じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【思ったこと】 _c0419(木)行動が起こる原因と、行動が増えたり減ったりする原因 木曜日の教養教育科目の授業(「行動分析学入門」)で、行動の原因をめぐる議論について話をした。備忘録を兼ねて要点をここに記しておく。 行動分析学は行動の原因を解明する学問だとされているが、厳密には、(オペラント)行動が増えたり減ったりする原因を分析する学問であって、(オペラント)行動が生じる根本原因を同定する学問ではない。なぜなら、オペラント行動は、人間や動物が「自発する」行動として定義されているからである。まずは「行動の自発」を前提として、それが強化や弱化や消去、あるいは確立操作などによってどのように増えたり減ったりするのかを分析し、応用をめざすのが主たる目的である。ある行動がなぜ自発されるのかという問いは、もう少し別の学問、つまり進化の過程で、その動物がどのようにして当該行動を自らのリパートリーに組み入れたのか、あるいは、当該行動を可能にするような骨格や筋肉がどのようにして形成されたのかという視点から説明されなければならない。例えば、ハトがなぜ飛ぶのか、ダチョウはなぜ歩くのかという問いは、行動の自発に関する問いなので、行動分析学は答えることはできない。行動分析学ができるのは、ハトをどういう時にどういうふうに飛ばすのか、ダチョウをどれだけ走らせるのかといった行動の増減に関する課題である。但し、単に、行動の量を増やす減らすというだけでなく、行動を精緻化したり、適確に連鎖させるというようなことも課題に含まれる。例えば、ピアノを弾くという行動の場合、初心者がデフォルトで自発できることは、指で鍵盤を叩くというだけに限られる。ピアノの演奏をするには、いろいろな指を次々と動かして鍵盤を滑らかに叩く必要があるが、これは行動分析学の対象範囲に含まれる。いっぽう、いくら行動分析学が発展しても、人間に自力で空を飛ばせることはできない。なぜなら、空を飛ぶという行動は人間の行動リパートリーには最初から含まれておらず、かつ、人間は空を飛ぶのに必要な骨格、筋肉、体重(軽さ)を備えていないからである。 このほか、原因をめるぐ一般的な議論として、
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