じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

6月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る

[今日の写真] 山形県鶴岡市の街角で見たピンク色のハルジョオン(6月5日撮影)。岡大構内でもハルジョオンは多数見られるが、私の知る限りでは白い花ばかり。ピンク色は一株しか確認できていない(←それも、除草剤をかけられてすでに枯れてしまった)。


6月7日(火)

【ちょっと思ったこと】

大根の皮むき

 夕食時に視た「伊東家の食卓」で、大根の皮が簡単にむける方法というのを紹介していた。詳細はこちらにある。爪楊枝1本と指先だけでむけるというのはスゴイと思ったが、こんな簡単な方法がなぜ今まで使われてこなかったのだろうか。最近の品種に限ってむきやすくなったということだろうか。

 このほか、あまり良い点は与えられなかったようだが、寒天で型をとって野菜のキャンドルを作るという裏技が面白いと思った。型どりに使った野菜はあとで問題なく食べられるというのが無駄がなくてよい。それと、キャンドルといっても何も火をつける必要はない。蝋細工のつもりでいろんなレプリカを作ることができそう。

【思ったこと】
_50607(火)[心理]人と植物の関係を考える(5)人と木のつきあいと心理学的アプローチ

 6月4日に開催された人間・植物関係学会鶴岡大会の1日目の行事「人と木のつきあいは時を超えて」の感想の続き。

 今回の3件の講演:
  • 山形大学名誉教授・北村昌美氏:人が森を創る〜森林は文化的創造物〜
  • 東北芸術工科大学教授・東北文化研究センター所長・赤坂憲雄氏:屋敷林のフォークロア〜人との関わりから見えてくるもの〜
  • 山形大学農学部助教授・江頭宏昌氏:焼畑ロードをゆく〜伝統農法のゆくえ〜
は、心理学の研究法を考える上でも大いに参考になった。

 講演を拝聴した限りでは、屋敷林や焼畑についての御研究は、現地に何度も足を運び、地形や植生の綿密な調査と、そこで暮らす人々への聞き取りという方法で進められている、と理解できた。このうち後者の聞き取り調査は、調査的面接法とよく似たスタイルをとっているように思われた。
 焼畑についての研究では、土壌の成分変化や、熱を加えることによる発芽率の変化などの実験研究も合わせて紹介されていた。

 私の周辺では、質的心理学の隆盛を受けて、調査的面接法で卒論研究や修論研究を行う学生が増えており、演習でもいろいろな関連文献がレビューされることがある。しかし、率直なところ、その中で感銘を受けた論文というのはごくわずかにすぎない。

 ライフヒストリーの論文などもいろいろ出されているが、単に「感動を与える」だけなら、多少フィクションや誇張が入っても、テレビのドキュメンタリー番組のほうがはるかに意義深いように思える。何かの仮説を生成するといっても、これはスゴイと言えるような発見が見られない。語られた内容に基づくという点では「実証的」かもしれないが、それは単に、そういう事例が「語り」により確認できたという程度であって、「新たに法則を発見して実証する」と言うべきものではない。

 いっぽう、裏山や屋敷林における人と自然との関わりあい、あるいは、焼畑を通じた森と人との関わりあいについての調査研究には、これはスゴイと唸らせるような発見があった。聞き取り調査は成功をおさめているように思えた。




 聞き取り調査が成功をおさめたと感じられる理由としては、次の点が挙げられると思う。
  • その地域の自然環境についての綿密な調査が行われており、環境と人間行動との関係が明確に把握できる。
  • そこで人々がどういう行動をしているのかが客観的に分析できる。
  • 森林には何十年、何百年といった歴史があり、そのような長期的なスパンで環境との関わりを分析することができる。
 いっぽう、心理学的な面接調査というと、もっぱら「どう思いましたか」というように、文字通り「心理」についての調査が主体となる。それ自体は決して悪いことではないのだが、「どう思いましたか」の原因となる環境との関わりについての調査が不十分であれば、必ずしも証拠を得たことにはならない。解釈も何通りにでもできてしまうのである。

 心理学研究としての面接調査も、行きずりの社会現象に関して心境を調べるというスタイルではなく、むしろ1つの生活の場における環境と人との関わりに目を向けていったほうが発見的価値のある成果が得られやすいのではないかという気がした。

次回に続く。