じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 岡山では9月に入っても残暑ならぬ猛暑が続いている。9月1日から22日までのあいだで、最高気温が30°を上回った回数は21回、熱帯夜は9回。写真は、鉢の下の水を撒いた地面で涼むノラネコ。



9月21日(金)

【思ったこと】
_70921(金)[心理]日本心理学会第71回大会(4)キャンパスの中の「カルト」(2)

 昨日の続き。種々の報道表現では、最近のカルト宗教報道では、教祖が女性信者へ性的暴行をはたらいたというようなことが大々的に報じられるむきがあるが、これはカルト宗教の本質を捉えているとは言い難い。いちばんの問題点は、カルト宗教にマインドコントロールされてしまうことによって勉学環境が破壊され、多面的な判断力を奪われ、すべて教団に都合のようように断定的一方的に解釈するようになってしまうことの恐ろしさであろう。

 今回の講演によれば、カルト宗教というのはある意味で1つの文化圏を構成する。教団の外は異なる文化圏であるため、何を咎めても攻撃としか受け止められなくなる。また、何かの拍子に怪我をしても、その信者が迷っているケースでは「修行が足りないから怪我をした」と言われ、逆に熱心に布教活動をしていて怪我をした場合は「家の中でじっくり修行をするために、みこころによって怪我をした」というように、いずれも教団の都合のいいように解釈され、こじつけや数字の語呂合わせのようなトリックでさえ納得してしまうのである。




 さて、今回の講演では、他のテーマの招待講演で来日したチャルディーニ・アリゾナ州立大学教授からも

●Development of a Group Influence Scale (集団影響力尺度の作成)
というテーマの話題提供があった。

 それによれば、カルト宗教の勧誘などで個人が影響を受けやすい原理としては以下の6つが挙げられる(説明は長谷川が改変)。
  • Reciprocation(返報性):いろいろ親切にしてもらうと、その「恩」に報いるため誘いに応じるようになる
  • Scarcity(希少性):手に入れられないと欲しくなる
  • Authority(権威):難解な言葉を使われたりすると学識がある話者であるように錯覚し、専門家の言うことなら正しいに違いないという気になる。
  • Consistency(一貫性):コミットメント
  • Social Proof(社会的証明/コンセンサス):多数の他者や類似した他者の指示に従おうとする
  • Liking(好意):Liking Flows from Positeve Connections/自由に判断する時間が与えられないもとでの認知的過負荷
話題提供では、それぞれに関する尺度得点について、一般大学生とカルト脱会者の平均値が比較され、それら6点について、カルト脱会者のほうがそれらの影響を受けやすいことが示された。但しこれは、現在開発中の予備的報告ということであった。




 いっぽう、日本国内のカルト宗教団体の中には、集団の影響を利用するというより、個人的な結びつき、つまりチューター制のような形で教化が行われているという事例も報告された。こうしたやり方はでは、教育コンテンツよりも人間関係が先行、つまり、幼稚園や小学校教育のように「教科内容が面白いからではなく、この先生が好きだから一緒に勉強する」というような形の関係が形成されやすいという。このことに限らず、カルト宗教の影響を理解するためには、単に教義や反社会性に目をむけるだけでなく、教団内部において、教祖と自分、信者間、新たな布教対象者と自分、というような人間関係の強さ、依存、内容などを十分に把握し、対処していく必要があると思った。

 次回に続く。