じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
先週末より巨大な黒点が太陽に現れ「肉眼黒点」として話題になっている。肉眼黒点と言っても、直接太陽を見たら目がつぶれてしまう。「フィルターを通して太陽を眺めた時、望遠鏡などを使わなくても直接見られる巨大な黒点」という意味である。
29日の昼に、真っ黒なポジフィルム(写真右)を2枚重ねにして両眼で太陽を眺めたところ、黒い点を2個、確認することができた。30日の朝、ひょっとして、日の出の時にも見られるかと期待したが、写真左のように雲が出ており、黒点と薄い雲との区別ができなかった。 こちらの解説にあるように、肉眼黒点の直径は地球の約10倍、面積では約100倍になるという。部分日食と違って見えにくいので、なるべく両眼で観察するとよいと思う。太陽望遠画像をリアルタイム中継している横浜こども科学館のようなサイトに予めアクセスし、黒点の位置を確認しておくと、見定めができる。 但し、こちらの「直接太陽を見ると目を痛めますので、観察するときには必ず慣れた方と一緒に、感光した「白黒」フィルム(カラーフィルムはだめです)で減光したり、日食グラスなどの特殊な減光フィルターを用いてください」という注意書きにもあるように、太陽を眺めるのは非常に危険なので十分な注意が必要だ。カラーフィルムはダメだと書かれてあったが、私の使った真っ黒なポジフィルムなら十分に減光できた。もっとも紫外線までカットできたかどうかは定かではない。白内障などの原因にもなるので、ごく短時間の観察に留めたい。 ちなみに、この肉眼黒点に伴い、磁気嵐などの影響もかなり出ている模様。大きな事故が起こらなければよいが...。 [※10/30追記] 大規模な太陽フレア 北海道でオーロラ観測など、続々とニュースが入っている。なお、上記のカラーポジフィルムは紫外線を透過するため、目の保護上オススメできないそうだ。こちらに詳細情報あり。 |
【思ったこと】 _31029(水)[教育]「どうしたら魅力的な講義が創れるか?」講演会(1)感動した講義 29日の15時半から17時すぎに、岡山大学五十周年記念館で行われた表記の講演を拝聴した。演者は、この方面の御著書でも知られる杉原厚吉先生。工学系の学会の公開行事として行われたものであった。 杉原先生はまず、ご自分が学生時代に感動した講義についてお話をされた。講義そのものは「ボソボソ」「淡々」だったというが、話術ではなく中味から得るところが大きかったという。 専門的なことは内容は理解できなかったが、「ミクシンスキーの演算子法」、「式の操作の過程で矛盾が生じても結果が意味をもつ」、「途中、超関数にはみ出しても最後には関数として使える」という凄さは何となく理解できた。学生時代の自主ゼミではブルバキ数学原論の代数論1巻を輪読。その際、可逆化の概念によって、与えられた世界(閉じたシステム)の中でのトートロジカルな証明ではなく、新しい世界が創れる素晴らしさを知ったというような内容だった(←以上は長谷川の聞き取りのため不確か)。 このWeb日記でも何度か書いているように、私は、中学〜高校の一時期、数学者になることを夢に見ていた。さっぱり理解できないくせに、当時1冊1000円以上(今なら5000円〜1万円相当?)もするブルバキの本を何冊か買い揃え、それを持ち歩くことで数学者気取りになっていたが、能力の限界を感じ、全く別の分野に進学することになった。 講演の後のほうでは、高速なフーリエ変換、標本化定理、ハッシュ、零知識証明、ハノイの塔問題の計算時間の節約、NP完全性などにも触れられたが、確かにどれをとっても、(理解できる能力は無いが)面白さだけは伝わってくる。老後に教養として学ぶには限界があるだろうが、今度生まれ変わってくる時にはぜひ数学で身を立てたいと思った。 じつは私自身の場合、学部時代に感動した名講義を挙げよと言われてもこれといったものが浮かばない。教養部時代に受講した森○先生の授業はオモロかったが、雑談ばっかりだったように記憶している。学部の頃に受講した河合○雄先生の授業もスゴイとは思ったが、実証性の点で大いに疑いを持った。湯川○樹先生や桑原○夫先生の講演を聴いたこともあったが、ボソボソで何をしゃべっているのか聞き取れなかった。 講義ではないが、教養部時代に受けた心理学IIIという体験型授業は、私が心理学に進むきっかけにもなった授業であり、今でも受講場面をいくつか思い浮かべることができる。これを担当されたK先生(当時は教養部助手)は、今は某私立大の要職に就いておられる。 講演でも指摘されたが、名講義というのは、決して話術のうまさではない。やはり中味が問題なのだという。とはいえ、同じ中味でも、伝え方の工夫が無いと十分には理解してもらえない。このあたりに関して拝聴した点は次回に。 |