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2月11日(水)

【思ったこと】

980211(水)
[心理]「我慢」について思ったこと(その3)
 本日は、2/8の日記の続き。
 そもそも「我慢を覚えさせる」と主張するためには
  • 「我慢」という一般性の高い性質もしくは能力のようなものが存在する。
  • その能力を鍛えるための一連の訓練法というものが存在する。
という前提が必要である。これが実証されるならば、「寒中水泳で我慢強さを養えば、失恋してもすぐに立ち直れる」とか、「スポーツで鍛えれば、嫌いな科目も我慢強く勉強するようになる」ということもありうる。しかし、これに対しては、「ある分野で我慢強くなったからと言って、別の分野でも我慢強くなるとは限らない。 」という視点もありうる。今日はこれに関連して、
ある種の我慢強さは、一定の一般性、共通性をもつように見えるが、その場合ですら、何らかの錯覚が生じている可能性がある。
ということを、いくつかの具体例について考えてみたい。
  1. いっぱんに我々は、嫌悪的な事象をポジティブな事象と関連づけることによって(=ルール支配行動を形成することによって)、そこから派生する怒りや悲しみを軽減することができる。例えば、逆境を「神によって与えられた試練である」と受け止めたり、事実は事実以上の何ものでもないからそこで派生する怒りや悲しみは無意味だとして嫌悪事象を中性化する対処法がある。特定の場面でこういう対処法を身につけた人は、まったく別の場面にも同じ対処法を適用できるので、表面的には「我慢強く」なったと見られるようになる。
  2. 同じ環境にあっても、他人のと比較することによって、直面している事象がより嫌悪的になったり(「怒りの鉄拳「我慢の相対性理論つまり西部劇」という関連記事あり)、逆に、怒りや悲しみを軽減することができる(「○○さんのことを思えば、私なんか大したことない」というような発想)。そのときどきで、他者との相対比較をしたり回避したりする対処法を身につければ、表面的には「我慢強く」なったと見られるようになる。
  3. 上記と似ているが、自分自身の過去の出来事と対比させることで、直面している事象に怒りや悲しみを軽減させることもできる。「あの時のことを思えば」というような中性化である。逆に、過去にあまりにも恵まれた体験をすると現在の事象がつまらなく見えてきたりする。そのときどきで、過去の体験との相対比較をしたり回避したりする対処法を身につければ、表面的には「我慢強く」なったと見られるようになる。
  4. 無条件反射が生じるような自体にあって、怒りや悲しみを誘発する刺激を繰り返し提示すれば、生じる反応の強さは軽減していく(→「馴化(habituation)」)。くりかえし嫌悪事象を経験すれば、新たに似たような嫌悪事象を体験しても情緒的反応が誘発されにくくなり、見かけ上「我慢強く」なったと見られるようになる。
  5. 目標物の入手やある事象の実現に失敗する経験を重ねると、その代替物や代替事象に速やかに路線を変更できるような柔軟な対処法を身につけることができるようになるかもしれない。その場合も、見かけ上「我慢強く」なったと見られるようになる。
  6. 動物の学習実験によれば、ある行動に毎回餌を与える条件(連続強化)よりも時々餌を与える条件(部分強化)のほうが、餌を与えない措置(消去操作)をほどこした後でも行動が持続しやすい(→部分強化効果)。この現象を説明するのに「我慢強さ」を仮定する必要は全くない。
以上、思いつくままに事例をあげてみた。大ざっぱに言えば、ポジティブ思考、「あの人のことを思えば」、「あの時のことを思えば」、「馴れ」、あるいは気分転換の技術などが、見かけ上の「我慢強さ」を形成している可能性があるということである。
 つまり、「我慢強さ」というのは記述概念・分類概念であって、説明概念ではない。上記の事例を説明するために、必ずしも「我慢強さ」という概念を想定する必要はない。それぞれに見合った具体的な対処法を解明していくことこそが、本当の意味での「我慢を覚えさせる」ことにつながるのではないかと思う。
 (この話題、さらに明日以降に続きます)。
【ちょっと思ったこと(1)】
 モーグルで思い出したが、岡山近辺でこぶだらけの急斜面のあるスキー場といえば、兵庫県の「ばんしゅう戸倉」スキー場の振子沢コースだ。姫路西ICから国道29号線を北上したところにある。国道沿いなので、降雪時以外はチェーンなしでゲレンデ真下まで行かれるのが便利。最大斜度38度のコブ斜面を転ばずに滑り降りるのはなかなか難しい。なお、ゲレンデ上部には初心者向けコースがあるほか、このコブ斜面を回避する林間コースもとりつけられている。
【ちょっと思ったこと(2)】
 2/12朝日新聞家庭欄によると、NHK「ラジオ英会話」教材の連続ドラマが大人気。例年は月ごとに落ち込むテキストの販売部数が、今年は10月号が9月号を上回った。最終的に当初の6.5割〜7割に落ち込むところ、今年は7割以上を保ちそうだという。
 じつは私もラジオの「英会話」のファンで、毎日聴くようになって今年が3年目。確かに、今年のストーリーは例年にないシリアスな父子間や夫婦間の衝突場面があり、家族の団結を優先するか、個々人の自由な職業選択を重視するかという葛藤が描かれていて興味深い。
 あのストーリー、結末はどうなるのだろうか。再び家族が寄り集まり、今後は個人個人の希望を優先しながら細々とレストランを再建していこうということに決まって、中ぐらいのハッピーエンドに終わるものと、私は勝手に予想しているのだが、昨年度、一昨年度とも、最後の2週ほどで予想外に展開するところが、この英会話連ドラの魅力でもある。なお、私はテキストを買っても当日分より後のページは読まないことにしている。私個人が結末を知るのは3月中旬になるであろう。
 なお、同じ朝日新聞記事によれば、講師の大杉正明先生は4月から英国の大学の客員教授になるため今回で引退されるという。たいへん残念なことだ。
【新しく知ったこと】
【リンク情報】
【生活記録】
  • 妻の気紛れにより、家族全員で林原美術館へ。岡山市内の美術館に行くのはこれが初めて。「樹」というテーマの作品を見に行ったが、どうも私は美術鑑賞は苦手だ。植物園かRSKバラ園で本物の梅の花でも見たほうがよかった。
【家族の出来事】
【スクラップブック(翌日朝まで)】
※“..”は原文そのまま。他は長谷川による要約メモ。【 】は長谷川によるコメント。誤記もありうるので、言及される場合は必ず元記事を確認してください。
  • 中世史研究の林家辰三郎氏が11日午後12時20分に死去。83歳。
  • 冬期五輪の女子フリースタイルモーグルで里谷多英(さとや・たえ)さんが金メダル。期待のジャンプは船木が銀メダル。