じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【思ったこと】 _71011(木)[心理]日本心理学会第71回大会(20)“ネガティブ”な要因のポジティブな生かし方(6)気晴らしの効用 表記のワークショップの参加感想6回目。 坂本氏、細越氏に続いて、及川恵氏による、 ●回避的コーピングとパフォーマンス という話題提供があった。ここで主として「気晴らし」が取り上げられたが、気晴らしと言えば、ダイバージョナルセラピー(Diversional Therapy)も、「diversion」に「気晴らし」という意味があることから「気晴らし療法」と呼ばれたことがある。このセラピーは御本家がオーストラリアにあり、こちらのサイトや、日本ダイバージョナルセラピー協会のサイトに詳しいが紹介されている。但し「ダイバージョナルセラピー」と言っても特定のセラピーではなく、後者のサイトにあるように「思想と手法」を意味するものであり、「気晴らし」のテクニックを磨く団体では決してない。 ダイバージョナルセラピーとは、個々人の独自性と個性を尊重し、よりよく生きることをめざし実践する機会を持てるようサポートし、自分らしく生きたいという要求に応えるため「事前調査→計画→実施→事後評価」のプロセスに基づいて、個々人の“楽しみ”からライフスタイル全般まで、そのプログラムや環境をアレンジし提供する全人的ケアの思想と手法です。2007年6月15日と、そのあとの17日、18日の日記に、ダイバージョナルセラピーについての最近の情報を記してあるのでご覧いただければ幸いである。 ちなみに、6月17日の日記では、 ところでダイバージョナルセラピーの語源となる「Diversion」の意味であるが、日本国内ではかつて「気晴らし」というように紹介されたこともあった。しかし「気晴らし」という訳では「退屈しのぎ」といった程度の軽い意味に誤解されてしまう恐れがある。ランダムハウス英語辞典などを見ても、もともとはというように捉えており、今回の話題提供とはかなり内容を異にしていると言えよう。 さて、今回の話題提供では「気晴らし」には「diversion」ではなく「distraction」があてられており、 ●不快な気分やその原因から注意をそらすために他のことを考えたり、行ったりすること という、Stone & Neal(1984)の定義が引用されていた。また、実際によく用いられる対処としては、
「気晴らし」というのは、困難状況から遠ざかることで問題を避けようとする「回避」の部類に属し、その影響は一般的には否定的とみなされている。しかし、ストレス状況を避ける回避方略として、必ずしも不適応的とは限らないのでは、というのが今回の趣旨であった。及川氏はここで、反応スタイル理論の知見に基づき、ネガティブな気分から「考え込み」が起こることの悪影響について論じられた。要するに、「気晴らし」には、考え込みの悪影響を防ぎ、問題解決行動(接近的対処)につながる可能性があるというわけだ。 ところで、「気晴らし」と「考え込み」は排他的なものではない。今回の話題提供では、大学生166名を対象に行われた質問紙調査の結果(及川・坂本,2007)が紹介されていたが、そこでは、「気晴らし」の高低で2通り、「考え込み」ので2通り、計4通りのパターンに分類され、ストレス反応の大きさが比較されていた。詳しい言及は避けるが、要するに、「気晴らし」には肯定的側面があること、また、単純に気晴らしの効用を論じるのではなく、他の要因と組み合わせて活用をさぐっていく必要があるというご趣旨であると理解した。GeNii [ジーニイ] 「及川恵」氏のお名前を入れると関連論文がいくつかヒットするので、詳しくはそちらをご参照いただきたい。 時間が短かったことと、私自身の知識不足もあってよく理解できなかった点は、「気晴らし」というものをどう定義するかということであった。冒頭に引用された定義: ●不快な気分やその原因から注意をそらすために他のことを考えたり、行ったりすること によれば、「気晴らし」の定義には「不快な気分やその原因から注意をそらす」という意味が最初から含まれているので、「気晴らしをすれば不快な気分から注意がそらされます」と言うだけではトートロジーに陥ってしまう。けっきょくのところ、
次回に続く。 |