じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 薬学部西側の発掘現場。正式には「津島岡大遺跡第33次発掘調査」と呼ばれる。10月23日(土)に一般公開があったようだが、残念ながら時間が無くて見学できなかった。

10月30日(土)

【思ったこと】
_a1030(土)日本心理学会第74回大会(37)ことばと社会:心理学的アプローチの可能性と問題点(5)日本語学習者の誤用と言語使用の文化的背景(2)

 昨日の日記では、

●先生、チョコレートを食べたいですか。 あるいは ●先生、チョコレートを召し上がりたいですか。 といった願望疑問文(相手の願望を直接尋ねる表現)が日本語として不適切であるような印象を受けることを取り上げた。

 では、なぜそのような誤用が起きるのか。これについては、日本語と英語の言語的・文化的な差によって母語の転移が起こるという説(大石, 1996)などがあるという。実際、英語では、「Would you like to 〜?」や「Do you want to 〜?」といった日常表現がよく使われるが、これを日本語に直訳すると「〜をお望みですか」、「〜したいですか」になってしまう。

 このような文化差を検証した研究例として、適切な申し出表現に関する談話完成テストの結果が紹介された。なお、申し出とは「相手の利益のために行う、自分の未来の行動を伝える発話行為」のことである。

 調査対象者は、日本語を母語とする話者(204名)と英語を母語とする話者(27名)の2群であり、ペンを貸与するという場面が想定されている。ペンを貸す相手としては、先生(親しい、疎遠)、友達(親しい、疎遠)、見知らぬおばさん、母、クラブやアルバイトの先輩・後輩・友達、というように多様な条件が設定された。その結果、日本語母語者または英語母語者で比率の高かった(いずれかで10%以上)表現形式としては、
  • 申し出:貸すよ、貸そうか?/I'll lend you my pen. Shall I lend you my pen?
  • 行為質問:使う?/Do you use my pen?
  • 依頼:使って/Please use this pen.
  • 直接行動:はい、ペン/Here you go.
  • 命令:使い/Take this pen.
  • 要望質問:ペン、要る?/Do you need a pen?
  • 願望質問;使いたい?/Do you want to use this?
 ここで興味深かったのは、日本語母語者では、申し出、行為質問、依頼、直接行動が多かったのに対して、英語母語者では、申し出、行為質問、依頼は殆どゼロであり、逆に、直接行動、命令、要望質問、願望質問の比率が高く、極端な差違があった点である。そういえば、私なども「どうぞお使いください」のつもりで、「Please use this pen.」などと言ってしまうことがあるが、確かにあまり英語らしい表現とは言えない。なお、上掲のデータが、どういう相手に対する表現であったのか、それとも多種多様な相手を総合した結果であったのかは聞き逃してしまった。


次回に続く。