じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【小さな話題】 「不安」を利用した説得と意気消沈 7月6日(火)朝のモーサテの「きょうの経済視点」は、「不安の正体」であった(JPモルガン証券チーフストラテジストの北野一さん)。 今回の参院選挙でも各党がしばしば「不安」を煽り、我が党はその不安を解消できるという形で支持を求めている。「財政破綻の不安を無くすために消費税率の引き上げを」というような訴えである。 この種の不安を煽るタイプは、政治の世界では最もよく利用されている言説であると言えよう。しばしば耳にするのは「独裁国家からの攻撃」や「テロの脅威」などの不安を煽って、軍備増強や武力介入の必要性を説こうとするもの。それに反対する平和主義者の議論もまた「戦争の脅威」といった不安を煽る形で展開される。 この種の主張が説得力を持つのは、「○○しないと、××という嫌なことが起こる」という「嫌子出現阻止の随伴性」の形をとっているためである。この場合、本当に××が起こるかどうかは未来のことなので証拠を示すことができない。しかし人間は、十分に不安を煽られれば、何の証拠が無くてもそれに同調してしまうのである。 これに対して「○○すれば、△△が手に入りますよ」という「好子出現の随伴性」タイプの言説は、人を駆り立てるほとの説得力を持たない。なぜなら、○○しなくて何も失うモノが無く、かつ、○○することに何らかのコストがかかるのであれば、そういうことに関わるのは煩わしいだけだという制止が働くからである。 であるからして、とにかく、我々は不安を煽られると弱い、しかし、だからこそ、不安の正体をちゃんと突き止めて、インチキな言説を打破する必要があるということなのであろう。 なお、ギャラップ社が行った調査によれば、日本人の場合は、必ずしも多くの不安に囲まれているわけではなく、むしろ意気消沈、ガッカリ型が多いのだそうだ。(←出典は確認できなかった。) もしそれが事実だとすると、不安を煽るタイプの説得は功を奏しない。それよりも、自信を回復して、世界トップレベルの技術を誇るという形のほうが、主張として魅力があるということになる。 |