じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 成田→カムチャツカの機上から眺める大雪山系(2008年8月5日撮影)。右下が主峰の旭岳。


7月18日(土)

【思ったこと】
_90718(土)[一般]大雪山系での大規模遭難事故

 各種報道によれば、7月16日午後、大雪山系のトムラウシ山(標高2141m)と美瑛岳(2052m)で遭難事故が発生し、50〜60歳代の10名がお亡くなりになった。悪天候による夏山遭難では、過去最悪の事故となった。このうちトムラウシ山で起きた登山者グループの遭難事故では、死亡した8人の死因がいずれも凍死だったことが警察の調べでわかったという。このほか、18日には当該旅行会社が業務上過失致死の疑いで捜索を受けたという報道もある。

 この大規模遭難事故の原因については、
  • 中高年登山の問題
  • ガイドの判断ミス
  • 防寒対策の不備
  • ちりぢり登山(一行がばらばらになる)
  • ガイドがコース未経験(今回の場合、男性ガイド3人のうちコース経験者は1人のみ)
  • 北海道と本州の山の違い
  • 「百名山」へのあこがれ
などが指摘されているが、私はやはり、悪天候の中でもできる限り日程を守ろうとする「ツアー登山」の問題点が一番大きいのではないかと思っている。




 そういえば、昨年の夏に訪れたカムチャツカの山でも、ずっと悪天候が続いていた。こちらのアルバムに示すように、中腹では美しい虹やブロッケン現象を眺めるという幸運にも恵まれたが、山頂付近は厚い雲に覆われ、また、登り初めは横殴りの雨、中腹からは吹き飛ばされそうになるほどの強い向かい風に悩まされ、私自身は、2000メートル付近で身の危険を感じ下山グループに加わった。この日は、悪天候を承知で4名が登頂したが、結果的には最後まで晴れず、ガスで何も見えなかったという。

 このカムチャツカの登山(アバチャ山登山)はチャーター便の関係で5日間の日程となることが多い。このうち、1日目は成田からの移動のみ、2日目はアバチャ山麓まで移動(ラクダ山登山)、3日目がアバチャ山日帰り登山、4日目はその予備日となっている。しかし、3日目が悪天候で予備日の4日目に登山した場合は、その日のうちに麓の町まで戻らなければならず、いろいろと不都合が多い。ということもあって、よほどの悪天候でない限りは3日目に登山を行うことになっていると聞いた(夏の富士山と異なり、夏のカムチャツカはいったん悪天候になると一週間以上回復しないことも多いので、この判断が間違っているというわけでもない)。

 アバチャ山の場合は、日帰り登山であるということと、いつでも引き返せるコースになっているという点で、今回のトムラウシよりははるかに難易度が低いとは思う。じっさい、カムチャツカ登山の時はかなりびしょ濡れになっていたが、下山後にすぐに体を拭いて着替えることができたので特に寒いということはなかった。




 北海道の山は、1970年代に何度か登ったことがあった(羊蹄山、樽前山、駒ヶ岳、黒岳〜旭岳往復、十勝岳、美瑛山、利尻山、知床連山、摩周岳、川湯硫黄山など。←火山活動活発化等のため現在は登山禁止となっている山もある。念のため)。私の場合は単独登山ばかりなので、ツアー登山とは違ったリスクを背負っていたが、ただ1つ、悪天候時、もしくは天候が下り坂の時には決して登らないということは徹底していた。7月に10日間ほど北海道を滞在して、悪天候が続いたため、結局、一度も山に登れなかったということもあった。

 海外の登山の場合はどうしてもツアー登山に頼らざるを得ないが、私がこれまでに登った山の多くは、雨季と乾季がはっきりしている地域であり、雨に降られるという心配はあまりなかった。これまでに雨に降られたのは、タスマニアと、モンブラン周辺、それと昨年のカムチャツカぐらいのものである。このうちタスマニアは「温帯雨林」と言われるくらいだから雨が降って当たり前。スイスのトレッキングも、モンブラン周辺は雨(標高の高いところは雪)に悩まされたが、反面、マッターホルン付近は好天に恵まれたので十分に堪能できた。




 ということで元の話題に戻るが、一部に出ている「中高年であるから危険」というような論調は必ずしも当たっていないと思う。但し、定年退職後の中高年であれば、日程にはもっと余裕がとれるはずであり、それぞれの体力と技術に見合った登山プランが組めるはずである。今回の捜索を受けた会社は、ツアー登山の催行では名が知られている3A(スリーエイ、Aで始まるツアー登山専門旅行会社3社)の一角であった。高齢者や障がい者の登山に対しては他社をしのぐ厚い配慮をしていると思っていただけに、今回の事故は意外であった。事故に遭われた方々のご冥福をお祈りするとともに、他社を含めて、今後、日程やガイドの教育に万全を期するよう、改善を求めたいと思う。