じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 木漏れ日を浴びるキンモクセイの花。10月13日の岡山は最高気温が26.8度まで上がり、まだまだ汗ばむほどの陽気であった。まだまだ木々の緑が残っている。


10月13日(木)

【ちょっと思ったこと】

黄色点滅信号に徐行義務?

 10月14日朝のNHKローカルニュース(中国地方)によれば、島根県でパトカーと軽乗用車が出合い頭に衝突、双方にけが人が出たという。パトカーは黄色点滅信号、軽乗用車は赤点滅信号のもとで交差点に進入したらしい。

 おやっ?と思ったのは、ニュースの中で「徐行が義務づけられている黄色点滅信号を...」と言っていたことだ。しかし、黄色点滅信号の意味は「歩行者及び車両等は、他の交通に注意して進行することができること。」であって、徐行義務はないはず。念のため島根県警のサイトを調べてみたところが、やはしそのようなことが、こちらに記されていた。こちらにも同じ説明がある。それらのもととなる道路交通法施行令の第2条を確認したが、やはり同じことが記されていた。いっぽう赤色点滅は「2.車両等は、停止位置において一時停止しなければならないこと。」であるから、上記の事故の状況が伝えられた通りであるとするならば、軽乗用車は一旦停止を行っており過失の程度はきわめて大きいのではないかと思われる。

 しかし、さらに検索してみたところ、早稲田大学創法会の2003年度新島襄記念法律討論会のサイトに、黄色点滅信号側走行車の徐行義務を指摘する(みたいな)記述があった。なおここでXは黄色点滅信号側の道路を走行中に、赤信号点滅側から侵入してきたAの車と衝突して怪我を負わせたという想定になっている。
 まず、Xとしては、
  • 本問において、Xは、交差道路側が赤色点滅信号だったことから、Aが同信号に従って一時停止するものと思い、徐行する必要はないとしています。
  • 確かに自動車運転者には、事故が起きないよう、細心の注意を払って運転する義務がありますが、運転者に常に厳しい義務を課すことは、運転の低速度化につながり、高速度交通機関としての自動車の社会的有用性を失わせることになりかねません。 <
  • そこで、行為者が、他の関与者の適切な行動を信頼するのが相当といえる場合、自己の行動と他の関与者の不適切な行動とが相まって結果が発生したとしても、行為者に責任を問わないとする、信頼の原則という法理があります。
  • 信頼の原則が認められる場合、行為者の行為は社会的に相当であるとして、行為者に課される結果回避義務が免除されます。
という主張が成り立つ。それみろ、Xは徐行しなくてよかったじゃないかと思ったが、その続きを読むと
  • しかし、発生した結果との関連で信頼の原則の適用を考える以上、行為者が結果発生に起因的な規則違反をしたにもかかわらず、その責任を行為者に問わないのでは、刑法の社会秩序維持機能を害することになるため、行為者が結果発生に起因的な規則違反をした場合には、信頼の原則を適用すべきではありません。
  • 本件交差点は、赤色および黄色点滅信号が設置された、優先道路の標識もない、左右の見通しの悪い交差点でした。
  • この点、道路交通法42条は、見通しの悪い交差点に進入する際に、原則、運転者に徐行義務を課し、交差点において交通整理が行われている場合および優先道路を通行している場合には、徐行義務を免除する旨定めています。
  • 本問においては、徐行措置を講じていれば事故を避けられたのですから、当該交差点進入に際し、Xに徐行義務が課されるかが、問題となります。
  • 交差点における交通の安全と円滑を保つためにも、交通整理が行われている交差点というには、交差する交通の一方を止め、他方を進行させることを短時間に交互に繰り返すような措置が必要です。
  • 道路交通法上、黄色点滅信号は注意して進めを、赤色点滅信号は一時停止を意味するだけで、交差する交通の一方を止め、他方を進行させることにつき不十分です。
  • よって、赤色および黄色点滅信号しか設置されていない本件交差点は交通整理の行われている交差点とはいえず、また、優先道路の標識も無いので、Xは優先道路を走行しているともいえません。
  • したがって、Xには本件交差点に進入する際に徐行義務が課されることになります。
  • また、当該徐行義務を怠ったことにより、Bの傷害という結果が発生している以上、Xが結果発生に起因的な規則違反をしているといえます。
  • よって、Xに信頼の原則は適用されず、結果回避義務は免除されません。
ということで、Xは徐行義務があったと結論されている。

 私が理解した範囲でもう一度整理してみるに、要するに、黄色と赤の点滅信号のある交差点というのは、単に車の進行のしかたを規定しているだけであって完璧に交通整理がなされている交差点とは言えず、黄色点滅側道路通行者の徐行義務を無条件に免除しているわけではない。このうち、優先道路の標識があったり、左右の見通しがよければ、赤点滅側に車が進んで来ても一旦停止するであろうと期待できるので徐行義務は無い。しかし、そのような条件を満たさない見通しの悪い交差点では、そういう義務は免除されない。この場合、徐行しなかったからという理由だけで交通違反の取り締まり対象にはならないが、事故を起こしてしまった時の結果発生的な規則違反は問われる。ということになるようだ。

 この結論をあてはめると、信号機が設置されておらず交差側の道路が一時停止になっている道路を直進する時にも、見通しが悪い場合は徐行義務が課せられる可能性があるように推測できる。交差側が一時停止するんだからスピードを緩める必要は無いと思っていたが、見通しが悪い場合には、いつでも止まれるようにスピードを落として進む必要がありそう。過失の割合は少ないとはいえ、一時停止を怠った側が100%悪いということにはならないようだ。