じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【連載】チコちゃんに叱られる! 虫の鳴き声が心地よく聞こえる理由/なぜ「秋の虫は調和、セミたちは競争」 10月24日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。この回は以下の4つの話題が取り上げられた。
放送では、虫の鳴き声が心地よく聞こえるのは「オーケストラになっているから」が正解であると説明された。さまざまな音と人間の関係について研究している関研一さん(千葉工業大学)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
ここからは私の感想・考察を述べる。 まず、虫の鳴き声と言えば、セミの鳴き声が思い浮かぶ。秋の虫たちがお互いに邪魔をしないように調整している【←邪魔されないような音を出す虫が繁殖に有利となり結果的に生き残ったと考えるべきだろう】のに対して、セミたちは同種内でも異種間でもひたすら大きな鳴き声を出して張り合っているように聞こえる。じっさい、セミの合唱が心地よく聞こえるという人は殆どいないだろう。このことについてChatGPTに以下のように尋ねてみた。 【質問】秋の虫は異種間で鳴き声が調整され全体としてオーケストラのような心地よい音に聞こえますが、これに対してセミたちはひたすら大きな音を競い合うように鳴きます。なぜセミたちの鳴き方は秋の虫のように調和しなかったのでしょうか? いただいた回答は以下の通り。 とても良い観察ですね。 確かに、秋の虫(コオロギ、スズムシ、マツムシなど)の鳴き声は全体として調和的に聞こえるのに対し、セミの合唱はしばしば「騒音」のように感じられるほど競い合い的です。この違いには、**生態的・進化的な背景**があります。主な理由をいくつか挙げます。 ### ① 生息環境の違い セミは**真夏の昼間**に活動します。 昼は風の音、鳥の声、人間の活動音など、**環境ノイズが多い**時間帯です。そのため、 * 他の雄に「遠慮」していたら雌に気づかれない * 少しでも大きな声で鳴いたほうが繁殖に有利という「音量競争」が進化的に有利になりました。 → 結果として、「より大きく・より長く」鳴く個体が生き残り、今のような大合唱が生まれたと考えられます。 一方、秋の虫たちは**夜行性**。 夜は音の通りが良く、背景ノイズも少ないため、 * 小さくても特徴的な音で十分雌に届く * 周囲との**リズムのずれ**でお互いの音が聞き取りやすくなる(干渉しない)ように進化したのです。 → 結果的に「音が調和して聞こえる」ようになりました。 ### ② 鳴き声の目的と性質の違い セミの鳴き声は**強烈な求愛信号+なわばり主張**の意味が強く、「俺の場所に近づくな」「ここにメス来い!」という**自己主張の音**です。 したがって、他個体との同調はむしろ不利になります。 対して秋の虫の鳴き声は、**求愛**に加えて「種の識別」の役割が重視されます。 * 同種のメスだけが反応するような周波数・リズム * 他種とかぶらない音域で鳴くことで混線を防ぐ → 結果的に「音域やリズムが分かれ」、私たちの耳にはオーケストラのように感じられるのです。 ### ③ 社会性・群れ行動の違い セミは多くの種で、同じ木に多数の雄が集まり「鳴き合い(chorus)」をします。 これは「同期」ではなく「競争的コーラス」で、より多く鳴いたほうが雌に発見されやすい。 一方、秋の虫は比較的**個体間距離をとって**鳴くため、互いに干渉しにくく、自然と調和が生まれます。 ### ④ 人間の聴覚の側の要因 人の耳は、高音域で複雑に重なり合う音を「ハーモニー」として感じやすく、低音域で強い連続音(セミのような鳴き声)を「騒音」として感じやすい傾向があります。 つまり、**セミの鳴き方が不調和なのではなく、人間の聴覚特性がそう感じる**面もあります。 ### まとめ | 要素 | セミ | 秋の虫 | | ---- | ---------------- | ----------- | | 活動時間 | 昼(ノイズ多) | 夜(静か) | | 鳴く目的 | 大声での自己主張・なわばり・求愛 | 種の識別・求愛 | | 鳴き方 | 競争的・重なり合う | 分担的・リズム的に調整 | | 結果 | 騒がしく聞こえる | 調和的に聞こえる | 要するに、 🌞 **セミは「昼の喧騒」に負けないよう競争的に鳴く** 🌙 **秋の虫は「夜の静寂」に調和して鳴く** ――この環境と目的の違いが、両者の「音の性格」を決めているのです。 放送ではこのほか、和音と不協和音の違いが説明された。これらに関連して、なぜ長調は明るく楽しそうに、なぜ短調は悲しそうに聞こえるのか、といったことには子どもの頃から疑問をいだいていた。これを機会に調べておこうと思う。 次回に続く。 |