じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
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2010年版・岡山大学構内の紅葉(8)時計台横のカイノキ 時計台の両側にはメス樹のカイノキがあり、そろそろ紅葉する。メス樹のため、実がたくさんなる年はあまり鮮やかにはならない。 |
【思ったこと】 _a1108(月)日本心理学会第74回大会(43)ことばと社会:心理学的アプローチの可能性と問題点(12)心の理解とコミュニケーション 認知語用論と発達心理学(4)他者情報の信頼性 話題提供の中ほどからは、他者情報の信頼性の研究が取り上げられた。2〜3歳児はまだ騙されるということが理解できず、大人の言うことを信じる傾向を強く持っているという。しかし、3歳児は、他者からの情報についてそれが信頼に値するかどうかを判断できる。という研究結果が集まり始めているという。 ●Bartsch, K., & Wellman, H. M. (1995). Children talk about the mind. New York: Oxford University Press によれば、子どもが心的動詞を産出したり理解することができるということはその子どもの他者理解を具現しており、子どもはまず欲求に関する言葉を獲得し、そのあとで思考や信念に関する言葉を獲得する、ということであった。ただし、このことが、他者情報の信頼性の話題とどう関連しているのかについては聞き逃してしまった。 ここからは日本語の話題になるが、会話の中で「かな」とか「よ」という終助詞がつくことは確信度を表し、また「って」は他者からの伝聞情報を示す。要するに、子どもがそういう表現を正しく理解できるということは、確信度や伝聞情報の判断ができているという証拠になる。じっさい「かな」を使う大人からは3歳児は語彙を学習しないというような研究があるらしい。 3歳児の場合、確信を持って信じているという態度を示す「よ」と、確実にはわからないという態度を示す「かな」との違いは理解できるが、「知っている」と「思う」という思考動詞の違いは理解できないそうである。先にべた誤信念課題の正答率と文末助詞の理解との間には相関はないが、思考動詞の理解とは相関があった。 話題提供ではさらに、他者情報の信頼性を判断する能力に関する調査結果が紹介された。その調査では、子どもに対して二人の大人が、新奇なおもちゃに対して「これはトマ」と言う。しかし、指示するおもちゃは異なっていて、子どもはどちらがホンモノの「トマ」であるのかを選ばなければならない。そのさい、
3歳児の場合は、【二人の間で確信度が異なる】という条件では、強い確信を表明した話し手の情報を採用。【二人の間で確信度はいずれも高いが、情報提供者が異なる】という条件では、話し手が母親でも他人でも差はなく、要するに確信度が強ければ誰でも信用してしまうことが分かった。いっぽう【二人の間で確信度はいずれも低いが、情報提供者が異なる】という時には、母親のほうを信頼したという。誘拐犯が「お母さんが急に病気になったよ。この車に乗って病院に行きましょう」と強い確信を示す形で誘いをかければ、子どもは見知らぬ他人でもついて行ってしまう恐れがあるということだろう。 いっぽう、5歳児の場合は、【二人の間で確信度が異なる】という条件では、強い確信を表明した話し手の情報を採用したが、母親が強い確信を示した時に特にその傾向が強かったという。また【二人の間で確信度はいずれも高いが、情報提供者が異なる】という条件では母親のほうを信頼、いっぽう【二人の間で確信度はいずれも低いが、情報提供者が異なる】という条件では3歳児と異なり、母親を信頼する傾向は見られなくなったという。要するに5歳児になると、文末助詞の区別だけでなく、情報提供者自身の信頼性(母親か他人か)も影響を与えるようになる。また、母親自身が「かな」を使っていて確信度が低い場合は、おそらく子どもも、母親と同程度にしか情報を確信しないようになるのであろう、と理解した。 次回に続く。 |