【思ったこと】 _91008(木)[一般]台風報道のあり方を考える
上にも述べたように、台風18号は10月8日の午前5時すぎ、愛知県の知多半島付近に上陸し、その後本州中部から東北地方南部を縦断し宮城県沖に抜けた。
この台風は、当初は「平成で最強の台風」とか、「伊勢湾台風に酷似」などと騒がれたりしたが、結果的には、大規模な災害が起こらずに済んだ。ネット記事によると、各地の主な被害は以下の通り。
- 埼玉県と和歌山県で折れた木の枝の下敷きになるなどして2人が死亡、宮城県で1人が行方不明となっているほか、24の都府県であわせて118人がけが。
- 茨城県内では土浦市と龍ケ崎市を中心に、竜巻による突風で住宅の屋根が飛ばされる被害が相次ぐ。千葉県九十九里町と山武市では、突風で住宅1棟が全壊したほか、住宅など37棟で屋根が飛ばされるなどの被害あり。
- 首都圏のJR各線は、朝の通勤ラッシュの時間帯に、一時、ほぼ全線で運転を見合わせるなど、台風の影響としては、JR発足以来、最大規模の運転見合わせになった。在来線では、2657本が運休し、296万人が影響を受けた。今回の運転見合わせは、主に沿線の風速計で、運転中止の基準となる25m以上の強い風を観測したため。
- 伊勢神宮では、境内の杉の巨木が根元近くから折れ、朝から参拝の受け入れを取りやめた。この杉の木は、伊勢神宮の内宮の正殿近くにあったもので、樹齢がおよそ800年といわれ、幹の直径がおよそ3m、高さ40m以上もあった。
- 同じく二見浦・夫婦岩に張られていた二見興玉神社の大しめ縄5本がすべて切れる。
- 愛知県豊橋市の三河港では、ふ頭に置かれた70〜80個のコンテナが横転、散乱。コンテナは長さ約6m、幅約2.4m、高さ約2.6m。中身はほぼ空だったが重さは約2トン。台風に備え2段積みにし、コンテナ同士も金具で留めてあったが、全体の約半分にあたる空のコンテナが、置いてあった岸壁近くから最大300m移動、一部は道路をふさいだ。
- 知多市では、国道155号の東(あずま)橋(長さ6.3m、幅7.5m)が、河川の増水で街路灯とともに崩落。
- 知多市日長の名鉄常滑線長浦駅南約1.5kmの地点で、線路東側の山林が高さ20m、幅30mにわたって崩落。土砂と倒木が線路を覆ったが、8日午前5時半ごろ、監視システムが異常を感知し、鉄道事故は免れた。
台風18号が日本列島を10月8日、NHK総合テレビでは朝からの番組を台風情報に切り替えた。この特別報道体制は19時30分の「クローズアップ現代」開始まで続いた模様である。
NHKや民放の台風関連の番組を視ていて思ったことをいくつか。
- まず第一に、台風の位置や雨雲、強風などの情報はリアルタイムでできるだけ詳しく伝えてもらいたいものだ。上の写真にも示したが、中心の位置がずれているような画像は、一般市民の防災・避難活動にも大きな影響を与える。
- それから、このWeb日記で何度も書いているように、台風関連の気象災害は中心に近いところだけで発生するわけではない。防災レーダー、河川の水位、強風、竜巻発生の恐れの強い地域など、また、交通機関の乱れや道路交通情報などを、画像中心で刻々と伝えてもらったほうが遙かに役立つ。
- 台風接近現場の中継にどれだけの情報的価値があるのかどうかは疑問である。重大災害が発生した現場の映像ならともかく、風雨がほとんどみられない駅前や放送局前の映像などを流して、客観的証拠もないのに「先ほどより風雨が激しくなってきました」などと報告するのはいかがかなあと思う。
- NHKの放送では、ビルの窓ガラスが1枚割れたとか、強風にあおられてお年寄りが転倒して軽い怪我をしたといったニュースも刻々と伝えられていたが、台風通過中に最も大切なことは、これから起こりうる被害を防ぐことにある。そういう些細な事故までいちいち伝えることに意味があるとは思えない。単に「けがをした人が何人」というように、数だけまとめて伝えればいいのではないか。
- 交通機関の運休情報は重要なニュースであるが、そのいっぽう、「乗客の声」にどれだけの情報的価値があるのかは疑問だ。「会社に行こうと思って出てきたが電車が動かないので、会社はお休みとなった」などとヘラヘラ笑っている人の声を聞いたところで、台風への警戒意識が高まるとは思えない。
台風が通過したあとは、災害の状況を伝えるばかりでなく、防災体制がうまく機能して災害に遭わなくて済んだという事例もできるだけ多く紹介するべきである。このWeb日記で何度も書いていることではあるが、日本人は、日本の防災体制の水準の高さをもっと誇るべきである。
そういえば、少し前のネットニュースで、
世界33か国中で、自国に対する誇りが最も高い国はオーストラリア、最も低い国は日本であることが分かった。【2009年10月2日、英誌エコノミストが発表した調査結果】
というようなことが伝えられた。関連記事では、失業率の増加や収入減が日本の若者の自国への誇りを失わせているというような解釈がまことしやかに論じられていたが、自国への誇りというのは、その程度のことで増えたり減ったりするものではない。また、学校教育の中で紋切り型の「愛国心教育」を押しつけても、それだけで誇りが身につくとは思えない。それよりも、今回も実証されたような防災体制の水準の高さこそを実感させていくことのほうが遙かに「誇り」につながるのではないかと思う。
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