じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真]  秋晴れの空の下、幼稚園児たちが岡大の農場に芋掘り遠足に来ていた。子どもたちの後ろには、先日の台風でねじ曲げられたビニールハウスの残骸が残っている。


10月25日(月)

【ちょっと思ったこと】

高齢者向けの算数ドリル

 10月26日放送のNHKまちかど情報室で、『中高年に“算数”が人気』という話題を取り上げていた。タイトルでは「中高年」となっていたが、事例として紹介されたのは高齢者が中心。計算に取り組むことで脳の血流量が増加、...というような研究例があるらしいが、どの程度根拠があるのかどうかは分からない。

 番組紹介サイトにあるように、現在、大人のための「計算ドリル」などと銘打たれた問題集が10種類ほど発売されている。番組で紹介されたのは、ごく簡単な足し算、引き算ドリルだった。このほか、電卓型の能力トレーナーも紹介されていた。こちらにはその科学的根拠なるものが紹介されていた。

 これらのドリルや機器が、脳の活性化や痴呆防止にどの程度効果があるのか確かなことは言えない。とはいえ、計算作業をするということには少なくとも3つの意義があるように思う。

 1つは、電卓に奪われてしまった計算作業という知的活動を人間の手に取り戻し能動的・主体的に行うことの意義だ。

 2番目は、計算作業をすることによって小学生の頃の思い出が蘇ってくるかもしれないということ。

 3番目、そして、これが一番重要かと思うのは、毎日一定時間、計算作業にきっちり取り組むことで向上感や累積的な達成感が出てくるということ。漢字ドリルでも英単語暗記でもよいが、とにかく何らかの作業をきっちりとこなすことは高齢者の生活の充実に繋がる。

【思ったこと】
_41025(月)[一般]新幹線脱線をめぐるクリティカルシンキング

 新潟県中越地震による上越新幹線「とき325号」脱線事故のことがテレビや新聞で大きく取り上げられている。営業運転中の脱線事故としては、新幹線開業40年の歴史の中で初めてであったこと、想定される東海地震では遥かに大きな事故につながる可能性が高いことから、注目が集まるのは当然のことだ。

 もっともこの脱線事故の原因については、正式な調査結果を待たないうちから各種テレビ番組に「学者」や「専門家」が登場して勝手な解釈を表明しているが、そのことで無用な不安をかきたてたり、大地震がもたらす鉄道被害の目立つ部分だけを過大に取り上げ、本当の危険性を見逃してしまう恐れがあるのではないかと、気になるところがある。

 ある番組では某専門家が、車両が傾いたままで転覆しなかったのは上越新幹線特有の雪落としの溝があるためだと語っていた。確かに素人には、車両の一部は、溝に落ち込んでかろうじて転覆を免れているようにも見える。しかし、別の番組では別の専門家が、「溝に落ち込まなければあんなに傾くことはない、そもそも電車というのは、脱線したからといって直ちに転覆するものではない、転覆するのは、別の原因(障害物にぶつかる、線路全体が流されて傾く)によって起こるものだ」と解説していた。最初の番組を視た時には、東海道新幹線でも線路横に溝をつくればいいじゃないかと思ったが、後からの番組を視ると、かえって溝がないほうが安全であるようにも思えた。

 高架から転落しなかったのは奇跡であると表明している政治家も居たようだが、専門家の判断を待たずに見た目だけで判断したとしたらずいぶん無責任な話だ。これでは、海外での高速鉄道受注競争にも悪い影響を与えてしまう。




 さて、大地震による鉄道被害をクリティカルシンキングでとらえると、もっといろいろなところに目を向ける必要があることに気づく。

 まず、「危険は他にもいっぱいある」ということだ。過去を含めて、大地震の時には土砂崩れによる線路の流失やトンネルの崩壊がある。今回の場合も在来線はもとより、上越新幹線のトンネル内各所でコンクリートが落下が確認されている(滝谷トンネル、魚沼トンネルなど浦佐―長岡間の4つのトンネル内。このうち、魚沼トンネルでは、大きいもので幅1メートルを超す塊を含むコンクリート片がレールの上に散乱し、またレールを支えるコンクリート板も地面から数十センチ浮き上がっていたという)。また、浦佐駅から約10キロ長岡寄りの高架橋で、8本の橋脚の鉄筋内側コンクリート部分に「せん断」と呼ばれる斜めの亀裂が見つかった。これは最悪の場合、高架橋の崩落につながる危険があるそうだ。

 今回はたまたま、走行中の列車がそのような現場に居合わせなかったため惨事に繋がらなかったが、それは全くの「幸運」にすぎない。今後の防災に活かすためには、実際に起こった脱線事故だけでなく、「もし列車がその場所を通過していたら大惨事につながっていたであろう」と想定されるあらゆる災害を平等に重みづけして議論しなければならない。

 その一方、ポジティブな面にももっと目を向けるべきだ。今回の脱線事故では幸い、怪我人が一人も出なかったという。時速200km走行中に直下型の大地震が起こっても怪我人が出なかったというのは、新幹線が安全な乗り物であることの証明でもある。例えばフランス製のTGVが同じところを走っていたらどうなっていただろうか?

 今回の地震の時に走っていた他の列車が無事故であったことにももっと注意を向けるべきだ。上越新幹線の場合、とき325号以外にも4本の列車が計約1400人の乗客を乗せて走っていたというが、立ち往生しただけで脱線は免れている。安全対策がうまく機能していたということをもっと誇りに思うべきである。




 さて、東海道新幹線乗車中に東海地震が起こったらどうなるだろうか。震源が多少なりとも離れていればUrEDAS(ユレダス、初期微動検知警報システム)で危険は軽減できるように思う。恐ろしいのは脱線後の衝突だ。これを自己防衛するには、先頭車両を避けたほうがよいのだろうか。東海道新幹線を利用する場合、私は禁煙自由席の1号車に乗ることが多いのだが、このさい多少混んでいても2号車に乗るべきか。

 いっぽう、飛行機を利用する限りにおいては脱線や衝突事故に遭う危険は全くない。しかし、飛行機を降りたあと、羽田〜浜松町間のモノレールに乗車中に大地震に遭ったら本当に大丈夫なんだろうかという気がしないでもない。

 こういう素人的な不安をぜひ解消してもらいたいものだ。