【思ったこと】 _50705(火)[心理]臨床心理士と医療心理師の国家資格化(続き)
昨日の日記の続き。昨日もリンクしてあったぜんしんきょう(全国保健・医療・福祉心理職能協会)のサイトに
●臨床心理士及び医療心理師法案要綱
がアップされていたので御紹介させていただく。この法案は、7月5日午前10時より憲政記念館にて「医療心理師(仮称)国家資格法を目指す議員の会」と「臨床心理士職の国家資格化を通じ国民の心のケアの充実を目指す議員懇談会」の合同総会が開催され、国家資格に関する議員立法について検討を行った結果了承された要綱であるという。ざっと拝見した限りで気づいたことをいくつか。
- 一 目的
この法律は、臨床心理士及び医療心理師の資格を定めるとともに、その業務が適正に運用されるように規律し、もって国民の心の健康の確保に寄与することを目的とすること。
「士」と「師」の使い分けが気になっていたが、既存の呼称がそのまま用いられる模様。個人的には、看護師や薬剤師に併せ、かつ、理学療法士、作業療法士などを含めて、「士」から「師」に統一したほうがよいようにも思う。別に「士」より「師」のほうが専門性が高いと考えているわけではないけれど。
-
二 定義
1 この法律において「臨床心理士」とは、第二の二1の登録を受け、臨床心理士の名称を用いて、教育、保健医療、福祉その他の分野において、心理的な問題を有する者の心理的な問題の解消又は軽減を図るため、臨床心理学に関する高度の専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいうこと。
@ 心理的な問題を有する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。
A 心理的な問題を有する者に対し、その心理に関する相談に応じ、及び助言、指導その他の援助を行うこと。
B 心理的な問題を有する者の関係者に対し、その相談に応じ、及び助言、指導その他の援助を行うこと。
2 この法律において「医療心理師」とは、第三の二1の登録を受け、医療心理師の名称を用いて、医師が傷病者(治療、疾病の予防のための措置又はリハビリテーションを受ける者であって、精神の状態の維持又は改善が必要なものをいう。以下同じ。)に対し医療を提供する場合において、当該傷病者の精神の状態の維持又は改善に資するため、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいうこと。
@ 傷病者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。
A 傷病者に対し、その心理に関する相談に応じ、及び助言、指導その他の援助を行うこと。
B 傷病者の関係者に対し、その相談に応じ、及び助言、指導その他の援助を行うこと。
臨床心理士と医療心理師をどう区別するのか関心をもっていたが、ここでは「臨床心理士」=「心理的な問題を有する者を対象」、「医療心理師」=「傷病者を対象」というように使い分けされているようだ。傷病者とは、「治療、疾病の予防のための措置又はリハビリテーションを受ける者であって、精神の状態の維持又は改善が必要なものをいう。」
- 第二 臨床心理士
【省略】
3 受験資格
試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ受けることができないこと。
@ 学校教育法に基づく大学(短期大学を除く。)において主務大臣の指定する心理学等に関する科目を修め、かつ、同法に基づく大学院において主務大臣の指定する臨床心理学等に関する科目を修め、当該大学院の修士課程(博士課程のうち、修士課程として取り扱われる課程を含む。)、博士課程(修士課程として取り扱われる課程を除く。)又は専門職学位課程(同法第65条第2項の専門職大学院の課程をいう。)を修了した者
A 主務大臣が@に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認めた者
【省略】
臨床心理士になるためには、4年生大学および大学院修士課程において大臣指定の心理学等に関する科目を修めることが必要となっている。したがって、私のところの大学院は受験資格を得られないが、私のところの学部を卒業したあとで指定大学院に入学して所定の教育を受ければ資格は得られるはずだ。
- 第三 医療心理師
【省略】
3 受験資格
試験は、学校教育法に基づく大学(短期大学を除く。)において主務大臣の指定する心理学等に関する科目を修めて卒業した者でなければ受けることができないこと。
私のところの心理学でも受験資格が得られるよう、「大臣の指定する心理学等に関する科目」を整備する必要がある。といっても、講座内で拡充するには限界がある。総合大学の強味を活かして、すでにスタートしている副専攻制に付け加える形で整備できないものかと思う。
- 第四 補則
一 臨床心理士及び医療心理師の義務
【省略】
3 関係者との連携等
@ 臨床心理士は、その業務を行うに当たっては、教員、医師その他の関係者との連携を保たなければならないこと。
A 臨床心理士は、病院、診療所その他の主務省令で定める医療提供施設において、医師が医療を提供する傷病者に関してその業務を行うに当たっては、医師の指示を受けなければならないこと。 B 医療心理師は、その業務を行うに当たっては、医師その他の医療関係者との緊密な連携を図り、適正な医療の確保に資するよう努めなければならないこと。
C 医療心理師は、その業務を行うに当たっては、医師の指示を受けなければならないこと。
ここでは、「連携」、「緊密な連携」、「医師の指示」が使い分けられている。どちらの資格においても、医療の現場では、医師の指示を受けるように規定されている。
- 第六 施行期日その他
【省略】
二 経過措置
2 医療心理師
@ この法律の施行の際現に病院、診療所その他厚生労働省令で定める施設において第一の二2@からBまでに掲げる行為を業として行っている者その他その者に準ずるものとして厚生労働省令で定める者であって、次のいずれにも該当するに至ったものは、この法律の施行後5年間は、第三の一3にかかわらず、医療心理師試験を受けることができること。
イ 厚生労働大臣が指定した講習会の課程を修了した者
ロ 病院、診療所その他厚生労働省令で定める施設において、第一の二2@からBまで掲げる行為を5年以上業として行った者
A @に規定する者については、厚生労働省令で定めるところにより、試験の一部を免除することができること。
おそらく、この経過措置によって、現に臨床心理士として病院等に勤務している人たちの地位が確保されることになると思う。
以上いろいろ述べてきたが、この法案って、郵政民営化法案みたいに賛否が伯仲するのだろうか。それとも、あまり注目されることなく、すんなりと通ってしまうのだろうか。
昨日も述べたが、この法律が通れば、病院関係で心理職に就くことを希望する者は、臨床心理士の指定大学院で教育を受ける必要はなくなる。そのことによって定員割れを起こす大学院も出てくるかもしれない。臨床心理士になること自体は、国家資格としてこれまで以上に権威付けされるだろう。
なお、この法案によれば、新たな2つの国家資格は更新制とせず、一度取得すれば基本的には生涯有効となる模様である。一部報道によれば、臨床心理士の国家資格化を求める議連からは、資格取得後も継続的にカウンセラーの能力を担保する必要があるとして更新制度の導入を求める意見があったが、医療関連の職種での免許の更新制度の議論につながるのを警戒する厚労系議連が難色を示し法案に盛り込むことは見送られたということである。確かに、医療心理師だけが更新制で、医師や看護師は生涯有効というのは矛盾してしまう。半面、臨床心理士の更新制が無くなれば、学会や認定組織の求心力はいくぶん弱まるのではないかと予想される。
なお、以上はあくまで長谷川の個人的な感想を述べたものであり、私の所属する大学の方針を反映したものでは一切無いことをお断りしておく。
|