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昨日の日記

4月8日(水)

【思ったこと】980408(水)
[心理]心理学の実験で分かること分からないこと(1)

 某日記作家兼掲示板書込家のリンクによれば、この日記は「心理学」のことを書く日記ということになっているらしい。まあ、変なラベルをつけられるよりは「心理学」と書いてもらったほうが光栄ではあるのだが、3/24以来ちっとも心理学の話を書いていないことに気づいた。で、きょうは、授業の開講も近づいていることでもあるし、心理学研究における実験的方法の意義と限界について考えてみたいと思う。
 心理学が思弁を排して哲学の世界から独立した近代科学としての道を進んで以来、実験的方法は心理学研究の中で、最も重要な研究方法の1つとして位置づけられてきた。しかしながら、心理学の実験は、実験操作の段階から結論を導く段階に至るまで、さまざまな点で物理、化学、生物などの実験と本質的に異なっている。この違いを自覚せずに、高校までの理科の実験の延長として心理学の実験をすすめてしまうととんでもない落とし穴に陥る恐れがある。このシリーズでは、実験的方法とは何かについて概略を捉えたうえで、実例をあげながら、実験的方法の意義と限界をさぐっていくこととしたい。

 第一回目は実験的方法の定義について。
 具体的な事例の検討に入る前に、実験的方法とは何か、をはっきりさせておこう。もっとも『新版 心理学事典』(下中, 1981)が「実験心理学」の説明の中で「実験的方法を用いる心理学を意味するが、その内容は必ずしも一定していない。」と指摘するように、心理学における「実験」の意味は一定ではない。
 資料の引用は省略するが、心理学の入門書・概論書においては「実験心理学とは実験的方法を用いる心理学である」と述べる程度で、実験的方法を明確に定義したものが以外と少ないことがわかる。ここでは暫定的に以下の3つの基準を満たす方法を実験的方法と定義して、今後の議論を進めることとしたい。
  1. 研究対象に対して何らかの働きかけを行うこと。
  2. システマティックな働きかけであること。
  3. 働きかけを行った結果に基づいて、既存のルール(仮説、法則等)に何らかの改訂が行われること。但し結果次第では、改訂ではなく確認もしくは固定化の方向に向かうこともありうる。
 このうち(1)は、実験的方法と観察による方法を分ける明確な基準であると言えよう。しかし、(1)の基準だけであると、ヒト以外の動物を含めて、すべてのオペラント行動は実験であるということになりかねない。単に行き当たりばったりにいろいろと試してみるのは実験とは言えないだろう。『現代心理学T』(ジンバルドー, 1983)は、「システマティック」の内容として、無作為化、組織的変化、厳密な統制、追試(反復)可能性をあげている。このうち無作為化については後で改めて述べることにするが、とにかくこれらの要件を満たして初めて実験としての意義が認められることになる。
  実験はあらかじめ何らかの計画の基づいて進められるものであり、結果を得ることによって、当初想定されていた可能性が否定されたり、新たな要因が発見されたり、一般性が高まったりする。(2)および(3)は、そのような必要から設けられた基準である。
<以下、不定期更新で続く>
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