【小さな話題】
大逆転将棋
2月11日の午後は、妻の実家で
NHK 大逆転将棋(2010年1月1日19:20-21:50の再放送)
を視た。この番組は『大逆転将棋』というタイトルになった2002年からは毎年1回放送されていたというが、私自身が観たのは今回が全くの初めてであった。
強い人と弱い人がハンディをつけて対戦する方法としては駒落ち将棋が一般的であるが、番組の中では
- 「ステルス将棋2010」
- 「マニフェスト将棋」
- 「大逆転投了図対局」
といった興味深いハンディがあった。このほか、プロ同士の対局として「The 60's 1分切れ負け将棋トーナメント」、「脳内対局10秒将棋」、「詰−1グランプリ・ザ・ファイナル」といった、それぞれまことに興味深い企画があった。
「ステルス将棋」は、いくつかルールを追加すれば、双方でステルスの配置をして遊ぶこともできると思う。オーソドックスな手順では決して現れないようなコマの配置が出現し、新鮮なゲームとして楽しめそうだ。
「The 60's 1分切れ負け将棋トーナメント」、「脳内対局10秒将棋」、「詰−1グランプリ・ザ・ファイナル」の3企画は、大道芸としては面白いとは思うが、実際の棋譜や詰め将棋問題を解説してもらう時間がなく、将棋そのものの面白さを楽しめる内容とは言い難かった。
- 「The 60's 1分切れ負け将棋トーナメント」タイトルは「1分切れ」となっているが、アナログ式の対局時計(チェス・クロック)は秒単位のカウントができないため、1秒未満で指している限りは永遠に指すことができるらしい。そのこともあって、ほとんどの手が1秒未満に指されてしまうため、解説を聞くこともないままに将棋が終わってしまう。駒が横向きになったり、マス目の線上に置かれてしまったりして、観ていても何がなんだか分からなくなる。それでいて、たいがいのところは感想戦で再現できるというのだからやはりプロはスゴイ。
- 「脳内対局10秒将棋」:プロ棋士どうしの脳内対局はスゴイと思ったが、あっけない幕切れにあっと驚く。入玉模様となると、重要な役割を果たしていない歩の位置などは忘れてしまうということだろう。
- 「詰−1グランプリ・ザ・ファイナル」:詰将棋の一種として双玉詰将棋というジャンルがあることを初めて知った。現代の代表的な双玉詰将棋の作者が、この番組の司会者の神吉宏充・六段であるということも初めて知った。最後の審判というのもあるらしい。
もう1つ、「マニフェスト将棋」であるが、追加のハンディ・ルールはダーツで選ばれた4つ(←最初は3つで、あとから1つ追加)とされており、今回は、
- 「詰んでいる形でも1回は詰ましません」
- 「初手から30手まで飛車は動かしません」
- 「王手されても逃げません」
- 「初手から10手以内に角と歩を交換します」。
となっていた。しかし、ダーツで選ぶというのは、生中継でない限りは偶然性の面白みが無く、最初から設定しておいても同じことになったと思う。また、「初手から30手まで飛車は動かしません」というのは、飛車の頭の歩を動かさせておいて、飛車の頭に持ち駒の歩を打つように工夫すれば必ず飛車をとれる。4.の「角と歩の交換」義務と合わせると、結局、飛車と角を持ち駒として与えられたハンディと同じようになってしまってあまり面白みがない。「詰んでいる形でも1回は詰ましません」は、接戦になれば逆転の可能性をもたらすが、実力に大差があるプロとアマの間のハンディとしては殆ど意味をなさない。「王手されても逃げません」についても、実力に大差があればそう簡単には王手ができないので意味がなさそう。ではどうすれば面白いマニフェストになるか、以下、思いつくままに挙げてみたい。
- 任意の時点で、玉と、見方の別の駒の位置を取り替えることができる(王様が詰められそうになった時、別の駒とすり替えることができる)。
- 玉は、龍と同じように動ける。
- 玉を2枚持つことができる(玉の左右の金1枚を玉とみなす。その玉は取られても相手の持ち駒にはならない)。
- 任意の時点で1回、相手の持ち駒をすべて自分の持ち駒にすることができる。
ま、しかし、将棋というのは長年にわたって確立されたルールが最良であり、小手先のルール変更によるハンディ設定では、将棋本来の面白さは確保できないかもしれない。
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