じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



5月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る
[今日の写真]

 香川大・教育学部内で見かけた「自転車・バイクの学内移動厳禁」の看板。看板の下のほうには「全大学人で静かな環境を」というメッセージあり。

 5月24日の日記にも書いたように、私のところでは、ずっと以前から講義棟前の道路を塞ぐような迷惑駐輪が問題となっている。香川大のように「学内移動厳禁」を徹底すれば事態はかなり改善されるものと思われるが、問題は、キャンパスの広さにある。こちらの比較で示すように、岡大の津島キャンパスの北東端(環境理工学部)から南西端(農学部)までの距離は、高松駅から香川大・教育学部までの距離よりさらに長い。最近では、他学部の専門科目を副専攻として履修するなどの学部間バリアフリー化が進んでいるが、徒歩だけで移動するには限界がある。やはり、所定の場所への駐輪を徹底し、入口付近や道路にはみ出すような駐輪を厳しく取り締まるということが現実的かもしれない。



5月28日(月)

【思ったこと】
_70528(月)[教育]第55回中国・四国地区大学教育研究会(1)大学における教養教育の充実をめざして

 5月26日(土)朝から27日(日)午前まで開催された表記の大会のメモと個人的感想の1回目。

 香川大学長の挨拶と、香川大教育開発センター長(教育担当理事・副学長)の趣旨説明にに続いて、まず、2つの講演が行われた。メインテーマは「大学における教養教育の充実をめざして」。講演者及び演題は
  • 川口昭彦氏(独立行政法人大学評価・学位授与機構理事):大学における教養教育の充実をめざして:教養教育と大学評価
  • 寺崎昌男氏(立教大学大学教育開発・支援センター顧問、大学教育学会会長):学士課程教育の課題と教養教育
であった。

 1番目の川口氏は、まず、教養教育が驚くほど多様に実施されていることを、試行的大学評価結果に基づいて指摘された。

 そもそも教養教育とは何か? 原則的には、大学設置基準において「幅広く深い教養および総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養する」とされ、大学設置審査内規に関する申し合わせに沿って開講されている科目ということになるが、法令上で一律に規定されているわけではない。大学の機能別分化が進む中で、それぞれの大学が学士課程教育の中でどのように位置づけるか明確にし、その大学の特色や個性を発揮することが求められている。また、単に授業科目や内容として議論するばかりでなく、初年次教育プログラムとしても捉えなければならない、というようなお話であった。

 上にも述べたが、実際に行われている教養教育の内容は多種多様であり、配布された資料によれば、
  • 情報リテラシーの向上
  • 外国語によるコミュニケーション能力の育成
のように、「組み込んでいる」、「特に組み込んでおり重点を置く」と答えた回答率が100%に達するような選択肢がある一方、
  • 芸術的な表現力の育成
  • ボランティア意識の育成
  • 高等学校程度の内容の補習教育の実施
などのように、相対的に比率の低い(4〜6割程度)選択肢もあった。

 もっとも、比率の高低がどうあれ、単に「組み込んでいる」という回答だけでは、それらが、選択科目の1つとして用意されているだけに過ぎないのか、また、半期1コマ程度なのか積み重ね型に何コマも開かれているのか、というあたりは見えてこない。学生の受講できるコマ数は物理的に限られているのだから、その中でどういうウェイトが置かれているのかにも目を向ける必要があるだろう。




 「教養教育と大学評価」に関しては、「実施体制」、「教育課程の編成」、「教育方法」、「教育の効果」という4点から、5段階評価(A:優れている〜E:問題がある)が実施された。さすがに「E」は無かったが、全体的な傾向として、「実施体制」や「教育課程の編成」にBやC評価が多かったのに対して、「教育方法」ではBよりもC、また「教育の効果」では、CのほかD評価もかなりの比率を占めるようになっており、
  • 履修状況や学生による授業評価結果から判断した教育の実績や効果
  • 専門教育履修段階や卒業後の状況等から判断した教育の実績や効果
を分析する体制が整っていない大学が相対的に多いということが明らかになったという。ま、要するに、授業評価アンケート結果が数値の公表レベルに終わってしまっていてそれ以上の改善に結びついていないという可能性、あるいは、より長期的に見た教育効果についての検証が不十分である、ということだろう。




 さて、教養教育は、「大綱化」の嵐の中で大きく変容した。「大綱化」自体にはどこにも書いていなかったが、多くの大学は自由度が広がった結果として「専門教育の強化」を選んだ。また教養部廃止、つまり教養科目を専任として教える教員が移籍してしまったことに伴い、「全学出動体制」がとられることになった。川口氏は、「全学出動体制」のメリットとして、
  • 専門教育と教養教育の有機的な連携
  • 全学の教員による豊富な授業の提供
  • 階層化意識の解消
という3点を挙げられた。そのいっぽう、「全学出動体制」の問題点としては、

●教養教育の存在意義は拡散し、責任主体が曖昧になり、教養教育の実質の空洞化

を指摘された。これらの御指摘は、まさに私自身も実感しているところであり、今年度は特に学科目部会長を仰せつかっていることもあり、問題点を感じることが多い。

 とにもかくにも「大綱化」の嵐(=1991年の大学設置基準大綱化)は、大学教育に大きな変化をもたらした。その中で、教養教育の重要性が改めて見直され、平成11年(1999年)頃からは再び、教養教育課程改編に取り組む大学の数が増えているという。その数は、大綱化に伴う平成5〜6年(1993〜94年)の改編のピークに匹敵するほどであり、「ひずみの是正」の表れであると見なすことができる。

 次回に続く。