴き声が心地よく聞こえるのはなぜ?
  2. 【正解が出たことによる罰ゲーム】ETCは何の略?
  3. クリームシチューはなんでできた?
  4. なぜ庭をつくる?
 今回は、このうちの1.について考察する。

 放送では、虫の鳴き声が心地よく聞こえるのは「オーケストラになっているから」が正解であると説明された。さまざまな音と人間の関係について研究している関研一さん(千葉工業大学)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
  1. スズムシやコオロギなどの虫の鳴き声は、縄張りの主張・求愛など仲間の虫とのコミュニケーションをとるためのものだが、人間にも影響を与えることがわかっている。
  2. ある実験によると、虫の鳴き声に対しては「美しい」「清涼」「高温」といった要素を感じることが多い。リラックスや落ち着きを促すアルファ波が生じる。
  3. 関さんは2023年、国の研究機関とともに虫の鳴き声が人にもたらす効果について研究。千葉県の草原で採取・選定した虫の鳴き声をさまざまなパターンで聞かせたところ、1種類よりも複数種類を同時に聞くほうが、「穏やかさ」、「深み」、「音楽性」、「華やかさ」の項目でより高く評定され、より好ましく感じることがわかった。 【関連文献複数あり:Tokue, et al. (2022).Effects of hearing diverse orthoptera sounds on human psychology. Urban Forestry & Urban Greening, 73, 127512.】
  4. 例えば楽器の演奏でも単独よりも複数の楽器の音が重なったほうがハーモニーや奥行きが生まれる。虫たちの鳴き声もお互いに邪魔をせずきれいに調和していることがわかった。 心地よさを生む理由としては、
    1. 鳴き声の周波数が和音になる。
      エンマコオロギ、カンタン、キンヒバリ、スズムシの4種の虫の鳴き声はそれぞれ、3560Hz、2940Hz、6730Hz、4520Hzをピークとした異なる周波数を持っている。
      • そもそも音には、近い周波数の音が同時に鳴ると濁ってしまうという特徴がある。上掲の4種の音はピークの周波数が離れており、それだけできれいに聞こえる条件を満たしている。
      • 和音が心地よく聞こえ、不協和音が不安定に聞こえる理由は1/3オクターブ分析で説明できる。そもそも1オクターブとは、周波数が2倍になる区間の音であり、261Hzの「ド」から1オクターブ高い「ド」は522Hzになる。
      • 1オクターブを1/3に分割した時、「ド、ミ、ソ」の音はその3つの領域に分かれて入る。いっぽう、不協和音の「レ、ミ、ファ」の音はすべて1つの領域の中に入ってしまう。
      • 1/3オクターブ分析によれば、1オクターブを3つに分割した領域に1つずつ音が入っていれば心地よく聞こえ、すべてが同じ領域に入っていれば不安定な音に聞こえる。
      • カンタン、エンマコオロギ、スズムシ、キンヒバリの鳴き声は、1オクターブを1/3に分割した領域にほぼ1つずつ入っているため心地よい和音となる。
    2. 虫ごとに担当楽器が違う
      • 虫たちの鳴き声は、ピークとなる周波数が異なるだけでなく、波形も異なっている。連続的に音が大きくなる虫もいれば、断続的に発せられる鳴き声もある。オーケストラのハーモニーと同様。
      • 虫たちは環境に合わせて鳴き声が干渉しないように進化してきた。鳴き声は求愛をしたり危険を知らせたりというように生きるために必要不可欠なもの。違う種類の虫の鳴き声を邪魔せず仲間にきちんと届くように調整できるようになった。
      • 日本に古くから生息する在来種4種(エンマコオロギ、カンタン、キンヒバリ、スズムシ)の鳴き声を合わせるときれいな音に聞こえるが、これらに外来種のアオマツムシの鳴き声を加えると濁っているような音に感じる。在来種は長い年月をかけて他種との調整してきたが、外来種は別の土地で育ったため年月が浅く調整できていないためと考えられている。


 ここからは私の感想・考察を述べる。

 まず、虫の鳴き声と言えば、セミの鳴き声が思い浮かぶ。秋の虫たちがお互いに邪魔をしないように調整している【←邪魔されないような音を出す虫が繁殖に有利となり結果的に生き残ったと考えるべきだろう】のに対して、セミたちは同種内でも異種間でもひたすら大きな鳴き声を出して張り合っているように聞こえる。じっさい、セミの合唱が心地よく聞こえるという人は殆どいないだろう。このことについてChatGPTに以下のように尋ねてみた。

【質問】秋の虫は異種間で鳴き声が調整され全体としてオーケストラのような心地よい音に聞こえますが、これに対してセミたちはひたすら大きな音を競い合うように鳴きます。なぜセミたちの鳴き方は秋の虫のように調和しなかったのでしょうか?

 いただいた回答は以下の通り。


とても良い観察ですね。 確かに、秋の虫(コオロギ、スズムシ、マツムシなど)の鳴き声は全体として調和的に聞こえるのに対し、セミの合唱はしばしば「騒音」のように感じられるほど競い合い的です。この違いには、**生態的・進化的な背景**があります。主な理由をいくつか挙げます。

### ① 生息環境の違い
セミは**真夏の昼間**に活動します。 昼は風の音、鳥の声、人間の活動音など、**環境ノイズが多い**時間帯です。そのため、
* 他の雄に「遠慮」していたら雌に気づかれない
* 少しでも大きな声で鳴いたほうが繁殖に有利という「音量競争」が進化的に有利になりました。
→ 結果として、「より大きく・より長く」鳴く個体が生き残り、今のような大合唱が生まれたと考えられます。
一方、秋の虫たちは**夜行性**。
夜は音の通りが良く、背景ノイズも少ないため、
* 小さくても特徴的な音で十分雌に届く
* 周囲との**リズムのずれ**でお互いの音が聞き取りやすくなる(干渉しない)ように進化したのです。
→ 結果的に「音が調和して聞こえる」ようになりました。

### ② 鳴き声の目的と性質の違い
セミの鳴き声は**強烈な求愛信号+なわばり主張**の意味が強く、「俺の場所に近づくな」「ここにメス来い!」という**自己主張の音**です。
したがって、他個体との同調はむしろ不利になります。

対して秋の虫の鳴き声は、**求愛**に加えて「種の識別」の役割が重視されます。

* 同種のメスだけが反応するような周波数・リズム
* 他種とかぶらない音域で鳴くことで混線を防ぐ
→ 結果的に「音域やリズムが分かれ」、私たちの耳にはオーケストラのように感じられるのです。

### ③ 社会性・群れ行動の違い
セミは多くの種で、同じ木に多数の雄が集まり「鳴き合い(chorus)」をします。
これは「同期」ではなく「競争的コーラス」で、より多く鳴いたほうが雌に発見されやすい。
一方、秋の虫は比較的**個体間距離をとって**鳴くため、互いに干渉しにくく、自然と調和が生まれます。

### ④ 人間の聴覚の側の要因
人の耳は、高音域で複雑に重なり合う音を「ハーモニー」として感じやすく、低音域で強い連続音(セミのような鳴き声)を「騒音」として感じやすい傾向があります。
つまり、**セミの鳴き方が不調和なのではなく、人間の聴覚特性がそう感じる**面もあります。

### まとめ

| 要素 | セミ | 秋の虫 |
| ---- | ---------------- | ----------- |
| 活動時間 | 昼(ノイズ多) | 夜(静か) |
| 鳴く目的 | 大声での自己主張・なわばり・求愛 | 種の識別・求愛 |
| 鳴き方 | 競争的・重なり合う | 分担的・リズム的に調整 |
| 結果 | 騒がしく聞こえる | 調和的に聞こえる |

要するに、
🌞 **セミは「昼の喧騒」に負けないよう競争的に鳴く**
🌙 **秋の虫は「夜の静寂」に調和して鳴く**
――この環境と目的の違いが、両者の「音の性格」を決めているのです。




 放送ではこのほか、和音と不協和音の違いが説明された。これらに関連して、なぜ長調は明るく楽しそうに、なぜ短調は悲しそうに聞こえるのか、といったことには子どもの頃から疑問をいだいていた。これを機会に調べておこうと思う。

 次回に続く。