じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



7月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る
§§
スイスの氷河急行(2006年8月8日撮影)。

 各種報道によれば、スイス南部で、アルプス山脈を巡る「氷河急行」と呼ばれる観光列車が脱線。兵庫県からツアーに参加した64歳の女性が死亡、日本人38人を含む42人がけがをしたという。列車は6両編成で、後ろの3両が脱線し、このうち2両は完全に横倒しになったという。

 この氷河急行には2006年に乗車したことがある。山間部を走るためカーブが多く(←写真にあるように、カーブでは後方車両から先頭部が見える)、また勾配のきついところもあったが、脱線し、しかも後部車両が横倒しになるなどということは到底考えられないことであった。走行中に落石が直撃したのだろうか。

 お亡くなりになった女性はご夫婦で参加されていたそうだが、このようなことになってしまってまことに残念。ご冥福をお祈りします。


7月23日(金)

【思ったこと】
_a0723(金)[心理]内閣府「ひきこもり調査」報道の謎

 7月24日朝のNHK「おはよう日本」で、ひきこもり 推計70万人近くにという、若干首をかしげたくなるようなニュースがあった。リンク先のオンライン記事はすぐに消されてしまうので、正確を期すためにあえて、全文を引用させていただく。
内閣府は、学校や職場になじめず、長期間自宅に閉じこもる、いわゆる「ひきこもり」についてアンケート調査を行い、その結果、全国で「ひきこもり」の若者の人数は、推計で70万人近くに上るとみています。

この調査は、内閣府がことし2月、15歳以上39歳以下の男女5000人を対象にアンケート形式で行ったもので、3287人から回答を得ました。調査では、「ふだんどのくらい外出するか」という質問に対し、「自室からほとんど出ない」や「家から出ない」、「趣味に関する用事のときだけ外出する」などと答えた人を、広い意味での「ひきこもり」と定義しています。回答者のうち「ひきこもり」に当たる人の割合は、1.79%で、これを男女別でみますと、男性が66.1%と、3分の2を占めています。内閣府は、調査を基に推計すると、全国で「ひきこもり」の若者の人数は、69万6000人に上るとみています。調査では、自宅に閉じこもるようになったきっかけについて、「職場になじめなかった」が23.7%、「就職活動がうまくいかなかった」が20.3%、「不登校」が11.9%となっています。こうした人たちの回答を見ると、小中学校時代について「我慢をすることが多かった」が55.9%、「友達にいじめられた」が42.4%に上り、内閣府は、学校生活の段階で、必ずしもうまくいかなかった割合が高いとしています。
 私が疑問に思ったのは、「内閣府は、調査を基に推計すると、全国で「ひきこもり」の若者の人数は、69万6000人に上るとみています。」という部分である。報道内容から読み取れる限りであれば、これは、サンプルの比率から母集団を推定するという統計的な手法を用いているものと思われるが、果たして、この種の調査で推定ができるのだろうか()。

 調査は5000人を対象に行われ、3287人が回答したという。ここでまず問題になるのは、回答に協力した人と、しなかった人で、引きこもりの率が同一であるかどうかということだ。引きこもりが相当程度深刻な人は、もしかしたら調査にも協力しないかもしれない。その場合は、全国の引きこもり者の推定値はもっと多くなるはずだ。

 それから、この調査では「引きこもり」に当たる人の割合は回答者の1.79%であったというが、回答者が3287人ということから、その実数は3287×0.0179=58.8373人ということになる。(←なぜ、整数にならないのか不明。) この60人弱の回答内容だけから、男女差や、引きこもりのきっかけの比率を推定するのはかなりの誤差がでるものと思われる。まして、「小中学校時代について「我慢をすることが多かった」が55.9%、「友達にいじめられた」が42.4%に上り、内閣府は、学校生活の段階で、必ずしもうまくいかなかった割合が高いとしています。」というような解釈ができるかどうかは甚だ疑問である。

※本日は、報道内容だけから考えを述べたにとどめる。時間があれば、内閣府の調査資料そのものについて目を通した上で、私の疑問がどう解消できるのか、あるいはやっぱりその通り問題があったのかを明らかにする予定である。


追記]
その後、読売新聞記事(Yahoo経由)に、
...ひきこもり群は有効回答の1・8%、親和群は同4・0%で、総務省の2009年の人口推計で15〜39歳人口は3880万人であることから、ひきこもり群は70万人、親和群は155万人と推計した。
と記されていることが分かった。ということは、該当する人口全数3880万人にサンプルで得られた比率を乗じて推定しているだけということになる。行政の基礎資料が、回答者の比率だけに基づく点推定などといういい加減な値に振り回されているとは、俄には信じがたい。