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昨日の日記

2月19日(木)

【思ったこと】

980219(木)
[一般]言葉と文化、どっちが先か(その2)
 オフミ関連記事のためにちょっと中断したが、2/16の日記の続きを書きたいと思う。
 初めにお断りしておくが、この問題に限らず、私が日記に書くことは、研究論文あるいは、専門的立場からの公式見解ではない。思いつき程度のことを書くこともあるし、他の方の日記を拝見して意見を変える場合もある。多くは、未成熟のアイデアであり、最終的結論を出す前の資料整理のプロセスを示したものであると受け止めてほしい。
 さて、前回述べた、名詞、形容詞、動詞の発達過程あるいは主語の省略についての考えは、あくまで思考実験によるものであって、現実世界の言語を比較したものではない。実際のところ、個々の言語の形成過程は、その社会内部での生産様式や気候条件などのほかに、周辺の別の社会からの影響・圧力を受け多様に発達していくものと思われる。それは、自然環境の中で動物が多様な進化を遂げてきたことと同様であろう。例えば、行動について多様な描写が必要とされる社会であっても、ある言語では動詞の変化でそれに対応し、別の言語では助動詞で、さらに別の言語では副詞によって対応していくかもしれない。動作主の区別についても、シリコンバレー留学中「神田日記」さんが2/16の日記でふれておられたように、かなりの程度まで対応できる言語もあり、ご指摘のように一概に「むら社会=主語の省略」と断定するわけにはいかないだろう。

 まあいろんな不確かさはあると思うが、きょうのところは、日本語について、私が昔から疑問に思っていることなどを列挙しておくにとどめる。
  • 私は、中学のころから日本語の文法がよく理解できなかった。特に分からなかったのは助詞である。例えば「鳥鳴く」のも「鳥鳴く」のも、動作主と動詞を記述した文であるのに、「が」は格助詞で「は」は副助詞などと言われる。このほか「象は鼻が長い」についての諸々の議論。大学に入って第二外国語を習った時には、日本語の名詞はなぜ格変化せず助詞という概念を導入したのだろう、といった疑問が次々と浮かんできた。大野晋先生の本を読んで、「は」の役割についてはだいぶ分かったつもりになったが、そんならそれでもっとすっきりした文法に変えればよいと思う。
  • 日本語は、主語-目的語-動詞の順序にならぶ「SOV」型の言語であるが、このことは英語のような「SVO」型の言語と、認識過程やコミュニケーション過程で何らかの違いをもたらすのだろうか。余談だが、数年前だったか、言語学の教授の退官記念講演の時に、「世界の人口の比率で言えば『SVO』型の言語を使っている人の方が遙かに多いけれど、独立した言語の数の比率で言えば『SOV』のほうが過半数をしめている」というような話を聞いたことがある。
  • 英語を日本語に翻訳するときには、例えば「He is a good speaker of English.」を「あの人は英語がうまい」(別宮貞徳『翻訳の初歩』ジャパンタイムズ)とするように、「動詞的・述語的に訳せ」とよく言われる。翻訳術の入門書などには一応その理由が述べられているけれど、実証的な研究はどこまで進んでいるのだろうか。
  • 英語では、否定的表現に賛同する時には「No」と言うが、日本語では、相手に賛同するときは常に「はい」と答える。どうしてこういう違いが生まれたのだろう。
  • 英語では、住所や日付を、「○○町○○市○○州」というように小さな単位から大きな単位の順で示す。日本語はこの逆である。こういう違いはどうして生まれたのだろう。
  • 西欧の言語でよく見られる男性名詞、女性名詞というのは日本語では古来から存在していなかった。この違いはどこから来るのだろう。
まあ、疑問をあげればキリがないが、このうちどれが社会の特性によって形成されたものなのか、どれが偶発的に生まれた違いにすぎないのか、不定期連載で、素人の考えを述べてみたいと思っている。
【ちょっと思ったこと】
【新しく学んだこと】
【リンク情報】
【生活記録】
  • 大学院入学時の唯一の同輩のH氏が講演のため岡山へ。まずは、私の研究室のもの凄さにオッタマゲタ様子。昼休みに、会場のコンベックス岡山まで車で送る。中庄と会場の間がいつの間にか整備されていた。
【家族の出来事】
【スクラップブック(翌日朝まで)】
※“..”は原文そのまま。他は長谷川による要約メモ。【 】は長谷川によるコメント。誤記もありうるので、言及される場合は必ず元記事を確認してください。
  • 株取引絡みの疑惑で国会に逮捕許諾請求されていた新井将敬代議士(50)が、国会での逮捕許諾議決前の19日正午頃に自殺。
  • 1973年8月に東京で起きた金大中氏拉致事件がKCIAの組織的な犯行であったことを裏付ける極秘文書を東亜日報が入手し、19日付け紙面で詳細に報道。[2/20朝日]