じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【思ったこと】 _b1003(月)日本行動分析学会第29回年次大会(17)許可の随伴性・阻止の随伴性・ルール支配行動:青年・成人臨床事例からの再考(13)学生相談場面の事例から(6)自己ルールの修正効果/プラス思考よりマイナス思考? しばらく脱線していたが、ここで本題に戻る。 話題提供の中では、学生相談場面におけるルールの効用がいくつか語られた。その1つは、相談場面における介入の殆どが言語を介して行われるという点である。また、クライエントが語る「自己ルール」は、通常、セラピストが直接観察できないような範囲に及んでおり有効な情報として活用できる。さらには、「自己ルール」を修正することで介入効果が得られる場合も少なくないという点であった。 実際に紹介された事例については個人情報も含まれると思うのでここでは具体的な言及は避け、本題に関係のありそうな部分だけを取り出すことにする。 最初は、同じクラスにいた彼女に振られたのがきっかで飲酒に浸り授業に出席しなくなった男子学生の事例であった。授業に出た時に彼女の姿を見ることが苦痛になっているらしいということから、まずネガティブな陳述をリストアップし、それを修正する形で「頭の中に浮かんでくる思考や感情を抑えつけても無駄なことだ」、とか「ただ、座って授業を聞いていればいい」など全部で4通りの自己教示を求め、それを実践したところ、出席率は向上し、かつ、苦痛度の自己評定は低下していったという。 このケースでは、陳述されたネガティブな「自己ルール」を修正することだけでも効果があるということが示されたとされていた。確かに、ネガティブな自己ルールを打破することは、引きこもり状態から脱するきっかけとしては有効ではあったと思うが、出席後の全体的な変容は、自己ルールだけによるものではなく、登校後に得られる別の好子、あるいは、「彼女」がもたらす情動的反応の消去という形で、直接効果的に変容していった可能性が高いようにも思われた。 余談だが、最近、 プラス思考をやめれば人生はうまくいく マイナス思考法講座 という本を入手したが、これは結構面白い。著者のブログがこちらにあり。後日、感想を述べさせていただくが、本のタイトルにもあるように、プラス思考は必ずしも絶対善とは言えない。実際、上掲の事例の自己ルールは、プラス思考ではなく、マイナス思考(もしくはゼロ思考)で打破されているようにも思える。 次回に続く。 |