じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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§§ 岡大構内の木の実、草の実(2)ナンキンハゼの白い実

この時期になると果皮がはじけてポップコーンのような白い実が飛び出す。毎年この時期に写真を載せており、昨年と一昨年は以下の通り。なおネット記事によれば、ナンキンハゼは雌雄同株だが、雄性先熟株の雄花と雌性先熟株というのがあるらしい。


12月18日(木)

【思ったこと】
_81218(木)[心理]日本園芸療法学会第1回大会(5)

 3番目の発表は、そらぷちキッズキャンプの紹介であったが、用意されていたDVDが提示用パソコンの規格に合わず、順番を後にまわして、静止画のみの紹介となった。キャンプの取り組み自体は大変意義深いものであると感銘を受けたが、うーむ、このキャンプ自体は園芸療法の範疇には含まれないように思えた。いっぽう、病院内の取り組みのほうでは、免疫が低いために屋外に出られない子どもが、窓の外の大根を病室からロープでひっぱって収穫する写真などが紹介されていたが、むしろこちらの実践活動を組織的なプログラムとして実践報告されたほうが、園芸療法学会の発表としては適していたのではないかという気もした。そらぷちのほうは、むしろ、人間・植物関係学会の発表テーマになるのではないかと思う。




 4番目の発表は、統合失調症の30歳代女性に対する個別園芸療法の症例報告であった。まずスタッフによる印象評価、心身機能、活動・参加実態にすいての初期評価が行われ、続いて、8月下旬から10月上旬までの2カ月余りの間に個別園芸療法プログラムが23回にわたり実施された。そのうち、9月頃には15回にわたり「目指せ! 花博士」というようなタイトルで、当人が興味を持つ花の名前を1日ひとつ覚え、自身がまとめてファイリングし、スタッフや他の患者さんとの交流に活用するという特別プログラムが実施された。ここでの園芸療法の目標は
  • 長期目標:植物を介して他者との交流を増やし、表情豊かに日常生活を送れるようにする。
  • 短期目標:園芸に関わる時間を増やすことで病気にとらわれる時間を減らす。
ということであったという。

 プログラム実施後の再評価では、花の名前を覚えることについては意欲が高まり、また、スタッフとの交流面で、硬い表情で凝視する場面が減る、親しげに話し冗談を言って笑う、といった改善が見られたいっぽう、全般的なコミュニケーションや対人関係では特段の変化は見られなかったということであった。

 この4番目の発表では、単に植物との関わるだけでなく、集団への関わりを発展させるという目標が設定されていた。しかし、現実には、個別園芸療法の場のみで意欲が高まり、集団での他者との関わりについてはさらに練習が必要であるというような結論となっていた。このことに関しては、私自身フロアから質問させていただいたのだが、
そもそも、植物に静かに向き合い、植物と一対一で関わりを持つということはそれ自体に意味があるのであって、必ずしも、集団場面での交流や対人関係の改善を前提とはしていない。私自身などまさにそういう傾向があるのだが、対人的な接触を必要最低限にとどめ、できるだけ静かに花を育てたい、自然とふれあいたいという「人付き合いを好まない人のための園芸療法」だってあっていいのではないかと思う。発達障害(障がい)児の場合であれば、将来の自立をめざして対人関係スキルを身につけることは大いに有用であろうとは思うが、成人になって、それなりの生活の場が確保できている人であるなら、ことさらに対人スキルを磨く必要はないのではないか。
というような疑問が出てきた。しかしこのケースでは、御本人が他者との交流を増やすことを望んでおられるということであったので、それであるならばその方向を目指すことに特に異論はない。

 なお、今回報告の症例では、花の名前を覚えたりファイリングをするという行動は、病院内のスタッフや他の患者さんとの交流場面に限って、成果として発揮されていたようであった。しかし、今やデジカメやネットがいつでも使える時代である。花をテーマにした写真ブログや花図鑑サイトを開設したり、花の名前を教えあうような掲示板に投稿したりすれば、ごく気軽なレベルでの対人的交流が始められるのではないかと思う。生身の人間との交流が苦手な人、あるいはそれを好まない人でも自由に参加できるのでぜひオススメしたい。


 次回に続く。