【思ったこと】980408(水) [心理]心理学の実験で分かること分からないこと(1) 心理学が思弁を排して哲学の世界から独立した近代科学としての道を進んで以来、実験的方法は心理学研究の中で、最も重要な研究方法の1つとして位置づけられてきた。しかしながら、心理学の実験は、実験操作の段階から結論を導く段階に至るまで、さまざまな点で物理、化学、生物などの実験と本質的に異なっている。この違いを自覚せずに、高校までの理科の実験の延長として心理学の実験をすすめてしまうととんでもない落とし穴に陥る恐れがある。このシリーズでは、実験的方法とは何かについて概略を捉えたうえで、実例をあげながら、実験的方法の意義と限界をさぐっていくこととしたい。 第一回目は実験的方法の定義について。 具体的な事例の検討に入る前に、実験的方法とは何か、をはっきりさせておこう。もっとも『新版 心理学事典』(下中, 1981)が「実験心理学」の説明の中で「実験的方法を用いる心理学を意味するが、その内容は必ずしも一定していない。」と指摘するように、心理学における「実験」の意味は一定ではない。 資料の引用は省略するが、心理学の入門書・概論書においては「実験心理学とは実験的方法を用いる心理学である」と述べる程度で、実験的方法を明確に定義したものが以外と少ないことがわかる。ここでは暫定的に以下の3つの基準を満たす方法を実験的方法と定義して、今後の議論を進めることとしたい。
実験はあらかじめ何らかの計画の基づいて進められるものであり、結果を得ることによって、当初想定されていた可能性が否定されたり、新たな要因が発見されたり、一般性が高まったりする。(2)および(3)は、そのような必要から設けられた基準である。 <以下、不定期更新で続く> |
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