じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真] [今日の写真] 8月4日夜は恒例の「おかやま桃太郎まつり 第33回納涼花火大会」が開催され、5000発の花火が打ち上げられた。
私自身は、最近はもっぱらアパートのベランダから鑑賞することにしている。写真左はベランダからの眺め(左下隅に花火が見えている)。写真右はそのズーム写真。デジカメの性能がよくなったため、こういう画像が撮れるようになった。


8月4日(金)

【思ったこと】
_60804(金)[心理]崩壊?日本人のモラル(3)やっと番組を視る

 昨日の日記の続き。DVDに録画しておいたNHKクローズアップ現代「崩壊?日本人のモラル」(7/31)をやっと視た。番組ではすでに挙げた
  • 高速道路の料金所を料金を払わずに突破する車。
  • コンビニや道の駅のゴミ箱に捨てられる大量の家庭ゴミ。
  • 図書館では本の無断持ち出しや切り抜きが相次ぐ。
のほか、新車を購入したり高価なペットを購入しているのに、月4000円の給食費を払わない家庭がある、という事例も紹介していた。

 このほか、冒頭ではNHK世論調査(7/15〜7/17実施、1731人対象、回答率59.2%)において

●最近の日本人のモラル 「低い」+「どちらかと言えば低い」と答えた比率 77%

という結果、番組の中頃ではさらに、「身近な場所で起きている事柄」、「自分がしてしまうかもしれない」、あるいは「自分を含めてたいていの人がやっている」を合わせた回答比率が
  • 図書館の本 書き込み・切り取り 4.1%
  • 支払えるのに公共料金・税金を滞納する 11.6%
  • ごみ捨て 時間や場所を守らない 15.5%
となっていることも紹介されていた。

 この番組のスタジオゲストは 佐野眞一さん (ノンフィクション作家) も、江川紹子さん(ジャーナリスト)のお二人。他に、速水・名古屋大教授と、樋口・慶大教授のコメントが寄せられた。




 番組の中で指摘されたコメントを要約・引用すると以下のようになる(←長谷川の聞き取りによるため不確かな表現あり)。
  1. 地域社会の崩壊、終身雇用廃止により、自分が帰属している社会の「目」が無くなり、同時に、どこから見られても恥ずかしくないようにという内なる目が無くなった。(江川さん)
  2. 経済政策の転換、情報環境の激変の2つによって人間の振るまい方が劣化(佐野さん)
  3. インターネットの普及など世の中が便利になり、人々が何でも自分一人でできるという感覚を強めていることが影響している。「他に頼らなくても自分一人で生きていける」ということから社会を軽く見てしまう(『他人を見下す若者たち』の著者、速水・名古屋大教授)
  4. 自由競争が主張された結果として個人の利益が最大限に重視されるようになり、いままでの「共助」が失われてきた。自分が生き残っていくためにはモラルも捨てなければならないということもある。(樋口・慶大教授)
  5. 結果重視、効率重視により、プロセスが軽視され、法律に反しなければいいじゃないかという風潮(江川さん)。
  6. 哲学が滅びて、新しい価値観を生み出さないまま走り出している。日本の資本主義を導入した渋沢栄一は「論語と算盤」を強調。内部に絶えず論語を置く必要。(佐野さん)
  7. 監視カメラでは、監視はするが、「内なる目」は育てない(江川さん)。
  8. 「内なる目」は壊れたわけではなく眠っている状態。今の時代は、いつでも切断可能な「選択型コミュニケーション」になっている。参加したい所だけ参加するというタイプではなく、面と向かった持続可能なコミュニケーションの中で内なる目を育てていく必要がある(江川さん)。
摘された。

 番組最後の「最終結論」は、
  • 江川さん:個人が分断されている中で、面と向かったコミュニケーションを大切にしてて自らを律する力、内なる目を養うことが必要だ。
  • 佐野さん:物事を背後を感じる力、想像する力を培うことが大切だ。
というものであった。言わんとすることは分かるが、総じて具体性が無く、いつになく歯切れの悪いご発言であるように感じた。




 まず、昨日の日記にも書いたことだが、「モラル低下」という結論を先に出して、種々の現象を「その表れ」と解釈することには根本的に無理があるように思う。まずは、個々の問題について、固有の原因を探り、それに合わせて具体的に対処していくことである。例えば、江川さんは、法律に反しなければいいじゃないかという風潮を指摘しておられたが、番組に取り上げられた事例の中には、料金所不払い強硬突破や、図書館の本の切り抜きのように明白な犯罪行為が含まれている。これらは、モラル云々とは別に、断固として監視し、厳罰を科すのが当然である。そのケジメをしっかりつけた上で、軽微な「モラル低下」の部分を論じるべきであろうと思う。




 次に納得できなかった部分は、「日本人は...」というように、何でもかんでも画一的、平均値的に論じてしまうことの危険である。紹介されたアンケート結果を見ても分かるように、何も日本人すべてのモラルが低下しているわけではない。料金所突破も、本の切り抜きも、給食費不払いも、日本人の中のある種の少数派が、ある状況のもとで行っている行為である。何かの表れであると主張する人たちは、そういう不正行為をしない人たちにも目をむけ、多数派はなぜモラルを低下させていないのか、ということもちゃんと説明しなければなるまい。

 それから、番組で紹介されたアンケート結果では、最近の日本人のモラルは「低い」、もしくは「どちらかと言えば低い」と答えた比率 77%に上ったことが紹介されていたが、もし本当に周囲の世界に関心を持たない人が増えているならば、その回答比率はもっと低くなってもよいのではないかという気もする。なぜなら、周囲の環境にそれなりに目を配っていなければ、「モラル低下」という判断を下すことはできないからである。例えば、路上に吸い殻をポイ捨てしている人たちに対して、「公共空間でのマナーが低下していると思うか」というアンケートをとっても、必ずしも肯定比率は高くないはずだ。吸い殻をポイ捨てしている人の多くは、ポイ捨てがマナーに反していることさえ気づいていないからである。




 いっぽう、上記の1.〜8.の中では、1、7、8の江川さんのコメントについては納得できるところがある。これについては、また別の機会に考えを述べたいと思う。