じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 月齢14.7の月と飛行機雲。月に照らされた飛行機雲はそれほど珍しくないが、月と飛行機雲が重なる写真はなかなか撮れない。条件としては
  • 飛行機雲が発生する気象条件であること
  • 月の見えている方位、高さと航路が重なること
  • 飛行機が飛んでいる時間帯であること
 岡山の場合、飛行機が上空を通るのは21時頃までなので、上弦から満月の頃でないと飛行機雲と重なることはない。

 なお、この夜は、オリオン座流星群極大にあたっていたが、満月直前の月明かりと薄雲のせいで、目撃することはできなかった。


10月22日(金)

【思ったこと】
_a1022(金)日本心理学会第74回大会(29)自然環境と心理学(8)公園散策とWell-Being(1)

 話題提供の3番目は、

自然はwell-beingにとって重要かー公園散策の効果から考えるー

というタイトルであった。

 まず研究の背景として、Ulrich(1984, 1991)、Kaplan(1989)らの主張が紹介され、さらに都市住民にとっての公園策には、自然とふれあうことによる効果、地域への愛着などの効果が期待されること、そうした研究が2000年以降に殖えてきていることなどが紹介された。但し、先行研究では、1回限りの公園散歩の効果や、公園利用が自然とふれあうことに限定されていない、よって今回の研究では、公園散策で自然とふれあうことの反復効果を検証しようというものであった。

 話題提供の前半では、大都市住民に対して行われた小規模な実験が紹介された。

 この実験では、大都市郊外の住宅地で、自治会を通じて実験参加者を募集。平均年齢は69.5歳、男性5名、女性6名。参加者には、近隣の公園(1万数千平米、徒歩で一周10分程度)を
  • 30分かけて注意深く木々や草花をみながら、ゆっくりと公園のすみずみまで散策してください」と教示
  • 2週間以内に7回
という条件のもとで散策するように求め、実験前と、2週間の実験後に、POMSによる質問紙とバウムテストによる測定が行われた。

 その結果、POMSでは6つの気分・感情指標のうち「活気」を除く5つの指標で有意な減少が見られ、かつ、総合指標(Total Mood Disturbance、TMD)では11人中9人で減少があった。但し、2名はTMDが逆に増加したということであった。またバウムテストでは11人中5人で、描画内容にポジティブな変化が見られたという。このほか、参加者からは、散策についての肯定的な感想が寄せられていた。

 以上、前半部分についての感想であるが、何はともあれ、公園散策の反復効果を検証しようという方向は結構なことだと思う。森林浴の効果のところでも述べたが、森林や公園散策というのは、1回限りの効果ではなく、習慣化されたのちの反復にこそ真の効果が得られるものであると思われる。特に居住地近隣での公園散策の場合は、毎日の日課に組み込まれてこそ累積的な効果が期待できるはずである。

 もっともそういう点から言えば、今回紹介された「2週間以内に7回」という実験は、期間が短すぎるし、回数も少なすぎるように思われる。その分、実験参加者各位が同じ期間に行った公園散策以外の諸活動の効果が多数混入し、実験後の変化が本当に公園散策の効果なのかは確証が持てない可能性が高い。また、実験の経緯などからみて、実験参加者がもともと散策好きであり、公園散策に肯定的な見解を持っていて、プラシーボ効果、もしくは実験者への義理で肯定的に答えたという可能性も否定できない。

 もう1点、バウムテストやロールシャッハなどの投影法検査については、本当に信頼できるのかといった批判もあるし(←解釈にあたって、被検者についての諸々の情報に影響されやすいとか、検査者の主観や思い込みが入りやすいなど)、まして、自然とふれあうことを求めるような今回の実験では、自然にふれあう回数を重ねるにつれてよく見かけた木の絵を克明に描くという傾向も出てくるであろうから、バウムテスト本来の趣旨にあった検証ができるかどうかはかなり疑わしい。ちなみに、私自身は、健常者の気分変化程度の測定にはバウムテストは不向きであると思っている。但し、学部・大学院時代の心理テスト実習を受けた限りの知識で言えば、相当に深刻な精神障がいにある方の改善効果を確かめる手段としては、バウムテストはかなり有効であると思う。そういう人たちの場合、画用紙に樹木の幹と枝を描くだけでも大変な作業となるからである。


次回に続く。