じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 恵みの雨。

 岡山では7月15日に2.0ミリの雨量を記録して以降、雨量ゼロの日が続いていたが、太平洋高気圧がいったん東に後退したこともあり、28日の15時すぎからは断続的に雨が降った。29日朝までの24時間雨量は3.0ミリに過ぎなかったものの、花壇の草花にとっては恵みの雨となった。



7月28日(水)

【思ったこと】
_a0728(水)[一般]死刑執行をめぐる奇怪な議論

 各種報道によれば、東京拘置所で28日、2人の死刑囚に対する死刑が執行された。執行は2007年12月以降(鳩山邦夫法相時代)にほぼ2カ月ペースが維持されていたが、2009年年7月28日に森英介前法相下で執行されて以後は全く行われず、政権交代をはさんでちょうど1年ぶりの執行となったという。今回の執行後の確定死刑囚は前回執行後の101人から107人に増えたという。

 千葉景子氏の問題については7月12日の日記にも書いたところであるが、今回、執行に踏み切ったことで、法務大臣としての職務怠慢という批判をある程度かわすことはできたかもしれない。とはいえ、昨年9月の就任以来ずっと職務を怠ってきたこと、参院選挙落選後の今頃になってなぜ突然執行に踏み切ったのかということについては、しっかりと説明する責任があると思う。




 死刑執行についての私の考えはこのWeb日記でも何度か述べてきたところであるが、とにかく、これは政治が関わる問題ではない。特別な理由のない限り、死刑判決が確定してから6ヶ月以内に死刑が執行されるのが当然であり、そのときにどういう政権であるのか、あるいは法務大臣が誰であるのかということによって、執行されたりされなかったりするというのでは、法治国家は成り立たない。もし政治家が死刑に反対するというのであれば、まずは、死刑を定めた法律を廃止することである。判決に基づいて行われる死刑執行の是非を政争の具にしてはならないと思う。

 そんななか、28日以降の各種報道を見ていると、えっどうしてそんなことが言えるの?というような奇怪な議論が目につく。それらの記事の中には、記者の作為によって、政治家ご本人の真意とかけ離れた報道も含まれている恐れがあるので、できるだけ、原文を忠実にいくつか引用してみたいと思う。

選挙で落選した法相は、職務を遂行できないのか?
  • 産経新聞7月28日13時28分配信:「国民にレッドカードの法相がすべきことか」死刑執行に野党から批判の声
    自民党の川崎二郎国対委員長は同日の記者会見で「なぜ(議員任期中の)5、6月に判断しなかったのか。国民にレッドカードを受けた人がすべきことではない」と批判。公明党の山口那津男代表も、記者団に対し「民意を得られなかった人が引き続き職務に携わることがいかがなものかと問われているときに、こうしたことを行うのは国民の理解は得られない」と語った。
  • 朝日新聞7月29日記事:自民党の大島理森幹事長は28日、記者団に「選挙で落ちた法相による死刑の執行に驚きを禁じ得ない」と反発。
  • 産経新聞7月28日13時2分配信: 民主党の枝野幸男幹事長は28日、千葉景子法相が2死刑囚の死刑を執行したことについて「(千葉氏が)執行命令書に署名したのは24日だと聞いている」と述べ、参院議員在職中にサインしていたことを明らかにした。
 千葉氏が法務大臣を続投するべきかどうかという政治的な論議は大いに結構であるとは思うが、国会議員でない人が法務大臣をつとめることは法律上何ら問題が無いはずで、落選したからという理由で死刑執行ができなくなるという主張はおかしい。枝野幹事長の議論はもっとおかしい。国会議員在職中であろうとなかろうと、法務大臣の権限が変わるはずがない。いつ署名したのかということは全く問題ではなく、まさに蛇足である。

死刑執行にあたって政治家の信念や公約や政府内の議論が必要なのか?
  • 時事通信7月28日18時11分配信:国民新党の亀井静香代表は28日午後の記者会見で、民主党政権下で初の死刑が執行されたことについて「(千葉景子法相が)死刑をすべきではないという信念を変えるのであれば、考え方が変わったと国民に説明しないと(いけない)」と批判した。
     亀井氏は「今は政治家が日ごろの言動、信念と関係ないことを簡単にやっちゃう。千葉法相までもかと(思う)。政治家の信念や公約を国民が信じられなくなっている」と指摘した。
    【中略】
     社民党の福島瑞穂党首も同日の記者会見で「2人の死刑執行が政府内で大きな議論もなく、執行されたことは本当に残念だ」と述べた。
 亀井氏が名だたる死刑廃止論者であることは承知しているが、法務大臣の個人的な信念や政権党の意向で死刑が執行されたりされなかったりするというのであればこれは完全に間違っている。
 福島・社民党党首の発言は、伝えられた内容が正確であったとすればさらに間違っていると思う。「2人の死刑執行が政府内で大きな議論もなく」というが、死刑執行のことは政府内で議論すべきことがらではない。政府内で議論する必要があるのは、まずは、死刑の対象になるような凶悪犯罪の発生を防ぐために、生活環境の安定、危機管理、犯罪組織撲滅などの対策を講じることである。死刑に関しては、あくまで死刑制度についての議論をすべきであって、個々の執行の問題についてとやかく口をはさむべきではない。

 そもそも、テレビニュースのトップや新聞の一面で死刑執行というニュースが大々的に伝えられることがおかしい。大きく取り上げるべきなのは、死刑判決が出たという段階までである。「○○政権で初の死刑執行」というような見出しもおかしい。死刑執行と政権とは何の関係もあってはならない。現政権より少し前の時代に凶悪事件が多ければ死刑判決が増え、結果的に死刑執行の数も増えるというそれだけのことであるべきだ。

 少し前の記事になるが、7月16日配信のネットニュースによれば、鳩山邦夫・元法相は、千葉大臣が死刑執行に署名してこなかったことについて、「職務怠慢などという軽いものではなくて、違法状態の放置だ。法治国家の法務大臣としてありえない。憲法に照らし合わせても不適格だ。任命責任? 菅さんも死刑反対なんでしょう」と語った伝えられているが、これは、全くもって正論である。