じぶん更新日記1997年5月6日開設Y.Hasegawa |
![]() |
まだまだ元気、センダンの実。 |
【ちょっと思ったこと】
冬季オリンピックにおける割引原理・割増原理 ソルトレイクシティで冬季オリンピックが行われているが、日本人選手は残念ながら当初の期待されたほどの成果を上げていないようだ。こうした無念さを和らげるためにしばしば使われるのが、原因の帰属を重みづける2つの原理である。『クリティカルシンキング 入門編』(ゼックミスタ・ジョンソン著、宮元・道田・谷口・菊池訳、北大路書房、1996年)では、これら2つの原理は次のように説明されている(87-93頁)。
いっぱんに割引原理・割増原理では、課題に特定した知られざる困難さや、偶発的妨害要因が引き合いに出される。例えばトンネル工事をすすめようとしたら予想外の出水に遭遇したとか、冷戦状態の中で救出作業が難しかったなど。 しかしオリンピック競技の場合は、選手がみな同じ環境条件で同じ課題に取り組むので、それらは促進あるいは抑制要因にはなりにくい。それゆえ、どうしても、選手本人のケガや体調不良などに言及されることが多い。あくまで仮想の例だが
このほか、「日本人としてはこれまで最高の6位」とか「日本人として初めて2大会連続の...」などは割増原理として働く(いずれも仮想の例)。 偉人伝にみられるように、適度の割増原理は感動を増幅し、観客自身の人生にもポジティブな教訓を与えてくれる。しかし反面、地道な努力のプロセスに目を向けず結果の賛美だけに終わってしまう恐れもあるので注意が必要だ。それと、スポーツは何よりも健康さをアピールすることが大切。過度の練習で骨や筋肉をボロボロにしないとメダルがとれないような種目は、本人の自己管理責任を責める以前の問題として、競技自体に問題があるように思う。 |
【思ったこと】 _20215(金)[心理]今年の卒論・修論研究から(9)そろそろ見直したい「因子分析」型卒論(前編) 社会心理っぽい卒論の1つのスタイルとして
しかし、この因子分析、主因子法やらバリマックス回転やらいろいろ言われるけれども、ホンマにその原理を分かって使っているのだろうか。いや私自身どこまで理解できているか心もとないけれど...。 このWeb日記は研究室ではなく自宅で書いているため手元に統計の本を置いていないのだが、たまたま書棚に『複雑さに挑む科学〜多変量解析入門〜』(柳井晴夫・岩坪秀一、講談社ブルーバックスB297、1976年)という、私が大学院に入った頃に刊行された古い本が見つかった。事例が古いとはいえ、因子分析のツボはよく押さえられているのではないかと思う。それによれば、因子分析の目的は次のように分類される(109〜110頁、一部は長谷川が要約)。
いずれにせよ、真の「潜在因子」なるものが見出されたところで、「潜在因子に影響を及ぼす具体的操作」を確定しなければ、現実を変えることはできない。あやふやな「潜在因子」に引きずられるよりも、具体的な操作が目前の現象のどの部分を変えうるかを検討したほうが近道、かつ安定的な成果が得られるのではないかと思われる。 となれば、少なくとも卒論・修論研究段階では、因子分析は、上記3.に挙げられた ●冗長で不要な情報を切り捨て、重要な情報のみをとり出し、自己の知識として役立てるツール として利用すべきではないだろうか。考察段階においても、潜在的な何かを発見したと主張するよりも、そのようなツールを用いることで複雑な現象がどれだけ簡潔に整理され利用しやすくなったのかということを強調するべきであると思う。なお、後編では、『複雑さに挑む科学〜多変量解析入門〜』に挙げられていた分析事例が、25年たったいま、どう評価されるべきか考えてみたい。 |