じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 2月12日は日帰りで上京。降雪による交通機関の混乱が心配されたが、弱い雨が降った程度で特段の影響は無かった。写真は、東大・安田講堂前にあった雪のかけら。これが東京で見た唯一の「積雪」であった。なぜここに雪のかけらがあるのかは定かではないが、雪だるまの残骸の可能性が高い。


2月12日(土)

【思ったこと】
_b0212(土)八代市のワンコインながいきサポート

 2月13日朝05時台のNHKニュースの中で、表記の取組を紹介していた。ネットで検索したところ、こちらに運営団体のサイトがあり、詳しい説明があった。

 このサポートの特徴はボランティアによる無償奉仕の助け合いではなくて、サービスを受けた時に100円、あるいは500円を支払うというところにある。それぞれの提供内容については、こちらにリストがあり、作業例として、
  • 100円ワンコイン
    朝のごみ出し、10分以内の犬の散歩、買い置きがある場合の電球取り替え、台風前の戸締まり、エアコンフィルタの清掃、柱時計の電池交換、ストーブやファンヒーター等への灯油入れ
  • 500円ワンコイン
    資源物の分別出し、トイレや排水のつまり洗浄、日用品の買い物、本棚やカラーボックスの組み立て、買い置きが無い場合の電球取り替え、手紙の代筆・代読、一階部分までの雨どいの清掃、10kgまでの米の精米、風呂釜への灯油入れ、ストーブや扇風機等の季節による入れ替え
が挙げられていた(2月13日朝の閲覧時点。146件登録)。作業は、電話、ファックス、パソコンフォームなどから依頼が可能。また、
  • 仕事をする会員と仕事を依頼した方との間には雇用関係はありません。
  • センターがお仕事についてのご相談、お見積もりを行います。
  • センターがその仕事にふさわしい会員を選び、仕事を完了させます。
  • 仕事終了後、ご請求させていただきます。
  • 就業中ケガや会員の責任で起こした事故については、シルバー人材センターが加入している保険で対応いたします。したがって、労災保険等の心配はありません。
といった契約条件が記されていた。

 この種のサービス提供としてすぐに思い浮かぶのは、10年ほど前に取り上げたボランティア通貨や地域通貨に基づく交流である。(こちらや、こちらに関連記事あり。)但し、今回紹介された「ワンコインながいきサポート」は、形式上は「有料」、つまり、「貨幣経済+債権債務関係」を基本としているという点で大きく異なっていた。もちろん、100円や500円というのは、コストに見合った報酬とは言えない。しかし、番組の中で市の担当者が語っておられたように、「無料」のサービスだと遠慮してしまうお年寄りも、お金を払えば頼みやすいというメリットはあるようだ。じっさい、タダほど高いものはないと言われるように、無料でサービスを受けると、別にお礼をしなければならないとか、自分も何かをしなければならないといった義務感が出てくるが、とりあえず「有料」ということでそれ以上に気を遣う心配は消えていくのだろう。

 では、今回紹介されたシステムと、ボランティア通貨・地域通貨とではどういう違いが出てくるのだろうか。ボランティア型の地域通貨がうまく機能しなかった事例について伝えられた話としては、
  • 自分自身から提供するサービスが無い。
  • ボランティア通貨を受け取っても使い道が無い。
  • サービスをしてもらいたくても提供者が見つからない。
などがあった。それと、ボランティア通貨や地域通貨では、交流や互酬を絶対善としているな印象が強い。もちろん、無縁社会を克服するための一定程度の交流は不可欠だとは思うが、交流が必要以上に活性化されることを望まない高齢者だって少なくないはずだ。じっさい私なども、必要最低限以上に他者と交流することは時間のムダであり、貴重な余生の時間を奪われるという煩わしさを感じるタイプである。

 であるからして、サービス提供と受領を表裏一体化するのではなく、どちらか一方のみを主体とするような利用法を実現することにもメリットがあるようにも思える。その場合、サービスを受ける側は、どこか別のところから通貨を調達しなければならないし、サービスを提供する側は受け取った通貨を、全く違う目的で使うこともできる。そうなると、100円や500円といった国家通貨(法定貨幣)のほうが有効ということになる。

 なお、ネットで検索したところ、地域通貨に関する問題点を論じた論文、サイトがいくつか見つかった。  私自身、この種の問題に10年以上関心を持ってきたが、けっきょく、お金の本質とは、
  • 他者に働いてもらう(←悪く言えば「他者を自分のために働かせる」)手段
  • モノや機会などを専有する手段
の2点に尽きるのではないかという考えを固めつつある。年金の財源とか国の財政がどうだこうだとかいろいろ議論されるが、いくら年金の財源が確保されたところで、自分のために働いてくれる人が居なければそんなものはタダの紙切れにすぎない。現実社会では、富裕者はモノや機会などを専有することで、それを必要とする他者からサービスを受けることができる。さらには、国家間の経済格差により、先進国では楽な暮らしのできる人が多いのである。仮に宇宙人がやってきて、地球に暮らす人々全員に1億円ずつのお金をばらまいたとしても、地球人の暮らしが今より豊かになることはゼッタイにない。なぜなら、その場合の1億円は、他者から受けるサービスを何一つ増やしてくれないからである。

 ということで少々脱線したが、今回紹介された「ワンコインながいきサポート」は、従来のボランティア通貨よりはうまく機能するのではないかと大いに期待される。このことにより元気なお年寄りが地域で活躍できる機会も増えるし、高齢化で身体が不自由になったお年寄りからも喜ばれるものと思われる。今後の発展に注目していきたい。