じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【思ったこと】 _a0723(金)[心理]内閣府「ひきこもり調査」報道の謎 7月24日朝のNHK「おはよう日本」で、ひきこもり 推計70万人近くにという、若干首をかしげたくなるようなニュースがあった。リンク先のオンライン記事はすぐに消されてしまうので、正確を期すためにあえて、全文を引用させていただく。 内閣府は、学校や職場になじめず、長期間自宅に閉じこもる、いわゆる「ひきこもり」についてアンケート調査を行い、その結果、全国で「ひきこもり」の若者の人数は、推計で70万人近くに上るとみています。私が疑問に思ったのは、「内閣府は、調査を基に推計すると、全国で「ひきこもり」の若者の人数は、69万6000人に上るとみています。」という部分である。報道内容から読み取れる限りであれば、これは、サンプルの比率から母集団を推定するという統計的な手法を用いているものと思われるが、果たして、この種の調査で推定ができるのだろうか(※)。 調査は5000人を対象に行われ、3287人が回答したという。ここでまず問題になるのは、回答に協力した人と、しなかった人で、引きこもりの率が同一であるかどうかということだ。引きこもりが相当程度深刻な人は、もしかしたら調査にも協力しないかもしれない。その場合は、全国の引きこもり者の推定値はもっと多くなるはずだ。 それから、この調査では「引きこもり」に当たる人の割合は回答者の1.79%であったというが、回答者が3287人ということから、その実数は3287×0.0179=58.8373人ということになる。(←なぜ、整数にならないのか不明。) この60人弱の回答内容だけから、男女差や、引きこもりのきっかけの比率を推定するのはかなりの誤差がでるものと思われる。まして、「小中学校時代について「我慢をすることが多かった」が55.9%、「友達にいじめられた」が42.4%に上り、内閣府は、学校生活の段階で、必ずしもうまくいかなかった割合が高いとしています。」というような解釈ができるかどうかは甚だ疑問である。 ※本日は、報道内容だけから考えを述べたにとどめる。時間があれば、内閣府の調査資料そのものについて目を通した上で、私の疑問がどう解消できるのか、あるいはやっぱりその通り問題があったのかを明らかにする予定である。 [※追記] その後、読売新聞記事(Yahoo経由)に、 ...ひきこもり群は有効回答の1・8%、親和群は同4・0%で、総務省の2009年の人口推計で15〜39歳人口は3880万人であることから、ひきこもり群は70万人、親和群は155万人と推計した。と記されていることが分かった。ということは、該当する人口全数3880万人にサンプルで得られた比率を乗じて推定しているだけということになる。行政の基礎資料が、回答者の比率だけに基づく点推定などといういい加減な値に振り回されているとは、俄には信じがたい。 |